琉球の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。本日もよろしくお願いします。さて今回のテーマは「地球温暖化の影響か?今年は例年と違う?やんばるに舞うチョウの生態」です。
湊和雄さん「一年で最も多くチョウが見られる時期、以前は初夏だったものが秋に変わってきた、と先月お伝えたしましたが今月に入り、そのときよりもさらにチョウたちは増えたんですよね。ちょっとびっくりするような光景が見られました。」
ではVTRをご覧いただきましょう。
湊和雄さん「ススキの群落です。前回よりさらに大きな群落です。」
美しいですね。風は強そうですが。
タイワンヒヨドリバナモドキ草。丈30〜150cm琉球列島に分布。
湊和雄さん「はい、今回の主役はその手前にある白い花のほうです。タイワンヒヨドリバナモドキ、もしくはタイワンヒヨドリと言います。」
可憐な花です。
湊和雄さん「この花にたくさんのチョウたちが群がって、蜜を吸っています。」
ほんとですね、すごい数!
湊和雄さん「ほとんどが、ツマムラサキマダラのメスとオス、そしてマルバネルリマダラの2種類です。以前、説明しましたが、かつて亜熱帯沖縄では梅雨明け直後の6月末から約1ヵ月間がチョウたちの最も多くなる季節でした。しかし、その後次第に遅くなってきたんです。」
もう11月ですよね、そんなに変わってきたんですね、それにしてもたくさんの数のチョウが舞っています。都心部ではなかなかみることのできないシーンですね。
湊和雄さん「そうですね。」
湊和雄さん「ここからは8倍スロー映像です。」
わあ!こんな風に飛んでいるのですね。
湊和雄さん「ええ、チョウは通常花にとまって静かに蜜を吸ってるのですが少しでも刺激を受けると舞い上がります。そして1匹が舞うと周りのチョウも連鎖的に舞い上がるという生態です。」
通常はこのスピードですか、目で追えないです!
湊和雄さん「こんな状態は、そうそう見られる光景ではないですね。一体、何匹いるのでしょう?数100匹?それ以上かもしれませんね。」
すごい数!湊さんでさえ珍しい、という光景、これは貴重ですね。
アサギマダラ前翅長50〜60mm日本全国に生息
湊和雄さん「チョウの大集団はほとんど2種類のチョウだと説明しましたが、異なる種類もいました。アサギマダラという種類です。」
よく見るといますね!
湊和雄さん「アサギマダラの最大の特徴は、渡り鳥のように季節によって海を渡り長距離を移動することです。」
すごい生態です。
湊和雄さん「アサギマダラは亜熱帯の琉球列島が暑い時期になると温帯の本土に移動し、秋になるとまた戻ってきます。こんな傷一つない翅なのに、海を渡ってきたなんて信じられませんね。」
湊和雄さん「もちろん、このように傷のあるチョウもいます。例年ならば10月の中旬に本土から渡ってくるのですが今年は3週間ほど遅く確認されました。」
湊和雄さん「中には、このように文字が書かれたアサギマダラが見られます。」
モトブって読めますね。
湊和雄さん「落書きではなく、何時、何処で確認されたのか調査用のマークです。」
調査用ですか!
ルモンホソバ前翅長約25mm沖縄から九州南部に生息
湊和雄さん「また今年はこんな姿も見られます。ルリモンホソバという蛾の仲間です。」
鮮やかな色彩です。
湊和雄さん「はい、かつて数の少ない珍しい種類でしたが、今年は毎日10匹以上を見掛けるほどの大発生です。以前は8月の季節に比較的見られていましたが、3ヵ月も遅い大発生です。
湊和雄さん「先週末のやんばるは、記録的短時間降水量が記録されましたね。」
災害が起きるほどでした。
湊和雄さん「その直前まで撮影のためにいましたが、既に本降り。オオジョロウグモの巣は、雨の滴に覆われていました。」
湊和雄さん「一部のツマムラサキマダラは、このように枯枝にとまって静止していましたがほとんどのチョウは普段と変わりなく花で過ごしていました。」
こうやって過ごしていたんですね。
今週も季節はずれの台風が接近しており、心配です。最近、観測史上初、という言葉を様々な場面で耳にします。
湊和雄さん「生物界の少なくない種類のチョウやガの行動パターンにも季節のズレが生じ、遅くなっているのが分かります。農作物などにも言えることですが、温暖化が進み夏が暑すぎるのかもしれません。」
今回も貴重な映像ありがとうございました。リュウキュウの自然でした。