国は今後、7万本あまりのくいを打ち込む予定です。辺野古新基地建設で、大浦湾側の軟弱地盤を固める工事を巡って、沖縄防衛局は8月20日午後、くい打ちの工事を始めました。
防衛局は、大浦湾側に7万本のくいを打ち込んで、地盤を固める工事を計画していて、2024年6月、県に対して、2024年8月以降に着手する方針を伝えていました。
大浦湾では8月20日午後1時半ごろ、作業船から金属製のくいを海中に沈める様子が見られ本格的な工事が始まりました。今回のくい打ちは、埋め立て区域の周りを囲うコンクリート製の護岸を作るためのものとみられています。
沖縄防衛局は、QABの取材に対して、新たな護岸工事の着手を認めたうえで、「防衛局としては、普天間基地の1日も早い全面返還を実現するため辺野古への移設工事を着実に進めてまいります」と回答しました。
国がくい打ち工事を始めたことについて玉城知事は、20日午後、コメントを出し「協議が整っていないにもかかわらず、一方的に工事に着手したことは、誠に遺憾」とし、「防衛局に対し、協議の継続と協議が整うまでの間の工事の中止を文書で求める」と表明しました。
辺野古記者解説/基地負担の正義とは何か
ここからは塚崎記者とお伝えします。今回の辺野古のくい打ち、どのような工事なのでしょうか。
塚崎記者「大浦湾側には、やわらかい地盤がありまして、それを固める工事が今回のくい打ちです。防衛局は7万本あまりのくいを打ち込む計画で、こうした工事を経て、基地として使用できるまで12年、アメリカ軍の見通しでも2037年以降に完成するとしてます。」
私たちは、これまでも新基地建設の問題点はお伝えしてきたわけですが、改めてどのような問題があるのでしょうか。
塚崎記者「はい。先日、専門家に現地でお話を伺ってきました。今回、お話を伺ったのは、行政法などを研究する早稲田大学の岡田正則教授です。」
岡田教授「裁判で負けたといっても本当に埋め立てをやることが法的に正当化できるのか、裁判所は判断しなかった」「行政の中だけで防衛局と国交大臣の間で(工事を)やっていいのか、いいよと決めてしまって。それで沖縄に負担をしわ寄せして工事を進めるということ」「法的に見れば本来やっちゃいけないこと」「反則技を使って無理やり工事を進めているのが現状」
塚崎記者「岡田教授が指摘していたのは、県の工事の不承認を、行政不服審査法という本来国と個人間の争いを解決する仕組みを使って無効にした問題や、あるいは国が県に代わって工事を承認する代執行の問題です。」
こうした法律上の問題もあります。岡田教授はより根本的な問題も指摘しています。
岡田教授「本土の方からすれば、沖縄に(基地を)押し付けておいて、見て見ぬふりをする。これが許される」「いったい日本の防衛負担というのがあるとすれば、それは誰がどういう風に負うのが適切なのか」「生活を犠牲にしなければならないのであれば、軍事とは別のやり方ですね。基地負担以外のやり方はどういうことがあるのかと」「全国の皆さんが考えなきゃいけない」「沖縄に負担してもらっているからいいんじゃないのと」「思考停止している」「それが現状」「これをどう改めていくかが課題」
塚崎記者「先週、20年前に起きた沖縄国際大学のアメリカ軍ヘリ墜落事故で、当時の小泉総理や本土のメディアが冷淡な態度をとったことを特集で紹介しました。20年前から基本的な構図は変わっておらず、基地の7割が沖縄に集中することは、本土の政府や世論は、抑止力などを持ち出して正当化したり、無視したりしています。」
今回のくい打ち着手は、長い工程の中の一つの節目にすぎず、今後もさまざまな問題点が出てくるとみられます。
20年前の沖国大の事故で示された普天間の危険性は、政府が辺野古に拘り続ける限り、基地の完成まで放置されることになります。周辺住民に重大な危険性を負わせている普天間撤去の方策が辺野古新基地でいいのか、沖縄に住んでいる私たちではなく、沖縄の基地負担を無視し続けている、本土の人々にこそ、問わなければなりません。
私たちが日々、基地問題を報道し続ける中で、県外の人たちにも住民目線で基地がどのようにめているのか、伝えていくことが重要になっていると思います。
辺野古新基地建設の問題については今後も動きをお伝えしていきます。