Qリポートです。きょうは隣の韓国で進むアメリカ軍再編についてお伝えします。現在、基地の統廃合を急ピッチで進めている在韓米軍。その狙いと、韓国国民のアメリカ軍に対する意識について岸本記者が現地で取材しました。
李徳男(イドンナム)さん(41歳)かつて北朝鮮軍の特殊部隊に所属していましたが国の体制に疑問を抱き、今から18年前訓練に使う潜水艇で韓国へと亡命しました。
李さん『北朝鮮では個人的人権は全く無く、300万人が食べるものも無く飢死したが、それでも金日成・金成日は顔色一つ変えなかった』
1000万人が住む韓国の首都ソウルから北上することわずか40分
在韓米軍広報官『この川の向こうが北朝鮮になります』
川沿いに張り巡らされた鉄条網の先。李さんの祖国、北朝鮮が目の前に迫ってきました。両国の軍事境界線はソウルから80キロの地点にあります。
『韓国と北朝鮮の国境 板門店です。ここはまさに分断の現実がむき出しになった場所です。』
同じ民族による朝鮮戦争の開始から58年。現在もまだ休戦状態にある両国の兵士は、挨拶を交わすことさえ許されていません。
駐留するアメリカ陸軍の兵士『北朝鮮は韓国から様々な情報が入ってこないように常にこの地域で妨害電波を発している』
北朝鮮に対し、韓国の国民はどのような感情を持ち、南に駐留するアメリカ軍をどう思っているのか?ソウルの繁華街でマイクを向けました。
記者質問『韓国にアメリカ軍は必要だと思いますか?』大学生 『問題ない。』『在韓米軍が韓国に駐留していなかったら北朝鮮への抑止力が無くなる』
大学生『アメリカ軍の兵士は確かに多くの問題を起こすが私達は強い力を持っている必要があると思います』
会社員『国の安全保障は最も重要な問題だ』でも、我々(韓国と北朝鮮)の問題だと思う』
自営業者『米軍がいるから北朝鮮は韓国に攻めてこないと思う』
北に対する抑止力は必要だと答える多くの市民。全ての男子に徴兵を義務付けている韓国では軍の制服姿も街に溶け込んでいて日本とは軍隊に対する感覚に開きがあるようです。
その韓国では、現在、大規模なアメリカ軍の再編が進んでいて国内に散らばる60あまりの基地は大きく6ヶ所に集約されます。その拠点の一つがソウルの南平澤市にあるキャンプハンフリーズです
ハンフリーズ基地 米軍再編担当 スタイン准将『最近8ヶ月で600台から800台のトラックで毎日、土を運び入れて 土地を埋め立てました。』
基地の拡張が急ピッチ進む、ハンフリーズ基地は今回の再編で面積は3倍に拡張され、アメリカ軍の兵士と韓国軍の兵士がともに活動します。
そしてここには、基地の施設以外に学校や病院そして娯楽用のプールも作られる計画です。こちらはすでに完成していた兵士とその家族のための住宅です。リビングの横には大きな冷蔵庫が備え付けられたキッチンベットルームは4つありました。
基地内の不動産業者『ここは3人以上の子供を持つ兵士の住宅です。兵士の年齢や階級に関わらず、入居することが出来ます』
在韓米軍 米軍再編担当者『在韓米軍は地元の平澤市長や地域の人達と非常に良好な関係を築いています』
基地の拡張にあたり、地元の人達との間に大きなトラブルは無かったと語る再編の担当者。しかし先月沖縄で開かれたシンポジウムでハンフリーズ基地のすぐ傍に住む住民は韓国政府から理不尽な制裁を受けていることを明かしました。
平澤平和センターの代表『平澤の反戦住民は米軍基地の移設・拡大に抵抗したという理由で韓国政府から600万円の罰金を科された。』
また別の空軍基地では、沖縄と同じように土壌汚染の問題も深刻だといいます。
米軍基地の周辺住民『米軍基地周辺の地下水汚染・農業穀物の汚染によって体内に発がん物質が蓄積されていることが証明された』
地域住民の声よりアメリカ軍との関係を優先しさらに協調を深める韓国とアメリカ
北朝鮮から韓国に亡命した李徳男さん『人権や食料問題で外国が北朝鮮を援助するのは良いことだがその金は全て北朝鮮の核兵器とかミサイルに使われている』
アメリカ軍は再編の中で、朝鮮有事の際の作戦統制権を2012年に韓国軍に譲渡し、さらに連携を深めます。その両国の関係は基地の共同使用や合同訓練を積み重ね、確実に一体化の道を歩んでいる在日アメリカ軍と自衛隊の姿と強く重なりました。
韓国では、北朝鮮に対する『備え』という意味で在韓米軍の必要性を感じている人が多いようでしたが、そうした国民の恐怖心を利用する形で韓国政府が地元の住民に対して、再編計画への協力を協力を強いているという印象もぬぐえませんね。
アメリカ軍は今後、韓国にある基地の3分の2を返還すると韓国側のメリットを強調していますが、地元の負担軽減をうたって、実は基地機能の強化を進めるやり方は沖縄と同じようです。