住民に訴える権利があるのか?2024年5月15日に判断が示されました。
辺野古新基地建設をめぐって周辺住民たちが国を相手に「県の撤回を無効化した国の決定」の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が開かれ、福岡高裁那覇支部は、一審で認められなかった原告適格を認めた上で、審理を那覇地裁に差し戻しました。
この裁判は、辺野古の住民4人が、県の埋め立て承認撤回を無効にした国の裁決は違法だとして撤回の効力の回復を求めたものです。
2022年の一審判決では、那覇地裁は、「4人に原告適格は認められない」として訴えを却下、住民側は、判決を不服として控訴し、今回の裁判では、原告適格の有無が争点となっていました。
2024年5月15日の判決で福岡高裁那覇支部の三浦隆志裁判長は、「原告適格の有無については検討するまでもなく適格を有する」と指摘した上で「原審においてさらに弁論する必要がある」と審理を那覇地裁に差し戻しました。
傍聴した女性は「最初信じられない思いだったが、とてもうれしく思っている。裁判所の誇りを持ってちゃんと正当な審理と判断をしてほしいなと思う」と話しました。
原告の男性は「これから(裁判が)進むなかでいろんな問題が出てくる。これを積み上げていけば「言った通りでしょう」と予想されたこともどんどん出てくるので、なおさら強くなるはず。だから絶対に勝てるようにこれからみんなで頑張っていこうと思っている。よく監視していきたい」と話しました。
今後、一審で示されなかった県の承認撤回や国の撤回取り消しについて司法判断がされるのか注目されます。
【記者解説 辺野古住民訴訟 控訴審判決】
辺野古の住民が国を訴えた裁判は、そもそもどういったことを争うものだったのでしょうか?
濱元記者:この裁判は、県が行った辺野古新基地建設の埋め立て承認撤回を国が取り消したのは「違法」だとして、基地建設予定地である名護市辺野古の住民が撤回の効力の回復を求めたものです。
時系列で整理します。2019年の3月に住民ら16人が国を訴えた裁判が始まりました。その1年あまり後の2020年4月に那覇地方裁判所は訴えを取り下げた1人を除く原告11人には裁判を起こす適格性、いわゆる原告適格がないとして残った4人で裁判を続けることとなります。
住民側は「埋立地の軟弱地盤の問題や基地ができた際の航空機運用に関する高さ制限について公有水面埋立法の要件を満たしていない」などと主張しました。
一方国側は「原告の法律上保護されるべき利益の何が侵害されるのか明確でなく、そもそも訴訟を起こす資格がないとして」として、両者の主張は平行線をたどりました。
そこから2年経ったおととし4月の判決では住民側の主張した裁決の手続きの話には触れられず、残った4人に対しても「原告適格」がないと訴えを却下するものでした。
きょう判決のあった裁判はそれを不服とした住民4人が、福岡高裁那覇支部に控訴したものです。
今回の高裁判決ではどのような判断がされたのでしょうか
濱元記者:今回の控訴審は一審判決で認められなかった「原告適格」の有無について争われたものです。
住民側は原告の3人については基地ができた場合、「航空機騒音に係る環境基準の基準値となっているW値(騒音の単位)70にあたる場所付近に住んでいる」とし、もう1人については「米軍が基準とする航空機が運行することで災害を受けるおそれのある高さ制限が及ぶ範囲に住んでいる」として原告適格が認められるべきだと主張してきました。
国側は「3人は受忍限度を超える被害にあたる稼動かの判断基準のW値75の場所からそれぞれ400メートルから500メートル離れている」「もう1人の住宅は高さ制限に抵触していない」として適格はないとしていました。
きょうの判決で福岡高裁那覇支部は、「原告3人はW値70の区域から200メートル以内に住んでいて騒音などの被害を直接的に受ける恐れがある」とし、「原告1人については住んでいる建物が高さ制限から90センチほどで航空機の運行により生命の安全などに著しい被害を受ける恐れがある」として原告の主張を認め、4人全員の適格を認めました。そして、裁判に関しては一審でさらなる議論が必要として那覇地裁に差し戻す判断をしました。
辺野古関連の住民訴訟で原告適格が認められた判決は初めてで、今後 これまで入り口で止まっていた裁判が動き出し、住民の求めていた「工事や国土交通大臣の裁決」の正当性を問う「中身」について司法が判断をするのかが注目されています。