家庭の油も貴重な資源に
毎日の料理で使う、油。よく使う割には、いざ使い終わると処分に困るものです。県内では廃油を回収して処分方法の悩みを解消し、しかもその廃油を車や重機を動かす燃料にしようという試みが各地で広まっています。
町民「ねぇ!びっくりですよねぇ!使い捨て油で(車を)利用できたら上等ですよね!」
その1つ、南風原町では今年4月から、家庭から出る廃油を資源ごみとして回収するようになりました。
南風原町住民環境課・金城吉信課長「資源化することによって、面倒くさくもなく、簡単で、元の容器に入れて回収してくれる。家庭としてはとてもいいんじゃないかと思います」
家庭で手を加えて処分しなくても、町が回収して燃料にするのですから、廃油を出さない手はありません。また、与那原町でも商工会の女性たちが、独自に廃油の回収を行っています。
「こういうものが海に流れたら大変っていう思いがあるし」
海に面する与那原町。資源ごみとしての回収はありませんが、環境保全の意識が高い女性部が先頭に立って、ご近所から廃油を集めています。
与那原町商工会女性部・山城佐代子部長「廃油ですので、一度使ったものをまたリサイクルして使うのであれば、どんな人でも協力できるのではないかと思って」
上原利恵子町議「その良さがわかれば。まだみんな半信半疑なところがありますから。違う燃料を入れて故障でも起こしたらとか」
こうした活動はうるま市の曙地区などでも行われ、徐々に県内に広がりを見せています。そこで気になるのは、集められた廃油がどう私たちに還元されるのかということです。南風原町などから廃油が集まる工場を訪ねました。
優れた技術を持つベンチャー企業家として県から表彰されたこの会社では、廃油を活用してディーゼル車や重機、ボイラーなど、様々な機械向けにバイオ燃料を生産しています。
エコ・エナジー研究所・仲村訓一代表取締役「爆発力とかそういうものに関しては、全く軽油と同等品。それもちゃんとJIS規格をもって軽油と同等品であることの県の認定を、県からお墨付きもらってますので」
ここで作られるバイオ燃料は、現在普及しているBDFと呼ばれるバイオ燃料と違い、生産過程で2次廃棄物を出さない、いわゆるゼロエミッションです。
仲村代表取締役「従来のバイオディーゼルには、グリセリンなどの2次廃棄物が出るというのが1つのポイント。廃棄物が廃棄物を生んだら何の意味もないので、その廃棄物を出さないでバイオディーゼルを作る方法がうちの技術です」
久田記者「あちらの装置で完成したのがこの燃料です。原料の廃食油と比べると、色もクリアになって、とろみが取れています」
また、この燃料はディーゼル特有の黒煙に含まれる粒子状物質や硫黄酸化物などの有害物質が10分の1以下、二酸化炭素はほとんど出ないなど、量産が実現すればまさに夢の燃料です。しかし、ディーゼル車に軽油以外の燃料を入れて、本当に車が走るのでしょうか。
久田記者「給油口を見ると、このように軽油に限ると書いてあるんですが、先ほど給油した燃料で実際に走るんでしょうか」
バイオ燃料を給油した車について行ってみましたが、まったく他の車と走りに違いはありませんでした。違うのは、排気がてんぷら油の匂いということだけだと、仲村社長は強調します。
工場「ここのセンターも、もう2年実証実験してますし、2年間、いろいろな重機関係、車両関係で走ってます。全然トラブルありません」
こんな画期的な燃料でも、普及には課題があります。
久田記者「廃油をもっとよりたくさん集める必要があるという問題も出てくると思いますが」
山城部長「そこなんですよね。1人1人が、声かけして集める方法しか。今のところはちょっと厳しいですね」
一般家庭が出す廃油の量には限界があります。町をあげて廃油を集めている南風原町でも、一般家庭から出るのは週に80リットルほど。回収が始まって1ヶ月ちょっととは言え、物足りない数字です。
また、ビジネスとして確立するには、生産・流通経路も整備し、軽油並みに手軽に給油できる体制が必要です。そのためには、まずは工場の拡大。そして、飲食チェーン店など大口の廃油供給先も確保すると語る仲村社長。沖縄発のバイオ燃料は 大きな可能性を秘めています。