沖縄の未来を考える「IMAGINEおきなわ」です。障がいの有無にかかわらず、子ども達が力を合わせて活動する合唱団があります。
耳が聞こえなくても、音楽を表現できることを知ってほしいと舞台に立つ中学3年生の歌を、目で聞きました。
♪にじふらい「どしゃぶりの涙流してそれでも前に突き進む」
響きわたる子ども達の元気な歌声。歌っているのは、声で歌う子だけではありません。白い手袋をはめて、大きな手の動きと豊かな表情で「歌う」子も。それぞれの自分らしさを発揮して音楽を楽しむ「ホワイトハンドコーラス」です。
声で合唱する「声隊」と、手歌と呼ばれる、手話をベースに視覚的に表現する「サイン隊」で構成されたホワイトハンドコーラスは、およそ30年前にベネズエラで生まれ、世界各国に広がっています。
日本では東京・京都に続き、2年前、沖縄でも活動がスタートしました。
小学生から高校生までのおよそ25人が、プロの音楽家や手話講師と一緒に、週1回練習を重ねています。
垣花瑛蓮さん「みんなと一緒に表現できるのが楽しくて、心も楽しくなる」
ろう学校に通う中学3年生の垣花瑛蓮さんは、みんなを引っ張るお姉さん的な存在です。聴覚に障がいがあり、手話でコミュニケーションをとっています。
宮古島で生まれた瑛蓮さん。1歳半のとき、音に対する動きや表情から耳が聞こえていないことが分かりました。その後、家族で沖縄本島へ移住。6人きょうだいの4女として、しっかりものに育ちました。
しかし、ろう学校から地域の中学校にチャレンジしたときは、自分の居場所について思い悩み、後ろ向きになってしまうこともありました。そんな時、母・水貴さんの勧めでホワイトハンドコーラスと出会いました。
垣花瑛蓮さん「活動に参加したころは、音楽が嫌い…興味がなかった。表情で、聞こえない私たちにも表現できるんだと思うようになってからみんなに届けたいと、目標に今練習を重ねて頑張っています」
先月、東京・京都の子どもたちも沖縄に集結しました。翌日に控えた初めての合同コンサートに向けて練習です。
東京声隊・久保田光一さん「きょう通し(練習)は初めてだったので、ここまで息が合うんだとびっくりしています」
京都サイン隊・西村潤さん「友達もできたし、人数が増えると楽しいなという感じがします」
垣花瑛蓮さん「一緒にお話ししたり、アドバイスしてくれたり、練習したりすることができて楽しい。ちょっとわくわくしていました」
コンサートでは沖縄の伝統的な歌、「てぃんさぐぬ花」や「月ぬかいしゃ」も披露されます。
手歌指導・田盛健了さん「(手話の)しまくとぅばがどんどん伝えていけたらなって思いながら、僕も先輩たちから習っているんです」
手歌の中には、一般的な手話だけでなく、昔から地域で受け継がれてきた、沖縄特有の「しまくとぅば手話」も散りばめられています。
例えば「八重山」という手話は、一般的には、数字の8に、「重い」と表現します。それが、しまくとぅば手話になると…
手歌講師・田盛健了さん「先輩から習ったのは、八が、重い。漢字の八が重い」
なんだか、八重山に広がる山々が見えるようです。
東京声隊・友重真生さん「(言葉は)難しいですけど歌は好きです」
京都サイン隊・柳野恵さん「だんだん手話をやっていくうちに心に染み入った」
京都サイン隊・西村潤さん「(Q.歌詞で好きなところは?)親の言うことは数えられないたくさん。というところ」
手歌講師・田盛健了さん「しっかり覚えて、今度は瑛蓮たちが伝えていくんだよ」
垣花瑛蓮さん「つなげていくのはやっぱりいいと思う」
瑛蓮さんは、障がいがあっても様々な表現ができるということを知ってほしいと話します。
垣花瑛蓮さん「私は耳が聞こえないけど、聞こえなくても健聴者と一緒にサイン隊として手歌で歌うことができる。(表情で)悲しい・楽しい・喜びとか、いろんな気持ちを表しているので、こういう気持ちなんだと理解してもらえたらいい」
コンサート当日。東京・京都・沖縄の子ども達が初めて一緒に舞台に立つとあって、会場には多くの人が詰めかけました。
観客の女性「今まで歌とか音楽って耳で聞くものと思っていたんですけど、手で表現できるというのを知って、すごくいいなと思いました」
観客の男性「沖縄の歴史を手話の中で感じることができた」
観客の女の子「みんなの音とか合っててすごかったので、また来たいです」
垣花瑛蓮さん「自分がだいたい95%くらいだったけど、みんなで一緒にやったら100%にできた。成功です。」
瑛蓮さんの母・水貴さん「今までの練習の風景とかが一気に重なって、彼女の表情に私も一瞬で鳥肌が立って泣いてしまいました。(Q.今後も続けてほしい?)彼女が続けたいというのなら親は応援するのみです!」
沖縄チームを含むホワイトハンドコーラスは、来月、オーストリアのウィーンでもパフォーマンスをすることが決まっています。
垣花瑛蓮さん「沖縄の有名な歌も歌うし、第九のベートーヴェンが途中から耳が聞こえなくなったこともあるので、耳が聞こえなくても諦めないで続けることができたから、そういうことを思って私たちが第九を伝えたい」
障がいがある子も、ない子も。一緒に「できる」を重ねて、みんなで感動を共有できる世界を切り拓いていきます。