アメリカ軍が出した廃棄物がいまだに放置されたままになっている国頭村の北部訓練場返還地の現状を確認するため、県の職員が調査に入りました。
濱元晋一郎記者「一見美しいやんばるの森ですが足元に目を向けると、ドラム缶や土嚢などアメリカ軍の廃棄物が残されています。朽ちていて長らく放置されていることが伺えます」
米軍廃棄物を調査している 宮城秋乃(みやぎ・あきの)さん「(掘っている様子)銃弾が出てきましたね。これはいま手をつけていない銃弾で、あっ、こっちにもありますね、この辺りを見てください」
地面を掘り出してすぐに空包が3発も見つかりました。
先月26日、県環境部の職員ら5人がやんばるの森にある北部訓練場返還跡地を訪れて、アメリカ軍が放置した廃棄物の現状を調べている女性から説明を受けながら、およそ4時間視察しました。
沖縄大学 桜井國俊(さくらい・くにとし)名誉教授「残念ながら我が政府は三流の政府、それをまた放置してる我々も もしかすると三流国民なのかも知れない」
7年ほど前に返還されたアメリカ軍の北部訓練場跡地はおよそ4000haにも及びます。
返還に伴い現場を元に戻す「原状回復」の役割を担っている国が調査した場所は、返還地全体の0.01%ほどにとどまっています。
2022年度に沖縄防衛局が実施した最新の調査でも0.6haから廃プラスックや金属くずなど2500㎏に加え、1万4000発あまりの空包が見つかっていました。
今後も廃棄物が新たに見つかれば適切に対応するとしていますが、具体的な調査範囲や計画は明らかにされていません。
環境学を専門に研究する沖縄国際大学の桜井國俊名誉教授は、情報開示請求をしなければ調査内容がわからないのは行政のあり方として不適切だと指摘します。
沖縄大学 桜井國俊名誉教授「やんばるっていうのは人の目が届かないわけですよ。そこで清掃作業をね、まともにやってるのかどうなのか、誰が見てるんですかということがありますよね。国民に対する説明責任ってのは限りなく果たされてないと思うんですね。そこに国民の貴重な税金が使われている」
北部訓練場返還跡地ではこれまでに体に悪影響を及ぼす化学物質「PCB」を含んだドラム缶などが次々と見つかっていて、国による支障除去が十分だったのか疑問の声が上がっています。
県の担当者「現場の廃棄物の状況を確認しましたので、持ち帰って報告したいと思います」
桜井教授は北部訓練場返還跡地に県が目を向けていくことは、問題解決の糸口になるかもしれないと期待しています。今後は県民の宝であるやんばるの森を守るために、率先して声を上げていくべきだと話しました。
沖縄大学 桜井國俊名誉教授「4000haをどうクリーンにするか、それについて県がきちんと説明を求めるべきだと思うんですよ。県の意見を述べながら、同時に我々県民にですね情報するを開示する、沖縄防衛局がこういう形でやろうとしてる、我々はこうすべきじゃないかということで、沖縄防衛局に対して意見を述べていく」
日米地位協定には、アメリカ軍が基地として使った土地の原状回復義務を持たないとされています。こうしたアメリカのやりたい放題を許すような部分を変えていこうという姿勢を国が強く示さなければ、根本的な解決にはならないと桜井教授は訴えています。
沖縄大学 桜井國俊名誉教授「汚染者負担の原則で(アメリカでは)米軍自身が(汚染した場所を)きれいにしろと言ってるわけですよ。同じことをね、海外ではやらないんですよ。とりわけ日本ではやらない。この矛盾をね、やはり私は日本政府はおかしいじゃないかと、やっぱりアメリカでやってると同じことを日本でもやってほしいと(訴えるべき)」
沖縄大学 桜井國俊名誉教授「沖縄に問題を押しつけておいて(アメリカには)口をつぐんでいる。そういういい加減な政府を許しているのは我々国民なわけですよ。だから、そのことを我々が自覚すべきだと思うんですよね。政治が悪いってのおかしいんです。我々が元々ね、だらしがないからこうなるんだと思います」
生物多様性の森として世界自然遺産に登録されたやんばるの森には、いまだに向き合うことを余儀なくさせるアメリカ軍が沖縄県民に押し付けた基地負担の問題が山積しています。自然というかけがえのない大切な宝を未来に繋ぐために、今を生きる私たちはどうするべきなのかが問われ続けています。