辺野古の新基地建設で防衛局が出した設計変更を不承認とした沖縄県の判断を取り消す国の裁決とともに出された「是正指示」の違法性が問われている裁判で最高裁はさきほど、県の訴えを退ける判決を言い渡し県の敗訴が確定しました。
辺野古新基地建設をめぐっては埋め立て予定海域に広がる軟弱地盤を固める工事を行うために沖縄防衛局が出した設計変更の申請を不承認とした沖縄県の判断を国交大臣が取り消す裁決とともに承認を求める「是正指示」を出していました。
県は是正指示を違法な国の関与だとして取り消しを求める裁判を起こしていましたが福岡高裁那覇支部は「是正指示」は適法だとして訴えを退けていました。そのため、県は最高裁に判断を仰ぎましたが9月4日の判決で上告が退けられたため、県の敗訴が確定しました。
最高裁の判決によって県は設計変更申請を承認する法的な義務を負うこととなりました。辺野古新基地建設をめぐる県と国の攻防は大きな局面となり、今後の対応が注目されるなか玉城知事がこのあとコメントを出す予定です。
県敗訴 地元では様々な声
県の敗訴が確定したことを受けて、地元では、様々な声が聞かれました。 女性は「別に驚きはしませんけど、ただ私たちがここまで四半世紀以上に渡って頑張ってきて、それがこういう形で踏みにじられていくというのはとても悔しい思いがします。判決が間違っているんだから、私たちは正しい道を行くまでだと思っています」と答えました。 男性は「正解な裁判の判決だと思ういま中国やら北朝鮮の状況、本当に厳しいのがあってだから抑止力を高めておかないと将来の日本が大変なことになると思う」と述べました。
記者解説 辺野古裁判で県「敗訴」判決の影響と今後の展開は?/玉城知事の判断は
ここからは塚崎記者です。辺野古新基地建設をめぐる裁判で、きょう、県の敗訴が確定しました。今回の裁判・判決はどういった意味があるのでしょうか。
塚崎記者「今回の裁判は、大浦湾で見つかった軟弱地盤を固める工事を県が不承認としたことに、国土交通大臣が県に承認するよう求めた是正指示が違法なのかどうかが焦点となっていました。県は是正指示が違法という立場でしたが、訴えは認められませんでした。きょうの判決で、是正指示が確定し、県が設計変更を承認する法律上の義務を負ったことになります。」
辺野古を巡って工事を止めたい県と進めたい国の双方は翁長前知事の承認取り消し以降、8年にわたって13件の法廷闘争を行って溝を深めてきました。なぜ、泥沼ともいえる状況になっているのでしょうか。
塚崎記者「これまで沖縄防衛局は、県が不利な判断や決定をした場合、「行政不服審査法」の仕組みを使って、同じ政府内の国土交通大臣などに申し立て、県の判断を取り消したり、防衛局に有利になる判断を指示したりしていました。」
今回確定した是正指示もこういった構造の中で国交大臣から県に出されたものです。そうした中で、県は国の関与が違法として裁判を起こしたり、国地方係争処理委員会への申し出たりすることを余儀なくされてきました。
行政法を専門とする琉球大学の徳田博人教授は、国が頭ごなしに県に言うことを聞くよう迫るやり方に、疑問を投げかけていました。
琉球大学 徳田博人教授「(設計変更が不承認となった場合)本来(防衛局は)どうするかというと、(行政事件訴訟法に基づき)地方裁判所に当該(埋め立て変更)不承認の取り消し、あるいは(変更承認処分求める)義務付け訴訟を提起する」「(司法や国は)本当に公正な第三者が裁決を下し、政治と司法が分離し、公正な裁判をしたか」「政治や経済など、利害関係が法の世界に入ると(法の自律性が)ゆがめられる。これを関わらないようにするのが日本国憲法の大前提」
塚崎記者「国は本来、裁判所に訴えて県の判断の取り消しを求めるべきですが、政府内のやり取りだけで無効化しているので、これまでの対応は国と地方の関係をねじ曲げているといえると思います。」
とはいえ、国の是正指示が確定したことで、県は設計変更を承認する義務を負ったわけですよね。玉城知事に対抗手段は残されているのでしょうか。
塚崎記者「はい。今後、県が設計変更を承認しなかった場合、国は県に代わって設計変更を承認する「代執行」の手続きに入るとみられています。徳田教授は、この手続きの中で、県が訴える機会が残されていると説明しています。」
琉球大学 徳田博人教授「是正の指示との(国の)関与の仕組みと代執行の関与の仕組みは別々の仕組みだ」「(最高裁で適法性が確定し)是正指示で(県側に変更承認の)義務が生じたからといって「(国交大臣に変更承認を)すぐ代執行しなさい」と(地方自治法で)はなっていない」「判決でなお十分に県の意思が貫徹できず、もう少し司法に対しあるいは住民との対話を通して、判断に従うか従わないかを含め県の代表として知事に判断の余地が残される」
代執行に至る流れがこちらです。設計変更の承認について、まず国側が改善勧告、指示を行い、国側が裁判所に請求して命令を出し、その3つすべてに県側が従わなかった場合に、初めて国側が県に代わって設計変更を承認する「代執行」に至るという流れということです。
塚崎記者「法律で規定されている流れの上では、こうした「代執行」に至る裁判などで、県側が改めて、新基地建設の問題点を訴える機会が残されていることになります。徳田教授は逆に、玉城知事が最高裁判決で確定した是正指示に従って、設計変更を承認した場合には、別の対応も迫られると強調していました。」
琉球大学 徳田博人教授「条例・法の仕組みで県民投票を行い、県民の多くの人たちが辺野古移設に「反対」と。県民投票の仕組みは 県民の意思・投票結果に知事は従う義務がある」「沖縄県の知事が幾重にも(新基地建設の)納得しない点の説明を(国から)受ける機会があるのに、承認したとき(国側の)説明に(県は)どういう点で納得をし、どういう点で、沖縄に犠牲を強いられる構造を今後、克服する道筋が出てきたのか。」「そうした説明を県が(県民に)求められることになるかもしれない」
塚崎記者「徳田教授が指摘していたように、2019年の県民投票が一つのポイントになってくると思います。県民投票では投票した人のおよそ72%が新基地建設に伴う埋め立てに「反対」を投じました。今回、是正指示が確定するまでの政府や司法の対応が、沖縄の過重な基地負担に目を向けてきたのか、改めて精査する必要もあると思います。」
今後も玉城知事の判断と国の動向に注目していく必要がありそうです。ここまでは塚崎記者とお伝えしました。
中継 是正取り消し訴訟 県敗訴で知事が会見
辺野古の新基地建設で県の判断を取り消す国の裁決とともに出された「是正指示」の違法性が問われていた裁判で県の敗訴を受け玉城知事が会見を開いています。