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使用済みの薬莢のなかに込められた色とりどりのクレヨン。見方を変えれば、未来を描けるという思いを込めたこの作品を手がけたのは、県出身のアーティスト、志喜屋徹(しきや・あきら)さんです。

アメリカ軍の払下げ品をアートに変えることで、沖縄から「ポジティブな未来」を伝えようとしています。

志喜屋徹さん「これは米軍のパラシュートなんですね、そのままの形なんですよ。ここに浮遊しているのが、中の白い部分を使って、翼に見立ててる」

うるま市出身で東京在住の現代美術アーティスト、志喜屋徹さん。この日は、地元・沖縄での展示会に向けて準備を進めていました。

アメリカ軍の廃材などを日用品に活用して暮らしに取り入れた、戦後の沖縄の人たちのたくましさをがテーマです。

特集・米軍払下げ品で沖縄の未来描く

志喜屋徹さん「実際戦争に使われたものとか、米兵が使ったものとか捨てたものとか、そういったネガティブな意味合いのものを使いながら、それをポジティブに価値を転換して文化にまでした沖縄のモノづくり精神。それが大きいコンセプトかもしれないですね」

志喜屋さんは、県立芸術大学を卒業後、東京の大手広告会社でアートディレクターとして活躍。現在は、フリーで東京と沖縄を拠点に仕事をするかたわら、国内外で作品を発表しています。

これまで、日常にあるものを視点を変えて表現してきた志喜屋さんですが、今、沖縄を題材にした作品制作に力を注いでいます。

沖縄を表すアートをどんな材料を使って形にするのか。模索する中たどり着いたのは、アメリカ軍の払下げ品でした。

特集・米軍払下げ品で沖縄の未来描く

志喜屋徹さん「沖縄って特殊な基地があって、そこから流れてくるものが当たり前のように日常で使っている、基地があるがゆえの特殊な事情。それが沖縄日常を伝える一つのキーワード、物自体が象徴化するものになるなと気づいて。それで一気に米軍の放出品払下げ品を素材にした作品を作るようになったんですよね」

うるま市にある志喜屋さんの実家。今でも大切に保管している品々を見せてくれました。

志喜屋徹さん「この辺のものも、ダースベーダーとかありますけれど、なんとなくぷらっと払下げにリサイクルセンターに行くぐらいの感覚」

志喜屋徹さん「これは、迷彩服なんですけれど、実際におやじがさとうきびの作業をするとき実際、着ていたもの」

実家がサトウキビ農家だったという志喜屋さん。作業着に迷彩服を着るなど、軍の払い下げ品は、日常に溶け込んだものでした。

志喜屋徹さん「当時もこういうものしかなかったはず、パラシュートであるとか薬莢であるとか。そのなかで自分では何をつくるか工夫、あるもので考えることをしていたはずですよ。だから僕はそれをあえて今やっているというか、なんでも手に入る時ではあるけれども、あえて当時やっていた戦後のものづくりをしてきた人たちの追体験というか、そういった感覚でやっているのはあります」

特集・米軍払下げ品で沖縄の未来描く

志喜屋さんは、沖縄をアートで描くにあたって、足元の歴史を学び直すためにリサーチも行っています。読谷村にあるチビチリガマ。ここは、沖縄戦でガマに避難していた住民が集団自決に追い込まれた場所です。

彫刻家の金城実さんの案内で今回、初めてガマの中に足を踏み入れた志喜屋さん。金城さんの話に耳を傾けながら、78年前に戦場となった沖縄から何を発信できるのか、未来の沖縄に何をつなげていくのか、アートが果せる役割について考えました。

彫刻家・金城実さん「沖縄の戦争の悲劇を恨むのではなく、人間の尊厳の誇りを拝みたいと。それはまさに芸術である。あなたの作業も日本全国まわりながら、沖縄戦の記憶を結んでいく、伝えていく作業に頑張ってほしいと思う」

特集・米軍払下げ品で沖縄の未来描く

展示会当日。会場には、人の命を奪う道具を使って未来を描いた作品に加えて、人々が安らげる世界になってほしい、そんな願いを表現したチビチリガマをイメージした作品も。

来場者は、空間全体で、未来に希望を持ちたくましく生き抜いてきた先人たちの思いを感じているようでした。

来場者「平和になるように空に飛ぶような鳥のイメージで刺繍も再現、ていねいに。あの当時にこんな糸があったのかなと思いながらもすごく感激しました」

特集・米軍払下げ品で沖縄の未来描く

来場者「軍の教本みたいなやつとかで作ってあって、徹底しているなと。これは見てよかった。自分たちの未来を考える一つのきっかけになれば」

志喜屋徹さん「マイナスからプラスにするってすごい、価値転換やエネルギーも必要だと思うんですけれど、それができる能力がウチナーンチュにはあるんじゃないかなと思うんですよ。それを誇りにしていいと思う。先人たちに学ぶことも多いと思うし、自分たちも未来に希望を持ってやっていけるんじゃないかと思ってくれるとうれしいかなと思いますね」

展示会は、来月3日まで、那覇文化芸術劇場なはーとで開かれています。志喜屋さんが手がけた作品を見て何を感じるのか。ぜひ、この機会に足を運んでみてください。