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今を生きる私たちが50年・100年先の沖縄を見ていくシリーズ「IMAGINEおきなわ」です。世界自然遺産に登録されたやんばるで訪れた人に暮らしや文化など自然にとどまらない地域の魅力を伝えようと奔走する女性がいます。集落を次の世代につなぐための挑戦とは。

豊かな自然とともに希少な野生動植物が息づく「やんばる」沖縄本島北部に広がるこの地域はおととし(2021)世界自然遺産に登録され、およそ8割の敷地を森林が占めています。

点在する小さな集落は40以上で人々が身近な自然と手を取り合いながら静かに暮らしています。30人ほどの住民がいる謝敷(じゃしき)集落で地域に特化した旅行会社を営む仲本いつ美さんです。去年8月、古民家を改装し、集落で初めてとなる宿をオープンさせました。

やんばるホテル 南溟森室 仲本いつ美さん「私が今何もしないでこの集落から人がいなくなっちゃって昔ここに集落があったということを30年後、40年後に自分が60歳、70歳になった時に思い返して多分後悔すると思う」「私としては集落を次の世代につなげたいという思いでやっている」

#IMAGINEおきなわ vol.28「やんばるにかける」

地元が世界自然遺産に登録され注目を浴びる一方、集落の高齢化が急速に進んでいます。

高齢者の割合(65歳以上)やんばる地域(国頭・大宜見・東村)36.0%県全体 22.6%令和2年 国勢調査より

子や孫を頼って住み慣れた家から離れていく住民とともに次第に増えていく空き家をただ見ていることはできませんでした。

やんばるホテル 南溟森室 仲本いつ美さん「観光客が増えても集落から人がいなくなっていく。集落の中はどんどん寂しくなっていくという現象を目の当たりにしてきたので、ちゃんと観光が地域の振興、特に集落の振興に寄与するような取り組みってできないかな?集落を次の世代に残したいという気持ちで起業した」

国頭村で生まれ高校・大学と地元を離れたものの役場の職員として働くため再びやんばるへ。幼い頃は地元にある違和感を持ちながら過ごしていたといいます。

#IMAGINEおきなわ vol.28「やんばるにかける」

やんばるホテル 南溟森室 仲本いつ美さん「小さい頃は教科書に書いてあるような季節がここにはなかったりとか、植物がなかったりとかして教科書が正解でこの地域が間違っているという感覚がすごくあって、田舎だから間違っているんだという劣等感を持っていた」

「地域のことを仕事の中で勉強させてもらってすごくそれが魅力的だと思ったし、なぜ教科書と違うのかということも周りのおじいちゃんとかおばあちゃんたちからたくさん教えてもらったので」

「この地域のことが好きになったしここで生まれ育ったことが誇りになっていった」

宿泊棟「上ン根」1泊2日素泊まり(集落案内付き)2名1棟利用の場合1人あたり23250円(税込)

#IMAGINEおきなわ vol.28「やんばるにかける」

目指したのは「集落での人々の暮らしや文化を宿泊者に伝える宿」例えば土地の持ち主が大切にしてきた赤瓦は積み重ねてデザインに。

宿泊棟「久志」平屋を改装した部屋は、もともと先祖の仏壇を守るために建てられた民家だったことを当時のつくりのまま訪れた人に伝えます。

やんばるホテル 南溟森室 仲本いつ美さん「お仏壇やヒヌカンとか、ここの物語を紡いできたおじいさんが大事にしてきたこととかを宿に泊まるお客様に伝えることで、より宿がお客様にとって価値のあるものになるし、この土地のことを伝える集落のことを伝える上でも重要なキーワードにもなってくる」「こういうのって家庭の中では当たり前だけどリゾートにはない(宿泊した人は)沖縄の人の本当の心に触れた気がするって言ってくれる」

集落での暮らしを守りながら宿を運営していくために仲本さんは住民たちとある約束をしています。それは訪れた人に時間をかけて集落を案内することや、やんばる3村のルールを説明すること。それが集落と向き合いながら事業を行う自分たちの責任だと考えているからです。

「噛まれてみたい人」「ガブ」「ちょっと痛い」

#IMAGINEおきなわ vol.28「やんばるにかける」

さらに滞在中には山歩きや星空案内などやんばるの自然を体験するツアーを提供。何より地域に魅力を感じてもらうことに軸足を置いています。

宿泊した人「大人も知的な欲求が刺激されるし、子どもは山の中で新しい発見があって、教えてもらうと虫や動物もおもしろく見えてくるからいいんじゃないか」

集落の人たちとの会議「やんばる食材ツアーぜひやりましょう」

地域の特色を食でも感じてもらおうと地元農家との取り組みも始めています。収穫から調理までを体験してもらい身も心も集落に浸かってもらうのが狙いです。

集落の人「魚や農産物・観光農法も世界自然遺産の森もある、全部コラボすれば将来性があることだと思う」「(仲本さんが)地域を引っ張っている」

#IMAGINEおきなわ vol.28「やんばるにかける」

地元が直面した過疎に立ち向かい集落を次の世代につなげるための挑戦はまだ始まったばかり。仲本さんが見据えるやんばるの未来とは。

やんばるホテル 南溟森室 仲本いつ美さん「私が残していきたい、つなげていきたいのは集落なので、宿はあくまで拠点宿を拠点にして集落の人との交流だったり地域の様々な特色のあるアクティビティを楽しんでもらえたらな、という思いがある」

「若者がワイワイしている拠点をつくること、人知れずなくなってしまう(集落)ではなくて、人々の関心の中に集落というものが入ってきてこの地域に若い人たちが還流するような拠点をつくりたいなと思っている」「いろんな仕掛けをつくって若者だけじゃなくて人々が訪れる場所にしていきたいなと思っている」


やんばるホテル南溟森室|Nammeishinshitsu|沖縄県国頭郡