タバコを吸っていてもいなくても咳が止まらない、それが数か月にわたって続く。または日常、痰がからんでスッキリしない。そんな40代以上の方。
歩いていて息切れするようになった。とくに階段、2,3階なら楽に登り降りしていたのに、ちょっと息苦しくなってきたとか。年齢のせいかもしれないとか、ただの風邪だと気にしていない方。
しかしその症状、もしかしたらタバコを吸う人に特有の慢性閉塞性肺疾患「COPD」の兆候かもしれません。
「COPD?」
おもろまちメディカルセンター・兼島洋医師「40代、50代頃から、最初は咳とか痰という病状が続く。年齢のせいだと思ってしまい、受診が遅れる。ということでCOPDも、かなり進んだ状態で見つかってしまう」
COPD患者の9割は喫煙者です。タバコを長いあいだ吸っていると、肺の機能はどのように低下していくのでしょうか。
肺には空気の通り道、気管支があります。この気管支の壁がタバコの有害物質による慢性的な炎症で厚くなると、空気の流れが悪くなり、呼吸に影響してきます。
さらに気管支の先にある肺胞、これは二酸化炭素と酸素を交換する重要な部分ですが、タバコによって肺胞の壁が壊された状態、肺気腫になると、その交換機能は著しく低下。壊れた肺胞は膨れ、肺自体に弾力性がなくなり、空気をうまく吐き出すこともできなくなるのです。
COPDかどうかを判断するためには、肺の状態をさまざまな検査で探ります。これは最初の一秒間の肺活量をはかる検査機。呼吸機能が正常かどうかのチェックです。これに加え、X線やCTスキャンで実際に肺をみます。
これはタバコを吸わない健康な人の肺。気管支の壁は薄く、肺の弾力性も失われていません。
しかし長年タバコを吸って、すでに呼吸に異常が出始めている人の肺を見てみると、気管支の壁は慢性的な炎症で厚くなり、空気の通りみちはだいぶ細くなっています。黒く映っているのは、肺胞が壊れ膨らんでいる状態。全体的に肥大し、弾力のなくなった肺は呼吸困難を引き起こす。こうなると、治療は難しくなります。
兼島先生「これは正直言って、肺の機能をもとに戻すことは、いまの段階では出来ないんです。死亡率は全国一位となっています。沖縄県が高齢社会というのもあるし、大勢の方がタバコを吸っていたということもあるので、そういう方がCOPDになって呼吸不全で最終的に亡くなられると」
COPD自体を治す薬はありません。肺の機能が落ちているために感染のリスクも高くなり、インフルエンザなどにかかると呼吸不全などの重体に陥ることも多くなります。気管支拡張などの薬物治療と、呼吸で得ることのできない酸素を日常生活で吸入し続ける酸素療法が行われることになります。
現在、70歳以上の4人に1人がかかっているといわれるCOPD。世界的にも増加傾向にあり、WHOによると2020年には死亡原因の4位か3位になると発表しています。60歳からの人生、セカンドライフを健康に過ごすために禁煙はやはり大事なターニングポイントと言えるでしょう。
兼島先生「やはりなんといっても第一の治療はどの時点であっても禁煙が第一です。初期の段階でやめれば、肺の力も在宅酸素をしなくてもよくなるので、禁煙が一番大事」
とはいえ、禁煙は難しいものです。何度も試みたけど達成できなかった人には、禁煙外来を利用する方法もあります。
ニコチン依存症を緩和していく禁煙治療を行う禁煙外来。ニコチンパッチと呼ばれる貼り薬や、飲み薬を使ってタバコを吸う機会を減らし、徐々にニコチンの量も減らしていく方法です。
一度壊れた肺の機能は元には戻りません。早い段階で禁煙することしか、COPDのリスクは回避できないのです。
兼島先生「ご自身の健康を考えて、COPDを含め、将来的に70,80まで元気にやっていこうというのであれば、やはり禁煙が一番大事なのではないかと思います」
もちろんCOPDのすべての原因がタバコではありませんが、COPD患者の9割が喫煙によるものという統計はやはり考えさせられる数字です。
VTRにもありました禁煙外来、県内でも多くの病院で設置されていますが、保険適用となるのはこれらの要件を満たす人ということになります。
タバコが止められない原因はニコチン作用、つまりニコチン依存症と長年の喫煙習慣の2つです。どちらも克服するのは容易ではありません。将来の健康のために禁煙を考えている方には、治療も一つの選択肢と言えそうです。