5月のこの時期は、空を舞う「こいのぼり」が各地を彩っています。子どもが自らこいのぼりを作ることで子どもによる、子どものためのイベントを成功させようと知恵を振り絞る大人たちがいました。
アーティスト・KOOTAさん「付近絵を描き続けることで、周りの大人たちに見てもらえたりとか、ほめてもらうことで自己肯定感が上がって挑戦意欲に繋がるのかなって思ってて。挑戦する子たちが増えることで、もっと沖縄が盛り上がるんじゃないかなと」
先月16日、24度を超える日差しのなか50人あまりの大人が集まって1カ月後のイベントに向けた作業を着々と進めていました。
那覇市国場の「こいのぼりまつり」は27年前から始まりました。子どもたちに夢を、大人たちに希望を、お年寄りに誇りをというスローガンで地域のシンボル「国場川」を中心に住民が心を一つにする機会をつくろうと企画されました。
アーティスト・KOOTAさん「子どもが絵を描く環境だったり、子どもが自由に表現できるところを環境作りっていうところに目を向けて活動していきたいなと思って」
今年は県内を中心に活動するアーティスト・KOOTAさんがイベントに参戦しました。平日はウェブデザイナーとして働く傍ら休みの日にはアーティストとして、「絵を描く機会」を届けています。川を彩るこいのぼりをつくるため地域の児童館には子どもたちと一緒になって絵の具まみれになるKOOTAさんの姿がありました。
参加した女の子「空に蝶々とか、海の中にカニとか手の形で表現してる」「空に(こいのぼりが)揚がってから、空と(こいのぼりの)空でこれも空だからいい感じになりそう」
Q.きょうのテーマはなんですか?参加した男の子「うーん、みんな違ってみんないいみたいな。ほら、(指さしながら)いろんな色があるから」「みんながそういうこと(みんな違ってみんないいと)考えてくれたらいいなって」
アーティスト・KOOTAさん「絵を描くことで発想力だったりとか、想像力だったりとかも育まれるし、周りとの違いだったりとかを受け入れるというか、そういった何かいい面もあるのかなと思っていて。小さい頃から僕自身も絵を描いていたので、子どもたちもそういった絵に興味を持ってほしいなって思ってます」
絵画との出会いは、小学2年生の時に、コンクールに応募した作品が採用されたことで描いた絵が、周りの大人に褒めてもらえるという喜びが様々なことに挑戦できる「自信の源」になっていたといいます。アーティストだから「絵がうまい」「高い画材を使っている」といった偏見や壁を取り払おうと「クレヨン」を使った作品づくりを続けています。
国場児童館 山崎新さん「子どもたちがまずやりたいっていう気持ちになるっていうきっかけにもなるし、さらにそこにテクニックを持っている人がいると、もっとこうしたい!っていうプラスアルファが出てくる感じがするんですよね」
1986年に設立された那覇市の国場児童館では、0歳~18歳までの子どもたちが自由に遊べる場を提供していて、去年1年間でのべ1万人余りの子どもたちが利用しています。館長の山崎さんはここ数年、自分を表現することを我慢する子が多くなってきていると感じていました。
国場児童館 山崎新さん「本当はもっとこうしたい、「だけど」っていうのがついてしまうような、「もっとこうしたい」は持っているけど言い出せない」「この児童館建ってまもなく37年になるんですけれども、37年前は、地域の老人会とか婦人会で花笠踊りとか、あの琉球舞踊とかエイサーとか、地域の大人たちが児童館を使っていろんな体験の場を作ってたんですよね。」
「でも今の地域の大人がそんなゆとりないんですよね。なので、これはあの家庭の経済だけではなくて、地域の大人も含めて忙しくなってきているのは間違いないと思います。」
「きょうもたくさんいろいろ塗り塗りたくられましたけれども、本当はこうやってやりたいこといっぱいあるはずで、そのエネルギーはあるはず」
子どもたちの「やりたい!」「楽しい!」を受け止めてくれる大人の存在が必要としていた児童館と自由な価値観でのびのび表現できる場所をつくりたいというKOOTAさんの思いがつながりました。
国場児童館 山崎新さん「つくって飾られるというのは、それだけで一つの参加の場かなという風にも感じられるので、そういう機会を通して居場所を感じられていくと思う」
アーティスト・KOOTAさん「一緒に作ってよかったなっていうのと、また地域の人たちも一緒に回りに見ながら、掲揚したんですけど、やっぱそこでもまた子供たちと地域の方が、「あれ僕が作ったんだよ」っていう話とかもしていたので、こういった活動を続けてもっと子供たちと地域のつながりも作っていけたらいいなって思います」
作った子どもたちだけでなく、通りかかった人たちも足を止めて優雅に泳ぐこいのぼりに心を弾ませていました。
りずきちゃん・仲井真小学校3年生「後ろから3番目の手形のやつ」「手形をいっぱいつけるのが(楽しかった)」
Q.こいのぼり見てどう?しおりちゃん・仲井真小学校3年生「作った時も楽しかったけど、どんなふうに揚がるんだろうと思ってて、すごく楽しそうに上がってる感じ」
こうすけ君・仲井真小学校3年生「うれしい!」「だって、自分が作ったのがみんなに見てもらえるんだもん」Q.KOOTA先生は何を手伝ってくれたの?「絵描いたりとかさ、どんなってやるよって教えてくれた」
Q.KOOTA先生との思い出は?「ずーっと本当に残ると思う」Q.KOOTA先生また来たいと言ってたが?「絶対来てほしい」(17:11)
アーティスト・KOOTAさん「自由に絵を書いたりとか、好きなように表現をしてるっていうような、僕たちが忘れているような子供心っていうのを身にしみて感じることが多いんですけど、そういったものを大きくなっても忘れずに自由に表現してもらって絵だけに限らず、いろいろなことに挑戦していってほしいなと思います。」
子どもたちの健やかな成長を願う人たちによって受け継がれてきた「こいのぼりまつり」はあさって、3年ぶりに帰ってきます。地域全体が、子どもたちの笑顔であふれそうです。