去年11月にうるま市で発生した中学生たちによる集団暴行事件を覚えているでしょうか?あれから4ヶ月が経ち、学校では新学期が始まっているのに、事件の背景がはっきりわかっておらず、遺族の苦しい日々が続いています。少年事件の遺族の苦しい現状を取材しました。
わが子のためにと千羽鶴を折るのは米盛梨枝子さん。彼女は少年たちによる集団暴行事件で息子を亡くしました。なぜ息子の命が奪われなければならなかったのか真相を知りたい。しかし、そこには加害者が少年ゆえの大きな壁が立ちはだかっていました。事件が起きたのは去年11月。中学2年の星斗さんが、13歳と14歳の同級生8人から暴行を受け、死亡したのです。
米盛さん「目は半開きの状態で、自分では呼吸もできない状態で」
星斗さんは2年生になった頃から暴行を受け、ひどいケガをして帰宅するようになりました。「いじめ」にあっているのでは?、家族は学校に相談していました。しかし学校は事件後の会見でも「いじめ」の存在について明確な回答を避けました。
学校側「本人からの訴えはありませんが。お互いの関係で目に見えない部分で、何らかの力関係があったのかと考えている」
息子の身に何が起きていたのか真実を知りたい。しかし学校は明らかにはしてくれませんでした。そこには少年事件特有の事情があったのです。1つは「少年法」。加害少年たちの更正に重きを置くこの法律の下では事件の詳細は公表されません。
また被害者も加害者も同じ地域に住んでいることが多いため、学校や地域は周りの子どもたちのケアや、いつか地元に帰ってくるであろう加害少年への配慮を優先するのです。梨枝子さんが閲覧した加害者の供述調書。それは残酷なものでした。
生意気だったから。少年たちはそれだけの理由で、無抵抗の星斗さんに対し、3時間にもわたり、殴る、蹴る、そして体を持ち上げて地面に叩きつける、などの暴行を繰り返しました。ナレ:その様子を携帯電話で撮影した少年もいました。
米盛さん「想像以上に残忍な殺され方をしているのがショックで、悔しくて。」
加害少年たちは全員が、少年院に送られました。大人と同じ、刑事裁判で罪と向き合ってほしい、厳しい罰を受けてほしいと願っていた遺族にとって納得のいくものではありませんでした。梨枝子さんは事件後、不眠や胸の苦しさを訴え、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されました。
働くことなどできませんが、犯罪被害にあった人の医療費や葬儀費用などを負担する制度はないため、300万円を超える請求が彼女のもとに寄せられました。
息子を守れなかった無念さに加え、肉体的にも経済的にも追い込まれたのです。それに対して押しつぶされそうになったりとか、自分のせいで星斗は亡くなったんだろうかとさえ考えてしまって。
こうした遺族の現状について「少年犯罪被害当事者の会」の武るり子さんはこう語ります。
米盛さん「何かどうせ、被害者も悪くて、喧嘩やったんやろうって大体思われるんですよ。加害者が10人いたら、10対1になるので、声を上げにくかったり、本当に大変な現状に追いやられるんです。」
事件の背景がはっきりしないまま、学校や地域は普段の生活を取り戻しつつあります。毎月、息子の好物を携え、現場を訪れる梨枝子さん。失われた命ときちんと向き合ってほしい、そう願っています。
梨枝子さんはいまも学校に対し、「いじめ」の存在を調べ、結果を公表するよう求めています。事件の背景を解明しなければ、真の反省はない、再発も防げないと考えるからです。
また、こうした事件においては遺族を孤立させないこと、周りの私たちも遺族の気持ちを理解し、支えてあげることが必要だと思います。以上Qリポートでした。