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浦添市が行っている「子育て支援」をめぐり今、ある問題が起きています。

浦添市では、市内にある子育て支援センター4か所のうち、民間に委託している3箇所の廃止を決定し、「認定こども園」での支援拡充を図る方針を打ち出しました。

しかし、子どもを預かる「認定こども園」と親子の支援を行うことが目的である「支援センター」では、その主な役割が違うことから、「支援センター」を利用していた親子の新しい受け皿として、はたして「認定こども園」がきちんと機能するのかと不安の声がある一方で、センターの存続を訴える声が大きくなっています。

浦添市 子育て支援拠点センター廃止の波紋

利用者「つどいのひろばの先生たちにたくさん救われました。私が救われたように、今後も救われる、ここに来たら頑張ろうと前向きになれる方たくさんいると思います。どうぞ今までどおりの存続を強く願っています」

「孤独な育児から救われた」「子育てに前向きになれた」といった支援センターの存続を求める利用者の声が、浦添市の方針に納得できていないことを示すアンケート。

柿の実ひろば・石川君子理事長「理由がはっきりしないんです。支援センターが出来たのは、国が子どもの虐待とか子育て鬱とか、そういうのが出てきたということで支援センターの設立を奨励してきた。今は国もこども家庭庁を作って、子育てを出産から育児までということで頑張っているのに、沖縄県で(拠点を廃止するのは)浦添市だけなんです」

「子育て支援センター」は、保育施設に通っていない乳幼児をもつ保護者を対象に、子育ての孤立感や負担感の解消を図るために利用する場所として設置されているものです。

浦添市 子育て支援拠点センター廃止の波紋

浦添市内には現在、民間が運営する「リーブル・ドンフォン・カフェ」、「ほるとの家」、「柿の実ひろば」の3か所がありますが、市は今月末で委託を廃止するというのです。来月以降は市が直営する施設1か所だけになってしまいます。

利用者だけでなく、運営側も市の方針に憤りを感じていました。

柿の実ひろば・石川君子理事長「点から面?だってこのこども園がやるところとないところが出てくると思うんですよ。簡単に点から面っていうと、納得がいかないです。利用者も納得いかないと思います」

浦添市は支援センターの廃止理由について、次のように説明しています。

浦添市「現在、浦添市内には24カ所の認定こども園が整備され、すべての施設で地域の子育て支援を行っており、子育て支援を提供する施設は増加していることから、総合的に(委託の終了を)判断しました」

「認定子ども園」が増えたことで、「支援センター」に代わる新たな受け皿になるとして、「点から面へ」の支援を行う方針を打ち出しました。しかし・・・。

ほるとの家・平安常治理事長「子どもへの子育て支援が充実するのは本当に良いことだと思うんですけれど、だから拠点がなくなるっていうのは、ちょっとまた、点から面への浦添市が言うように、点から面へ、でなぜ点を取り除くのか、本来であれば重層的な形で子育て支援っていうのは行われていくべきなのかなと思います」

「認定こども園」と「子育て支援センター」では本来、果たす役割が異なるといいます。二つの違いは次の通りです。

浦添市 子育て支援拠点センター廃止の波紋

「支援センター」の役割は、子育て中の保護者が、利用者同士や職員との交流を通して、子育ての不安や悩みを相談できる場所であるのに対して、「認定こども園」の役割は、教育・保育を一体的に担う、幼稚園と保育所を併せ持つ施設となっています。

それぞれで行われる支援内容の違いは、開所日数や専従スタッフの有無などです。

ほるとの家・平安常治理事長「またこの認定こども園が増えたからといって、子育て支援拠点事業を減らしてくださいとは、国の方は言ってなく、前年度から合わせて6ヶ所の拠点事業をなくすっていうのはやはりちょっとこの国の方針にも逆行してるようにも感じます」

「子育て支援センター」を所管する厚生労働省は、現在、全国およそ8000箇所近くある拠点を1万カ所まで増やす計画を進めています。また、那覇市では新たに拠点を増やすことも決まっています。

利用者の声に耳を傾けない市の姿勢は「裏切り」だと指摘する声もあります。

浦添市 子育て支援拠点センター廃止の波紋

リーブル・ドンフォン・カフェ・大城初美理事長「やはりちょっと浦添市の勝手な方向性じゃないかなと思います。子育てをしてる方々が、どんな思いをしてるのか耳を傾けて欲しかった、とても裏切られたような感じですね」

こうした浦添市の対応に利用者らは、自分たちの声を届けようとアンケートを実施。そこには切実な思いがつづられていました。

利用者アンケート「支援センターの存在(ルーブル子ども園)を知って、通うようになってからママ友もできて、いろいろな情報をもらえたり、グチも吐きだせたり。この場所を残して頂き、1人でも多くのお母さんの孤独を救って頂きたいです」

利用者「なくなってあすからないよって言われたらどうしようかなみたいな。また1からどこかで探さなきゃいけない。せっかくここでお友達になったお母さんとか、また離れてしまうっていうのはちょっと寂しい」

利用者「子育てって、やっぱりお母さんも初めてなのでわからないことがたくさんあって、食事とか排せつのこととか、その中でやっぱ相談する人っていうのがなかなかいなくて孤立してしまうことがあるんですね。なのですごい心のよりどころになったというのはすごいあって。そういう施設をやっぱり何かなくすっていうことが私にとっては信じられないですね」

利用者の声に対して、浦添市はQABの取材に次のようにコメントしています。

浦添市「事業継続の要望があることは十分承知しております。本市の説明が十分ではなかったことや、認定こども園の子育て支援事業が広く知られていないことが原因であると真摯に受け止めております」

浦添市議会では廃止そのものを見直すべきとする決議が出されましたが、否決されてしまいました。

浦添市の松本市長は、認定こども園の拡充で子育て支援の充実を強調しています。

浦添市 子育て支援拠点センター廃止の波紋

浦添市・松本哲治市長「今後も市内全ての認定子ども園がそれぞれ特色ある支援が提供出来るように、担当者を対象とした連絡協議会や研修会を開催するなど、各施設と積極的に連携しながら取り組んでまいります」

ほるとの家・平安常治理事長「机上の話だけで決まったような印象を持っていますし、実際に廃止になる、廃止の通知を受ける前には、拠点事業の視察も認定こども園の視察もなされてない中で廃止が決定しているので、そのあたりもう少し市民の声、利用者の声っていうのを吸い上げて、また丁寧な政策の進め方っていうのをこれは切に願っております」

誰のため、なんのために子育て支援センターがなくなろうとしているのか。子育てに悩む親子の声に向き合うことが今、求められています。