ヨーロッパとアジアにまたがるトルコが大地震に見舞われてから2週間あまりが過ぎました。今も余震が起きていて気の抜けない状況が続いています。日に日に甚大な被害の全容が明らかになり、犠牲者も増えています。
沖縄で暮らすトルコ出身の男性は〝故郷への憤り〟を強く抱いていました。そして地震の専門家は「今回の大地震を沖縄でも教訓にすべきだ」と警鐘を鳴らしています。
トルコ出身 カン・アフメットさん「僕もびっくりしたあそこまで建物があると思わなかった」
琉球大学・中村衛教授「沖縄でも活断層で(トルコのような)大きい地震が起こる可能性がある」
今月6日にトルコとシリアの国境付近を大きな地震が襲いました。
地質調査や自然現象の解析を担うアメリカの研究機関のまとめでは、日本時間の午前10時すぎにマグニチュード7.8の地震が起きた後、その9時間後に7.5の余震が発生していて2度に渡って強い揺れに見舞われました。
日本の気象庁が示す震度に換算すると最大で震度7に相当します。国内ではこれまでに5万人以上が死亡したと伝えられました。
カン・アフメットさん「日本の素晴らしさは(震災後に)ちゃんと次考えて考えてレベルアップして、建物にしても何にしてもやってくれる。うちの国(トルコ)は逆何もしない」
瀬長島で5つの飲食店などを経営するカン・アフメットさんです。震源から800キロほど離れたトルコ北東部・リゼの出身で、16年前から沖縄で暮らしています。
親戚や知り合いが被災することはありませんでしたが、日本で長く暮らすからこそ生まれた〝母国への憤り〟を抱えていました。
カンアフメットさん「これで勉強になって経験になって(政府が)良いようになればいいけど、1999年の(大地震の)経験があるから、それから今までを見たらもっと酷くなっているから信用もない」
カンさんが口にする過去の経験とは、1999年8月にトルコ北西部・イズミットで起きた大地震のことです。マグニチュード7.6の地震で、1万7千人あまりが死亡するなど甚大な被害となりました。
トルコ政府はのちに建物の耐震基準を強化しましたが、過去の教訓を生かして今回の地震に耐えられた建物はごく一部だったといいます。
カンアフメットさん「ちゃんとしている建物を(建てているのは)建築関係の専門の会社。同じ場所でこっちは崩れて隣はしっかりしているのはちゃんとやるところはやっている」
幼い子どもを含む多くの人々が犠牲になった故郷での地震。倒壊した建物を見るたびに政府への怒りがこみ上げ、国のあり方を問い続けています。
カンアフメットさん「人間って何でこんなバカみたいな死に方になるんですかね。死ぬの怖くないんだけどこの死に方はまずいんですよ。今の政府も勉強するべきなのに」
琉球大学・中村衛教授「(Q.日本と同じようにトルコも地震大国?)非常に地震が多いところ」
今回の地震はトルコとシリアの国境付近にある「東アナトリア断層」がずれ動いたことで発生したとみられていて、これまでも繰り返し大きな地震が起きています。
しかし、今回の震源地のエリアでは1513年を最後に500年以上大地震の記録がない〝空白域〟でした。
琉球大学・中村衛教授「ただ、元々地震活動が活発な地域でプレート境界だから大きい地震が頻繁に起こる地域ではあった。たまたま人間の感覚で(大地震が)なかったというだけ」
海外の調査会社が公開した各国の地震リスクを示した世界地図です。色が濃くなるほどリスクが高く、沖縄はトルコと同じ上から3番目のオレンジに色分けされています。
政府の地震調査委員会は去年3月、与那国島周辺で今後30年以内にマグニチュード7から7.5程度の大地震が起こる確率が90%以上、南西諸島および与那国島周辺でマグニチュード8クラスの巨大地震が発生する恐れがあると発表しました。
つまり、沖縄でもトルコと同じ規模の地震が起きる可能性があるというわけです。
南西諸島周辺の地震について研究する琉球大学の中村衛教授は、沖縄はこの100年大きな地震が少なかったことから、トルコの被災地と同じように「大地震が起きにくい地域」とされてきたと考えています。
琉球大学・中村衛教授「沖縄の場合にはプレート境界海溝のひずみなどで大きい地震が起こる可能性がある。もうひとつは内部の活断層で大きい地震が起こる可能性がある」
地震の発生状況をもとに都道府県ごとに定められた〝地震地域係数〟という数値があります。建物を設計する時の耐震指標を算出する時に使われ、「起きやすさ起きにくさ」に応じて地震の影響力を低減できる基準です。
地震が多い地域は1.0なのに対し、沖縄は0.7と全国で最も低く設定されています。沖縄で大きな地震が起きた時、被害が他の地域よりも大きくなる可能性があるのです。
琉球大学・中村衛教授「基準を作ったのはかなり昔で、その頃は地震の研究が進んでいなくて、地震の記録を基に作ると中央は地震の記録が多いので基準が高くなって、日本の端の方は記録が少ないので基準が下がった。沖縄は本来の危険性に対して基準がかなり低く作られている」
建物の耐震診断や非常食の準備など、沖縄でも防災意識を高めることが求められています。