国民の意見が割れる中で行われた国主催の式典。今後、どのように評価されるのでしょうか?7月8日、安倍晋三(あべ・しんぞう)元総理が参院選挙で遊説していた奈良市で男に銃撃され死亡した事件から2カ月あまり。きょう東京では戦後、吉田茂(よしだ・しげる)元総理以来となる国葬が執り行われました。
日本武道館で執り行われた国葬には、海外からの要人などおよそ4300人が参列しました。
弔辞 岸田総理「日本の各界・各層から世界中の国と地域からあなたを惜しむ方々が、参列してくださいました」「安倍さん、安倍総理、お疲れさまでした。」
県内ではこの国葬に対して様々な対応がみられました。アメリカ軍施設では、安倍元総理に弔意を示す半旗を掲げる様子が確認できたほか、石垣市や竹富町などでも半旗が掲げられました。
一方、県は「弔辞や半旗掲揚ですでに弔意は示した」として県庁などできょう半旗の掲揚は行われませんでした。
Q国葬の実施の受け止めをお願いします 玉城知事「これまでもお話ししている通り、国民の中には様々なお考えがあり、弔意を表したいというのはそれぞれの立場お考えがあると思います」
県民ひろばの抗議集会「国民の民意は国葬反対!」「沖縄の民意も国葬反対!」
那覇市の県民広場では国葬に反対する市民らが集まり、抗議の声をあげました。
参加者女性(74)「沖縄が住民投票したり、県知事も新基地建設反対だって言ってるのに、どういう風に声を上げても政権のやりたい放題」「安倍さんのための国葬ってありえないと思いますよね。ちょっとはしたないけど、”ふざけるな”って感じです」
参加者男性(80)「こんな今まで沖縄の声を無視して、沖縄を犠牲にして」
きょうの辺野古。記者「新基地建設のため土砂を運ぶトラックが列を作っています。」
国葬が開始する時間になっても、普天間基地の移設先とされている名護市辺野古の新基地建設現場では、工事が止まることなく続いていました。
女性「国葬っていうのはもう…沖縄県民全体って言ったら語弊があるかもしれませんけれど少なくとも、海と平和を守る人たちにとってはとんでもない話だと思います。」
男性「私たちの暮らしを削り取ってあんな無駄遣いをする」
きょうの国葬について、県民からは様々な声が聞かれました。
50代男性「賛成とは言い難いんですけどね」「議会を通さないというのがまずひとつ問題があるのと。ただ単純に安倍さんが、理不尽な凶弾に倒れたということが、安倍さんもね、志半ばだったと思うので、いろいろ悔しい思いをされていると思うんで、それについてはご冥福を祈りたいと思いますけど」
80代女性「反対。必要ない」「なぜだろう。まだまだ納得できません」「沖縄のことをもっと考えてくれると思っていたけど、期待外れ」
20代女性「けっこう色んな問題がある状態で開催って感じになったので、もう少し先から準備したらよかったんじゃないかなと思いますね」「そこは国民が全員納得した感じでやるのが、一番理想だったんじゃないかなと思います」
ご覧いただいたように複雑な感情が入り混じった中で式典は行われました。それを数字で表しているのがANNが実施した国葬に関する世論調査の結果です。 調査は、ご覧の方法で行われました。
ANN世論調査【調査日】 2022年9月17・18日(土・日曜日)【調査方法】 電話調査( RDD 方式)【対象】 全国 18 歳以上の男女 1983 人【有効回答率】 51.1%
政府は安倍元総理の葬儀を国が費用を全額負担する国葬として行います。あなたは「この国葬に賛成ですか?反対ですか?」という問いに対して・賛成が30%・反対が54% となっています。
調査でも国民の半数以上が反対意見を示していましたが、強行的な姿勢を見せる形できょうの式典が行われたわけです。このような状況についてそれは安倍政権下の沖縄への姿勢にも現れていました。
2012年の衆院選で自民党が政権を奪取してスタートした2回目の安倍政権。2013年には沖縄が日本から切り離されたサンフランシスコ講和条約の発効日4月28日に「主権回復の日」を実施します。そして辺野古の新基地建設については、県知事選挙や県民投票で建設に反対する県民の意見を示したにも関わらず、2018年12月に埋め立て工事を強行します。
こうして振り返ってみても沖縄と目を合わせようとしなかった印象もある中で今回の国葬を強行した国の姿勢について専門家はどのように見ているのでしょうか?
沖縄国際大学前泊博盛教授「民意がこれだけ反対と言っているのにそのことに対して聞く耳持つ内閣のはずが、聞く耳をもう忘れてしまったのかという民意を無視するような政治が行われていることに対する危機感みたいなものをすごく強く感じますね」
「沖縄からすると余計に辺野古の問題を含め普天間を5年以内に閉鎖と言いながら守られていないアセスを受け入れさせられてしまった」「沖縄の県政に対する非常に強権的な政治を展開してきた政治家という印象が沖縄の中には多いような気がしますね」
「国民をあげて送り出すということに加担をしてしまうと沖縄はこれまでのことを評価していたということになりかねない」
「政治家という個人が亡くなられたことに対しては哀悼の意を表するということでいいと思います」「ただ同じような政治を継承するというメッセージにもなるかのような国葬については疑問を感じざるを得ないというところでしょうね」
複雑な県民感情について話してくださいましたが、さらにこの国葬は辺野古の問題にも通ずると厳しく指摘しています。
沖縄国際大学前泊博盛教授「最初3600億といった工事費がその後修正されて9300億まで跳ね上がる3倍近いお金になるのにその工事の継続が当たり前のように行われる。軟弱地盤がその後明らかになる、それも国は知っていたけど黙っていた。行政のあり方として工事の進め方として予算の血税の使われ方として果たしてこんな形でいいのかといったものが、国葬についても同じような問題をはらんでいるこの国の体質的なものとして法治国家ではなくて問題を放置するような放置国家になっている」
多くの国民が反対している中で国が強行した国葬。民意とは一体何なのか?自分たちの「意」に反しない意見を時には強行に、時には多数の意見だとしてふう殺する状況が続いています。
同じように沖縄が出した民意と政府が行う民意にはどのような違いがあるのか?改めて向き合って考える時期に来ています。