先月、国の地震調査委員会で沖縄における最新の地震予測が発表されました。この内容を受けて、地質学の専門家から国が強行する辺野古新基地建設に待ったがかかっています。
新潟大学 立石雅昭名誉教授「今回の地震調査委員会の発表を受けて、改めて(辺野古新基地の)耐震設計について、見直すべきだと考えたわけです。自分たちはこれまで様々な場で経験をしてきた知見に照らしてみて、今回のこの沖縄防衛局の設計変更は完成しないような、そういう中身だと言わざるをえないと思っています」
地質学の専門家であり、辺野古調査団の代表を務める新潟大学の立石雅昭名誉教授は、新基地建設計画の耐震設計を全面的に見直すよう訴えています。
国内の主要な空港は大規模な地震を想定した「レベル2」で設計されていますが、「辺野古」はアメリカ軍の軍事基地であるにもかかわらず「レベル1」という中規模程度の地震しか想定されていないのです。M8クラスの巨大な地震が発生した場合、基地が崩壊する可能性があるため、立石教授は、国が進める計画のずさんさと無謀さを批判しています。
新潟大学 立石雅昭名誉教授「実際に起こりうる地震動っていうのは(設計変更で想定する)数倍、10倍という地震動が襲いうると。この地震動によって崩壊してしまう可能性が高いということなわけです。当然ながら建物はもちろん空港の滑走路自身も壊れてしまう。これは軟弱地盤の問題もありますので(辺野古)に造られている施設は機能を喪失してしまう」
見過ごすことのできない、最新の研究結果が公表されました。国の地震調査委員会は南西諸島及び与那国島と先島諸島の周辺で巨大地震が起きる可能性があると評価したのです。
また、今後30年以内にマグニチュード7から7.5の地震が起きる確率は沖縄本島を含む南西諸島北西沖で60%程度と、決して低いとはいえない数値が示されています。
国が示した地震予測を国自ら無視をして都合よく計画を進めることはあり得ないというのが立石教授の見解です。そのうえ、「辺野古地区は空港を建設するのに適さない」とも考えています。
新潟大学 立石雅昭名誉教授「やはり地質、地盤の問題から見れば(辺野古)は全然そういう滑走路を持つような空港を建設するのには適していない場所」
「辺野古」をめぐって県と国の対立は溝が深まる一方です。大浦湾側の埋め立て予定海域に広がる軟弱地盤の存在が見つかったことで、2年前に、防衛局は軟弱地盤の改良工事を盛り込んだ設計変更を沖縄県に提出しました。しかし、去年11月玉城知事は調査不足や安全性の観点から設計変更を「不承認」としています。その翌月に、すぐさま防衛局は国交大臣に不服を申し立てる対抗措置をとりました。
斉藤国交大臣「沖縄県の判断は違法かつ不当であると判断し、不承認処分を取り消すとの裁決を行いました。また承認するよう勧告を行うことといたしました」
そして先週の金曜日、国交大臣は県の処分を違法と判断して、不承認を取り消しました。さらに、今月20日までに設計変更を承認するよう県に求めています。こうした国の強行姿勢に、立石教授は「科学的な根拠がないもの」だと厳しく批判します。
新潟大学 立石雅昭名誉教授「今、防衛局が出している計画、そして、国土交通省が採決したこの中身は、科学的には全然納得できない中身なわけです。沖縄防衛局、すなわち防衛省と国土交通省が一体になって、この辺野古への移設をなんとしても進めたいと思っていると思うんですけども、この設計変更の中身を科学的技術的に検討した結果、これは本当に大きな過誤を抱えたまま(工事を)強行していると言わざるを得ない。しかも、それを膨大な税金を使ってやろうとしているところに大きな問題があると私は思うんです」
辺野古新基地建設は、完成までに最低でも12年以上の工期が見込まれ、9300億円以上もかかる巨額な建設費用は全て、国民の税金でまかなわれることになります。
国の地震調査委員会による巨大地震の予測や、地質学の専門家が鳴らす警鐘によって、政府が繰り返し唱えている「辺野古が唯一の解決策」という根拠が今、大きく揺らいでいると言わざるを得ない状況です。