きょうは5歳から11歳の子どものワクチン接種について考えます。
濱元記者「第6波の完全な収束が不透明ななか、集団生活を送っている学校や保育園で多くの時間を過ごす子どもたちを守るための『頼みの綱』とも言われているのが『小児のワクチン接種』です」
先週くらいから徐々に始まった印象がありますよね。
濱元記者「県内で最初に久米島で始まり、那覇、名護などあわせて6つの市町村でスタートしています。他の自治体でも準備が整い次第、本格化していく見通しです。ただ、全国的にも始まったばかりで情報が十分にあるとは言えず、頭を抱えている親は少なくありません。我が子への接種をどう判断すべきか、小児科医で感染症や予防接種に詳しい長崎大学病院の森内浩幸教授に聞きました」
長崎大学病院・森内浩幸教授「今は例え頑張ってワクチンを打ってくれたからといって、前と同じみたいな学校生活に戻していいよって、言えない。もし自分に5歳から11歳になる子ども、孫がいた場合、健康であったとしたら急いでは打たないです」
長崎大学の森内教授は、自分の子どもに接種する「メリット」と「デメリット」はどちらが上回っているのか、保護者に難しい選択を迫ることになるため、急いで決めないことも1つの手段だと言います。
県内に5歳から11歳までの子どもは12万人近くいて、その数だけ親の悩みもあって、接種に対する考え方も千差万別です。
子どもの接種をした保護者「社会生活が不安になっているところがありまして。早めに打った方がいいかなと思ってうちに来ました」「かかった後の後遺症とか、発熱とかの方が怖いなって思って、きょうは(接種に)来ました」
保護者「ちょっとまだ子どもに打つのは怖いってところがあって、私自身はまだ考え中。始まったばっかりっていうところもあるので、もう少し様子を見てからにしようかとは思っています」「安全性とかがちゃんと確保されているのであればちょっと考えようかなとは思っていますけど。すぐ打とうって段階ではないです」
保護者「いろんな結果も出ていないと思うので、まだ接種は不安かなと思います」
森内教授「ワクチンを強く推奨するのは間違いだし、ワクチンなんか絶対反対だということで、逆にそういうメリットがあるかもしれない子どもたちの接種がしにくい雰囲気しにくい環境になってしまうのも、これもやっぱり大きな間違いだということになると思います」
不安の声にも理解を示す森内教授は「賛成・反対」どちらの意見も尊重されるべきだと話します。
7歳と11歳、それに14歳の3人の子どもを育てる清水さんは、小児ワクチンを打たないと決断しました。
清水さん「健康な人に広く進めていくものなので、副反応は本来あってはいけないものじゃないかなと思うからです」
接種後の副反応が後遺症として残るかもしれないという不安を拭い切れなかったことが大きな理由です。ただ「打つ・打たない」を判断しづらい今の風潮に疑問を感じています。
清水さん「打たないことを理由に、または打つことを理由に、意見の対立みたいなものはとても怖いというよりは残念だなって思っている。コミュニケーションをとることで解消していくことってたくさんあるのかなと思っている」
森内教授「今ちょっと非常に微妙なバランスをとらないといけないような、そういうワクチンだと思いますので、ぜひ、みなさん、そういう寛大な心で対応していただきたいなと思います」
判断するうえで欠かせない「ワクチンの効果」とは、どういったことがあげられるのでしょうか?
森内教授「新型コロナウイルスへの感染症によって、やっぱりある一定数重症化することはあり得るわけです。その可能性の高い基礎疾患を持っている人たちにとっては、メリットは非常に大きいということは言えると思います」
最大のメリットは「感染した場合のリスク軽減」です。ワクチンを打つことで重症化や後遺症を防ぐ効果が期待できるため、基礎疾患がある子どもは積極的な接種が望ましいといいます。
重症化リスクが高い病気や障害として「先天性の心臓病」や「ぜんそく」のほか「ダウン症」や「重度の発達障害」などがあげられます。
ただ、感染を防ぐ効果は薄いため、健康な子どもにとってあまり有効打にはならないとも指摘します。
森内教授「今のワクチンは感染予防効果はあまり期待できませんので、子どもたちにどんどん打ったからといって、流行が広がっていることを一気に抑え込むことができるかと言われると、私は疑問だと思います」
気になる副反応について…。後遺症として残る可能性があるのでしょうか?
森内教授「ワクチンによって何かが起こるかもっていうのは、単に憶測があるだけであって、何一つエビデンスとしては出ていない」
小児用のワクチンは大人用と比べて、接種量が3分の1になっていることから、副反応が出る確率は少なく、打った場所の腫れや痛み、全身の倦怠感、発熱といった副反応が出たとしても、後遺症として残ることは考えにくいといいます。
森内教授「お子さんの持っているいろんな持病、その程度、それに応じてメリットの高さっていうのが決まるし、デメリットに関しても、どのくらいその方がそういったいたみとか熱とかに弱い子かなど、気になるからということであれば、やっぱり、お一人お一人でそこを決めていくしかないというところがあると思います」
小児ワクチンに関する様々な情報がインターネット上に氾濫しています。森内教授はかかりつけ医と相談を重ねたり、国が発信する情報をよく吟味したりして、接種するかどうかを考えてほしいと呼びかけています。
メリットとデメリットを比べながら、子ども一人ひとりにあった最良の答えを導き出す必要があります。
接種させる、させないも保護者が悩み抜いて決断したものなので、そのことへの差別は絶対にあってはならないと思います。子どものワクチン接種が始まった那覇市の現場はどんな様子でしたか?
濱元記者「特段、大きな問題もなく比較的スムーズに接種が進んでいたと思います。一方で注射におびえた子どもが泣き出すという場面もありました。森内教授は子どものワクチン接種について、大人が打つ時と比べ物にならないほどの労力を使う点を指摘していて、いかにスムーズに接種を進めていくかというのも重要なポイントになっているように感じました」
実際に接種しようと考えた人はどんなことを心がけるといいのでしょうか?
濱元記者「3つの注意点があります。1つ目は、接種券とともに『母子手帳を持参すること』です。別のワクチンを打っていた場合、2週間の間隔をあけていないと新型コロナの小児用ワクチンを打つことはできません。予防接種をいつ打ったのか、確認すうるためにも母子手帳が必要です。2つ目は『子どものこと細かく把握している保護者が付き添う』ことです。接種会場では、事前の問診で担当する医師から当日の体調やアレルギーの有無などが尋ねられます。その時に『代わりに来たので答えられない』ということになると、確認するだけでも時間がかかってしまうということでした」。「最後に『オモチャやタブレットを用意しておく』ということです。注射への恐怖心を紛らわせたり、接種後の経過観察の時間に暴れたりしないようにする時に役に立つということでした」
濱元記者「子どもの負担を減らすこと、そして、接種をする医療従事者の負担も増やさないようにすること。そのために、何ができるのか、考えながら備えておくことも大切です」