島の人々の暮らしを支えてきた木材、“島の木”をご存じでしょうか?ガジュマルやリュウキュウマツなど沖縄特有の木の事を指すんですが、数にするとなんと60種類以上もあり、一つ一つ特徴があるそうなんです。そんな「島の木」がわかりやすくまとめられた本が誕生しました。木の名前からその特徴まで木のことを知り尽くし魅力を伝え続けている職人のお話です。
戸眞伊さん「職人になってもう68年間。ずーっと島材と一緒に生きてきたっていうこと」
今年6月、石垣島で木製品を扱う工房「KATARIGI」から「島の木の絵本」と「島の木の図鑑」が出版されました。島の木の絵本は16種類の木にまつわるストーリーがまとめられ、島の木の図鑑には67種類もの木の解説や体験談が盛り込まれています。
西里さん「弊社の社長「東上里」の方が、後世に繋げていきたい、“島材”の良さをいろんな人に知ってもらいたい、使ってもらいたい。そういった想いを持っておりまして」「やっぱり図鑑と聞くと固いイメージを持たれるかと思うんですけど、図鑑の方は子どもたちにも読みやすい形になっておりまして、おじーおばーから話を聞いているような内容になっておりますので」
本書では「KATARIBITO」と呼ばれる、トマイさんが製作した67種類の木の皿とともに島の木にまつわるお話を紹介。このトマイさんこそ、図鑑の重要人物となっています。
西里さん「トマイさん無くして、このショップ「KATAGIRI」も無かったのかなと思います。それぐらい大きな存在で、もう神様のような存在ですね」
沢山の木材が並ぶ、昔ながらの木工所で作業をしているのは、トマイ木工所 代表の「戸眞伊 擴 (とまい ひろむ)」さん、82歳。普段は島の木から作られる お皿や伝統工芸品などを作成しており。島の木の名前から性質、全てを知り尽くした数少ない貴重な職人です。
戸眞伊さん「少しずつ記憶力が薄れていってね、似たような名前もあってね、毎日復習しないと忘れそうになる。島材には木の種類もいっぱいあるでしょ。木によって形も違うし、木目も違うでしょ、それで色も違うと。おのおのみんな特徴があるわけですね。そういったところが面白いなって」
遥か昔から島の人々の暮らしを見守り続けてきた島の木。八重山では“島材”の愛称で親しまれてきました。しかし現在では安くで購入できる輸入木材が流通したことで島材関係の工房も減っていったといいます。
戸眞伊さん「全部僕が山に行って木を探して、切って、引き出してきて製材して、乾燥させて、全工程自分でやるわけですよ。いまは需要がなくなったわけだから、こういう人が居なくなって、結局は誰もやっていないからね。だけど僕はこだわって島材は残さないといかんってこだわりがあってずっとやってる」「輸入材はねあんまり特徴がないなという感じ、ほとんどが同じ模様ですよ。違いがあまりないんでね。それでやっぱり島材がいいな~とこだわって」
しばらく取材を続けていると戸眞伊さん宛にあるモノが。庭の木を撤去したということで引き取ってほしいと大きな島の木が届きました。興奮を隠しきれない戸眞伊さん。思わぬ贈り物に創作意欲をかき立てられているようでした。
戸眞伊さん「これ白っぽいほう。リュウキュウマツの。肌がこっち(白)は荒いんですよ。ゴツいでしょ」「(赤は)細かいでしょ?それで真っすぐに生える。これは濃ゆい(赤)ほう。木目は白のほうが、おおらかな木目でしてテーブルなんかには白がいい。木目が綺麗。赤は木目が素直でまっすぐしてる。特徴がないあんまり。そのかわり、窓枠とか作るときは赤がいい。狂わないから」
戸眞伊さん「フクギにも濃いのと薄いのと2つあるからね。フクギの場合は葉っぱ。葉っぱで見分ける。(葉が)小さいのは濃ゆい方。大きい葉っぱもあるんですよ。これは白っぽい。このようにして見分ける。昔はこれ(モッコク)は木の王様。貴重な高級木よ。首里王朝時代はね、禁止木になっていたのよ。一般の人はこの木を使って建築することが禁止されていた。この木は雨にも強い虫にも強い。雨風でも腐らない」
「木のことを語りだすと止まらない」と有名なトマイさん。その知識を後世に繋いでいきたいと言います。
戸眞伊さん「若いのにもう少し関心を持たそうと思いながら、ちょこちょこ話はしているんですよ。うえざと木工さんが中心になって勉強会をするんですよ。これから彼らが頑張っていくんじゃないかなと思ってはいるんだけど。不安というのは感じていない。やる気満々でいるから頼もしいなと思っている」
本はまず参考の為に見るもんだから、この本を見て内容をある程度覚えて、そして現場に行って、その木を見てほしいと。それと木をみたら、その木の肌に触れてほしいなと、そうすれば木の良さが分かってくる。
木工職人の手によって姿を変えた島の木が毎日の暮らしを彩ってくれています。その良さに触ると島の木に対する想いが変わる気がします。