辺野古の新基地建設に伴うサンゴの移植問題で、国と県の攻防が続いていて国の強硬姿勢を批判する専門家もいます。海の埋め立てに使う土砂の投入が始まってから2年半以上が過ぎた今、現場では一体何が起きているのでしょうか。
町龍太郎記者「ここ辺野古の海に生きる希少なサンゴたちを巡っていま、サンゴを守ろうとする県と、基地建設を早く進めたい国とで真っ向から意見が対立しています」
国の強行姿勢が鮮明になっている「サンゴ移植」。埋め立て予定海域ではきょうも、サンゴの移植作業が続けられていました。
ここに来て目まぐるしく動き出した県と国の攻防。始まりは2年前に遡ります。防衛局が県に辺野古の埋め立て予定海域にあるJ・P・K・I地区の4箇所に生息する、およそ4万群体のサンゴの移植許可を申請しました。
翌年2月、県が判断を保留し続けていたため、許可を出すよう農林水産大臣が是正指示を出しました。そして、サンゴの移植をめぐる裁判い突入したのです。
しかし、県の主張は認められず今年7月、最高裁の判決で県の敗訴が確定しました。5人いる最高裁の裁判官のうち2人から、県の訴えに賛同する意見が出されたのがせめてもの救いでした。
2人の意見は、大浦湾側に広がる軟弱地盤を固める工事に必要な承認を、国が得られていないことを問題視していて、新基地建設が出来なくなくなれば、サンゴの移植自体が無意味なことになるというものでした。
裁判官「変更申請が不承認になった場合、サンゴの生息箇所のみの工事は無意味なものになる」
裁判官「水産資源の保護培養という水産資源保護法の目的に反することになる」
玉城知事「是正の指示が適法であると示された以上、サンゴ類の特別採捕許可申請について、許可処分することといたしました」
最高裁の判決を受けて、県はサンゴの移植を条件付きで許可します。
県が付けた条件とは、「サンゴの生残率を高めるために台風や夏の高水温期、また繁殖期を避けなさい」というものでした。
しかし、許可が出てから1日もたたないうちに、防衛局は条件を無視して移植作業にに着手したのです。
県の担当者「夏の時期さえ避けてくれればいいのに。理解できない」
東京経済大学・大久保奈弥准教授「サンゴを破壊するような行為を国が行っていくということが本当に信じられないですね。驚きしかない」
サンゴの専門家は、「あり得ない」と国の強行を批判しています。
東京経済大学・大久保奈弥准教授「いや、もう本当ありえないっていう、判断ですよね。移植のストレスに加えて、出産後に移植されてそのストレスに加えて、さらに高水温でストレスを受けてっていうことで、死亡率がものすごく高くなるんです。だから、この時期に移植するなんていうことは、サンゴの研究者だったらまずオッケーって、言わないですね」
気象庁の観測したデータでは、沖縄本島東の海面水温は5月から上がりはじめ、真夏の8月に30度近くになり、その後2月に向けてゆっくりと22度付近まで下がっていくことが分かります。
東京経済大学・大久保奈弥准教授「ある程度秋の時期とか冬の時期の涼しくて、そんなにストレスを感じない時期であれば、生息環境が変わってもきれいな水のところであれば(移植しても)生き残ったりするんですけれども」
移植をめぐる対立は激化していきます。県は作業を止めるよう行政指導を行いました。しかし、防衛局が従わないため、許可が撤回されのです。そこで、防衛局は農林水産大臣に撤回の無効化を申し立てました。
岸防衛大臣「本審査請求および執行停止の申し立てを行いました。今回の(県による)取消処分は取り消されるべきであると、判断したものであります」
県の条件を破ったサンゴ移植の強行を、正当化させようとしているのです。
最終的な判断は農林水産大臣が下すことになっていて、県も撤回の正当性を主張する意見書を提出しています。
しかし、県は苦しい状況に追いやられています。最終決定が出るまでの間、移植を続けてもいいと、農林水産大臣が防衛局を後押しする判断をしているのです。
玉城知事は「職責を果たしていない」と厳しく批判しました。
玉城知事「水産資源の保護培養を推進すべき立場にある農林水産大臣の対応として、甚だ疑問が残るものと言わざるを得ません」
岸防衛大臣「防衛省としては、引き続き普天間飛行場の1日も早い全面返還を実現すべく、辺野古施設に向けて工事を着実に進めてまいりたいと考えております」
東京経済大学・大久保奈弥准教授「(移植で)サンゴ礁の生態系を復元するなんてことはもう不可能で、本当に小さな水中庭園しか作れないんですよ。だから、そのサンゴの移植っていうものに対する幻想がものすごくありすぎてて、その幻想でこういった結末を迎えているのかなっていうふうにも思えました」
沖縄防衛局は執行停止判断の翌日から、すぐに移植作業を再開。
サンゴの移植をめぐって溝が深まる県と国。防衛局の言い分が通れば、今後、夏場や台風シーズンであっても、国はサンゴの移植を行えるという免罪符を得たことになります。
「水産資源の保護」よりも、「辺野古新基地を早く進めたい」という国の本音がはっきりと見えてくるのではないでしょうか。