※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

「252人」これは、県内にいる視覚障害者で、実際に働いている人の数です。

働くことができる年齢に達した視覚障害者は県内に4000人程いて、実際に働いている人は全体の6%程度に留まっています。そんななか、視覚障害者の雇用を少しでも広げようと奮闘する2人がいます。

「こんにちは。訪問マッサージ・あいです。お世話になります。体験マッサージお邪魔させていただきました」

新しい働き方で目指す 視覚障害者の雇用拡大

今年2月、那覇市の住宅を訪れたのは、訪問マッサージを経営する会社の代表・小島剛さんと弱視として障害者の等級は最も重い1級に次ぐ2級と診断された視覚障害者の岩間竿水さんです。2人は去年12月に「訪問マッサージあい」を立ち上げました。

岩間竿水さん「腰はどっちがつらいとかありますか?痛みとかあったら遠慮なく言ってください」

この日は体験マッサージとして、日常生活でつまずいて転倒することが多くなるなど、歩く力が弱まっている90代の女性のもとを訪れ、腰や足を中心に30分施術しました。

新しい働き方で目指す 視覚障害者の雇用拡大

訪問マッサージを受けられるのは寝たきりや手足の筋肉にマヒなどがあり、外出が困難な人が対象で、事前の問い合わせが必要です。その後、身体の状態や施術する部位、マッサージを週に何度行うかなどを決めます。そうすることで、定期的にマッサージを受けられるようになります。

そこで施術を行う人が岩間さんのように「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を持つ視覚障害者の人たちになるのです。

利用者「全体がよくなっているみたいな。軽くなっている」

岩間さん「楽しいですね。地元のおじいおばあと絡みが最近少ないので、安心していただけて何より。なんだかんだ言って皆さん一緒の時はやるんですけど、来ないと結局めんどくさくてやらないみたいな」

利用者「がんじゅう体操とかいろんなのあるけど、やってない」

なぜ2人が会社を立ち上げたのか。そこには「資格を持っていて働く意欲があっても、働く先が見つかりにくい視覚障害者の雇用を広げていきたい」という思いがありました。

新しい働き方で目指す 視覚障害者の雇用拡大

訪問マッサージあい・小島剛代表「国家資格を持ってマッサージの専門だが、できないところ、運転して訪問することもできませんし、保険の請求も事務仕事になるのでできない」

盲学校を卒業し、資格を取得しても目の見える人なら1人でできる仕事も、視覚障害者は誰かのサポートを必要とすることが多くあります。目が見えないと訪問マッサージはとても困難で、マッサージ師として働き方が限られてしまいます。

「訪問マッサージあい」では現場までの移動をサポートするなど、視覚障害者だけではできないことを二人三脚で乗り越えていこうというのです。

小島代表「彼らのできるところをぜひ全力で彼らにやっていただいて、できないところは私たちがフォローさせていただくという形。訪問マッサージの事業が視覚障害者の人がメインで働く会社であっても、事業として成り立つんだというところをぜひ成功させたいなと思っています」

岩間さん「危なっかしいところとか全部、一緒についてくれる方がフォローしてくれるので、そういう心配は全くなく、単純にマッサージとリハビリ訓練とかに専念して、最後は笑顔になっていけると思う。楽しい輪が広がるというか、みんなハッピーになれるんじゃないかなというのはある」

「訪問マッサージあい」にはきょう1人の視覚障害者のマッサージ師が加わり、マッサージ師2人体制で新年度を迎えたといいます。

視覚障害者の雇用を広げたい。そんな思いから地道に一歩ずつ始まった取り組みに少しずつ人の輪が広がっています。

新しい働き方で目指す 視覚障害者の雇用拡大

視覚障害者が1人で車に乗って訪問マッサージに行くということはどうしても難しいので、サポートを受けながら働けるというのはとてもいいことですね。視覚障害者に限らず、障害がある人の雇用の促進というのは忘れてはいけないことですよね。

仲宗根記者は取材をする中でこうした課題への解決の糸口を感じることはありましたか?

仲宗根記者「障害がある人たちが安心して働けるようになっていくには、雇う側の企業や事業者が障害への理解を深め、サポートしていく体制をどうやって構築していくのかというのが非常に大切だと思います。障害者の雇用政策をすすめる県の担当者は、情報共有がカギになると話します」

県商工労働部雇用政策課・小波津利佳さん「(就業)支援の実績自体が非常に数がすくないというところがあります。なので支援に関する知識の教養だったり、共有という部分ができなかった、できていないというところが課題と思っております。実際に成功している好事例だったりというものを発信していくことで、障害者雇用が視覚障害者の方であっても広がっていくのと考えております」

仲宗根記者「県としては企業間で交流し、成功事例や失敗事例を踏まえつつ、改善したところなどを共有しあう、情報交換を行う場を設けていて、障害への理解を進め雇用拡大につなげていきたいとしています。一口に『障害』といっても目が見えない、耳が聞こえないなど様々あって、解決策も多岐に渡るため一つひとつ丁寧に対応していくことが求められています」