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東日本大震災からあすで10年になります。福島第一原子力発電所の事故で放射能漏れが発生し、その恐怖から避難するため、沖縄にやってきた家族がいました。

蘭(あららぎ)ぬまさん「私は東日本大震災の経験を経て見えない敵、放射能から逃げるべく沖縄に移住してまいりました。その際私たち家族を救ってくださったのは、沖縄県の手厚い支援、その感謝の気持ちを常に忘れず、沖縄県のために貢献してまいります。」

自分の将来が見えなくなっていた1人の少女が、沖縄で心癒され自分を取り戻し、「沖縄のためになる活動がしたい!」とひたむきに挑戦し続ける姿を追いました。

東日本大震災から10年 #2 福島から避難した女性が沖縄で見つけた「夢」

蘭ぬま(あららぎ・ぬま)さん。両親と兄姉の5人家族で、福島県郡山市(こおりやまし)で暮らしてました。東日本大震災の大きな揺れに襲われたのは、中学1年生のときでした。

蘭ぬまさん「在校生として卒業式が終わってから家に帰って、リビングでくつろいでたんですけど、いつもの地震かなって思ってたら、当時お母さんと一緒にリビングにいて、これはやばいんじゃないってなって、すぐにお家の玄関のところに出たんですけど、もうそこで、立っていられないぐらい揺れになって、壁にしがみつくのが精一杯で。」

娘と一緒にいた母・マリアさんもあまりにも大きな揺れに恐怖を感じました。

マリアさん「一緒にいまして立っていられない状態でした。お互い抱き合って玄関の方までたどり着くのはやっとって感じで泣いてました。」

自宅の倒壊は免れたものの、水は止まり火も使えなくなるなど不便な生活を強いられました。そこに追い打ちをかけたのが、福島第一原発の事故よる放射能でした。

蘭ぬまさん「震災の後、毎日学校の先生が防護服を着て放射能を測ったりとかそういうのも、間近で見て、毎日放射能がいつ数値が上がるかもわからないっていう恐怖はたぶんみんながつね日頃感じていたのかなって思います。」

東日本大震災から10年 #2 福島から避難した女性が沖縄で見つけた「夢」

見えない放射能の恐怖と中学生だった彼女の将来を考え、沖縄への避難を決めたのは、父・重信(しげのぶ)さんでした。

重信さん「一時的に避難する場所がいっぱいあったとしても、その近くに必ず原発があるんですよ。調べてみると何十キロ範囲内とか。そういう心配が一番。なかったというのも一つ。」

家族で沖縄へ行くことが決まっても彼女の中には大きな不安がありました。

蘭ぬまさん「友達とか部活とか慣れ始めた途端だったので、正直沖縄に行ってまた、新しい環境でまた、そういったこと築けて行けるなっていうこと、福島から来たっていうので、放射能がいいイメージがなかったので、ちょっと嫌な対応をされるのかなという不安もあった。」

東日本大震災から10年 #2 福島から避難した女性が沖縄で見つけた「夢」

しかし、彼女たちを待っていたのは沖縄の人の「やさしさ」でした。

蘭ぬまさん「意外とみんな一緒にユンタクしようという感じで、おしゃべりしてくれたり先生たちも、気を遣ってくれたり常に皆が優しく接してくれていたので、慣れるまでは遅くはなかったなって思います。」

また沖縄での生活で、震災と放射能の恐怖で失った一番大切なものを取り戻せたと話します。

蘭ぬまさん「私自身が沖縄に来て自然体で笑える日が増えたような気がして、それって沖縄の人たちだったり、環境だったりっていう大きなパワーのおかげで私は今幸せで暮らせているんだなって思って。」

そして蘭(あららぎ)さんは、ひとつの思いに至りました。「沖縄のためになる活動がしたい!」

蘭さんの心を癒してくれた沖縄に恩返しがしたいと、人前に立って自分の言葉を多くの人に発信でき、幼いころから憧れていた世界、芸能関連への道を模索するようになります。

蘭ぬまさん「沖縄だったり福島に対する貢献できるような活動を、今後できたらいいなって考えています。そして、震災のことについて風化させないために私は、どんどん伝えて私の言葉で伝えていけたらいいなって、思っています。」

東日本大震災から10年 #2 福島から避難した女性が沖縄で見つけた「夢」

目標を叶えるため数々のオーディションを受け続け、彼女が掴んだのは、アイドルというポジション。卓球・Tリーグ「琉球アスティーダ」のオフィシャルアイドルグループ「Ka☆Chun!(かちゅん)」のメンバーに選出されました。

蘭ぬまさん「アイドルになれたことで、また沖縄のために活動できるというきっかけになったことで、このチャンスをいただけたのは本当にありがたいなって思います。」

アイドルとしてデビューを果たした蘭さん、これまで自分を支えてくれた両親への感謝の思いがあふれます。

蘭ぬまさん「あの当時本当に自分が13歳だったので、今考えたら何も出来ていなかったなとって思って。自分の元気で頑張っている姿を見てもらいたい。その後は両親に直接は言うのは恥ずかしいから、両親が幸せで暮らせるようにできることはしていきたいと思います。」

東日本大震災から10年 #2 福島から避難した女性が沖縄で見つけた「夢」

そして迎えたデビュー初のライブステージ。県内で実力のあるアイドルグループが出演することもあり、多くのファンで盛り上がるなか、出番を待つ「Ka☆Chun!(かちゅん)」メンバーたち。いよいよ彼女たちの出番です。

結成から1ヵ月あまり、およそ50人の前で10分間のステージ。今できるパフォーマンスのすべてを出し切りました。

蘭ぬまさん「ここまでこれたというか、ここからが、私達のスタートだなっていうのを改めて。感じることが出来ました。」

東北と沖縄の架け橋になれるような存在を夢見て、蘭(あららぎ)さんの挑戦はこれからも続きます。

蘭ぬまさん「ここに立てたのも多くの方の支えがあって、立てているので常に多くの方に感謝しかないですし、福島で頑張ってる方たちにも私の元気を伝えて、感謝の気持ちも伝えて今後も頑張っていきたいと思います。」