コアな部分は変えないで、見せ方を工夫してお客さんに新しいものを見せます。沖縄の古典芸能といいますと琉球舞踊や組踊、古典音楽が挙がると思いますが、実際に触れる機会は少ないのではないでしょうか?今回、若手の女性琉球舞踊家らが多くの人に触れてもらいたいと新たな取り組みに挑戦し奮闘しています。
ジュリア・メカラーさん「琉球芸能・伝統芸能っていうのが、実は、恋をテーマにしたものが多い面白いって思ってほしいんです。ここを通して組踊も含めて琉球の伝統芸能に興味を持ってもらいたい」
福島千枝さん「昔も今も人の心は変わらないというか、普遍的な部分を持っているよねっていうお話をいろいろさせていただいたんですけど、その中でこの人が恋する気持ちとかは昔の人も今の人も変わらないんだなってい話を」
新たな挑戦をするため21日に南城市の「ガンガラーの谷」で開かれるイベントに向け、練習を重ねる女性たちの姿がありました。彼女たちは、琉球舞踊で「恋」を表現することに挑戦しています。
イベント「琉球乙女は恋をする」は、琉球舞踊の踊り手や古典音楽を演奏する人全て女性で構成され、「恋」をテーマに組踊や雑(ぞう)踊りなどを披露するものです。今回の仕掛け人ジュリア・メカラーさんは、日本のアニメなどを出版する会社でのweb広告やCMなどのプロデュース経験を活かしエンタメ業界に関わる仕事をしています。
実はジュリアさん、アメリカとうちなーのハイブリット。8歳の時から高校卒業まで沖縄で過ごしその間に琉球舞踊のとりこになります。2015年に沖縄タイムス社の芸能選考会で最高賞を受賞するなど腕前は折り紙付きです。
コロナでエンタメ業界が冷え込むなか、ジュリアさんはイベントを立ち上げることで沖縄芸能を世界に伝えたいという思いを強くしました。
ジュリア・メカラーさん「去年コロナになって、海外出張とかに1年間行けなくて、その間にいろいろ自分を見つめ直した時に、もともとは琉球芸能を世界にやりたいという気持ちで、エンタメ業界に足を踏み入れた。原点に立ち戻ることができたんです。琉球の伝統芸能に興味を持ってもらいたいで、英語でも司会を入れてオンラインでも配信するので、世界中の方々に見ていただけるように」
舞台の主役を務めるのは福島千枝(ふくしま・ちえ)さん。大阪出身で、県立芸術大学で琉球舞踊と組踊を学び、卒業後は、舞台公演を続けています。福島さんが今回のイベントで琉球舞踊に対するある意識を変えたいと意気込んでいます。
福島千枝さん「琉球舞踊とか組踊って結構敷居が高いというか、すごい格調高くて、それも素晴らしいんですけど、なんかもっと身近に気軽な気持ちで見ていただきたいなという気持ちがありまして」
ハードルが高いと思われがちな琉球舞踊のイメージを打ち破りたいというのです。そんな思いを強くしたのはコロナ禍で去年活動ができなかったときのつらい経験でした。
福島千枝さん「昨年の前半はほとんど活動をストップしていた状況だったので、すごく私は自分自身の存在意義というか、私たちは一生懸命、今まで活動してきたつもりだったんですけど、なんか、あんまり存在意義を感じられないような何か、すごいつらい時期ではあったですけれども」
県独自の緊急事態宣言の解除はされていませんが福島さんは、イベントができることの喜びを改めて実感しています。
福島千枝さん「いろんな舞台関係者の苦労や様々な模索が続いている中なんですけれども、こうして公演をできるということはとてもありがたいですし私自身とても幸せに感じています」
本番を1週間前に控えたこの日(14日)国立劇場で全体の流れを確認する通し稽古が行われました。イベントでメインとなる演目は、組踊「手水の縁(てみずのえん)」抜粋。「手水の縁」は、士族の息子・山戸(ヤマトゥ)が、花見の帰り道に水を飲もうと立ち寄った川で髪を洗いに来ていた美しい娘・玉津(タマツィ)に出会い、心惹かれることからはじまる恋物語です。
今回は、山戸(ヤマトゥ)が闇夜に紛れて玉津(タマツィ)に会いに行く場面である「忍びの場」を披露します。この演目を指導するのは、福島さんの学生時代の恩師・人間国宝の宮城能鳳(みやぎ・のうほう)さんです。
宮城能鳳さん「それから「さよ~」でつくところ少し早めにつくと玉津の思いが昂揚する感じがでる。一本調子でゆっくりゆっくりやるから女のみたいに見える。思い入れもしっかり、動きがはっきりしないからもう少ししっかりするようして」
厳しい指導の中にも、難しい演目に挑戦する彼女たちの取り組みについて、歓心を得ています。
宮城能鳳さん「大学でも組踊を専攻して、勉強しただけあって、卒業後もこういうふうに自主的に自分の舞台を作っていこうという、この心意気というのは素晴らしいことですよ」
新たな挑戦のお披露目まであと2日。彼女たちの奮闘は続きます。
ジュリア・メカラーさん「来た方に琉球舞踊ってこんな見せ方があるのだな、みたいな感じ取ってもらえる舞台にできたら一番。嬉しいです」
今回のイベントはガンガラーの谷で行われますが、本格的な琉球舞踊の公演は初めてで、踊りと自然との調和が見られるほかリーフレットの表紙の制作はQABでも以前、特集しました、注目の若手アーティストの町田隼人さんで会場づくりにも参加するということで、演目以外でも見せ方にも挑戦しています。イベントは21日に行われます。