新型コロナの影響で表現の場が限られる中、同じ空間にいなければ味わえない出演者の力あるセリフや、独特な空気感がある舞台。そんな舞台の魅力を発信するため、若い俳優たちが生配信に挑みました。
「何かを変えるために命をかけて、改めると書いて革命なんだ。理想ってのはな王が里(くに)を想い描くことなんだ。今のアンタラがやっていることはでたらめなんだよ。誰も明日をよくしよう。人に寄り添おうなんて思っちゃいない空っぽの大儀なんだよ。」
感情のこもったセリフに、迫力のある演技、素早い身のこなしと剣さばき。先週土曜日、那覇市で行われた舞台「懐景(かいけい)森羅万象」。15世紀に勝連城の按司となった阿麻和利の物語を現代風にアレンジしたものです。
しかしこの日、会場に観客の姿はなく、いるのはカメラや照明を操作する人など数人のみ。
出演者の1人として、制作チーフとしてこの舞台の指揮を執ってきた町田達彦(まちだたつひこ)さんは、ギリギリまで舞台をどのような形で行うか葛藤し、準備をしてきたと話します。
制作チーフ兼屋慶名アカ役・町田達彦さん「お客さんを入れるか入れないかの話も結構しましたし、配信という形で、お届けするということになって、自分たちのお芝居の熱量が伝わるようにどうしたらいいかっていうのは、すごく東京の準備の中で考えながらやってきたので。」
新型コロナの感染が拡大し続けていることで、一度は演じることを断念しましたが、それでも舞台をしたい、伝えたいと思いから生配信という試みに踏み切りました。
本番を前日に迎えた先週金曜日、会場では本番に向け身のこなしや照明、音響など微妙な調整が続けられていました。
前日のリハーサル前のテストで映像が配信されないというハプニングが起きました。無事復旧できるのか、原因究明に追われました。
阿麻和利役・仲井間稜さん「画面が3Dになるかなっていうくらい、勢いとばせていけたらいいかなと思っております。」
阿麻和利の妻、百度踏揚役・國玉咲笑さん「(みている人に)印象が何か残るようなそんな舞台にみんなで、演者もスタッフもみている方もみんなで一つの舞台を作れたらいいなと思います。」
いよいよ迎えた本番当日。みている人に感動を与えられるものを作りたい。そんな思いから多くの人がギリギリまで準備に追われます。
緊張感の漂うなか、舞台の幕が開けます。出演者は画面越しの観客に向け、一言一言大事に言葉をつむいでいきます。生配信もトラブルもなく、順調に進んでいきます。
阿麻和利役・仲井間稜さん「本来ならお客さんがいて、その日の空気っていうものを味わえるのが舞台っていう醍醐味なんですけど、それがいないのが不思議な感覚。」
阿麻和利の妻、百度踏揚役・國玉咲笑さん「(会場に)お客様はいないんですけど、同じ空間で一緒に同じ時間を過ごしているというのが、私たちの舞台を通して、感じられているのであれば私たちは幸せだなと思います。」
制作チーフ兼屋慶名アカ役・町田達彦さん「舞台と公演の配信がセットになるというのが、普通になってくれると、一番いいのは全国のお客さんが、可能性としたら海外のお客さんもそこでしかやらないものを見れるようになるというのは、すごく可能性があるなっていう風に思います。」
コロナ禍で挑戦したネット配信が、1人でも多くの人に関心を持ってもらえる、そんな舞台の可能性を広げてくれました。