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こちらをご覧ください。真っ黒に焦げた木片です。かけらにできている小さな穴、ここに釘が打ちつけられていたのかもしれませんね。1年前の首里城火災で、周辺地域に焼けた破片がたくさん飛び散りました。火の手がいかに激しかったのかを物語っています。真っ先に駆け付け、最前線で活動した消防士たちが見たもの、感じたこととは。

那覇市消防局 予防課 玉城良さん「出動中は龍潭の方から来たのですが、煙や炎は確認できなかったので、その時点では、まだ本当なのかなという感じで、出動した」

玉城良さん。火災当時、首里城にほど近い首里出張所に勤務していて、現場に最も早く到着した消防隊員の1人です。「まさか」という驚きとともに大きな衝撃が走った首里城火災。出火場所は正殿の北東部、午前2時34分に警報がなりました。警備員から連絡が届いたのは、午前2時41分。その7分後、玉城さんたち首里第1小隊が現場に到着しました。

那覇市消防局 予防課 玉城良さん「初めは首里城正殿の2階庇部分から炎が噴き出している状況でしたので、これは火の手が回っている状況だなというのは、確認できました。あとは長期戦になるだろうという覚悟の元、消火活動に移ったのを覚えています」

炎の勢いは凄まじく、南殿、北殿へと次々に延焼していきました。

那覇市消防局 予防課 玉城良さん「我々最初は正殿側で放水していたのですが、輻射熱があまりにも強すぎて、どんどん後退していって、あとは延焼防止に主眼を置いて消火活動をしていました。その時も南殿側の方は、輻射熱のせいで、建物壁面から煙が出てきたり、あとは瓦が1枚2枚と落ちてきている状況でした」

首里城火災 現場の消防士が見たもの

那覇市西消防署に勤務する金城琢也さん。当時は、災害現場での救助活動を任務とする高度救助隊の一員でした。城という特殊な構造上、上り坂や階段が多く、消防車が火災現場に近づくことができずに、消火が困難になったと金城さんは振り返ります。

那覇市西消防署 第1警備救急隊 金城琢也さん「水は消防車を何台も連結させて、道路上の消火栓から水を取って、初期の方は防火水槽といいまして、首里城で火災があった時のための水が40トン以上あったのですが、それも全て初期で使用してしまって」「水をかけてはいるのですが、どうしてもコンクリートブロックの作りに化粧板の板が乗っている形でしたので、なかなか有力な消火が行えずに、放水はしているのですが、どんどん燃え広がってしまうという」

高い城壁に阻まれ、隊員同士の連携もうまく取れず、防火服を貫く熱さに耐えながらの消火活動が続きました。

那覇市西消防署 第1警備救急隊 金城琢也さん「目の前の大きな炎、特に大きな炎でしたので、どうしてもそこばかり、そこの火勢が早く収まるのを見ながら放水したのですが、気づけば横に延焼していて、自分では気づいていないような、あとは悔しさ、絶対に負けたくないという気持ちから退避しないで、最前線で放水している隊員もいました」「逆に一歩後ろで安全を管理している隊長から、「下がれ、一歩下がれ」というふうに防火服を引かれるくらい、気づけば近くまで炎がきていたような感覚があります」

当時、消防指令として、現場で指揮を執っていた具志雅明さんは、異様な光景を目にしたと言います。

那覇市中央消防署 具志雅明さん「御庭内での消火活動中に、御庭内の地面ですね、かけた水が溢れていたのですが、それが水蒸気になって立ち上がります、まるで霧がはった様な形ですね、そういう状況を目の当たりにしました。私も初めてでした」

勢い増す炎、噴き出す黒い煙の渦。具志さんたち指揮隊は、これ以上の消火活動は危険と判断し、一時的に退避を指示しました。

那覇市中央消防署 具志雅明さん「我々消防隊員はもちろん炎の火点の前に注水するのはもちろんですが、一番大事なことはまだ失われてない財産を守ることということで、懸命に延焼防止にあたりました」

首里城火災 現場の消防士が見たもの

消防士「(午前)5時35分、首里城正殿前、炎上中」「正殿にあっては完全に燃え落ちた状態」

あの日、あの場所で闘っていたのは、消防隊員だけではありません。消防団員の渡久地政美さん。建設業に従事するかたわら、仕事が終わった後や、空いた時間を見つけては、消防団の活動に参加しています。

那覇市消防団 渡久地政実さん「現場に向かうときに空が赤い、首里城の方から炎と煙が上がっている、その時からはスイッチが入っているというよりかは、一刻も早く現場に向かわないといけないという使命感でいっぱいでした」

消防団の役割は、主に火災時における避難誘導などの後方支援。そのため、装備も簡易的です。しかし、この時ばかりは、人手も足りず、隊員が水分補給などで交代する合間にホースを持ち、炎の前に立ちました。

那覇市消防団 渡久地政実さん「体感温度的には、自分ははっきり何度という感覚はありませんが、とてもじゃないけど、燃えている箇所の40~50メートル以内には、もう近づけないくらいの熱さでした」

夜を徹して続いた火災との闘いは11時間近くに及び、123人の隊員が出動して、午後1時半にようやく火は消し止められました。北殿、南殿ともに全焼。正殿は至っては跡形もなく崩れ落ち、主要な建物7つが燃えました。あれから1年。火災を食い止めるために奔走した消防士たちは、今でも「悔しさ」を口にします。

那覇市中央消防署 具志雅明さん「最終的には首里城自体が骨組みだらけになっていて、その時に消防隊員、本当に悔しいという気持ちがでてきました」

那覇市西消防署 第1警備救急隊 金城琢也さん「那覇市消防の全ての力を集めて、近隣市町村の応援の力も借りて、あそこまで延焼拡大してしまったという無力感と悔しさで呆然としていたような記憶があります」「首里城の新しい消防目線の再建計画だったり、新たな警防計画というのに、出動した隊員として微力ながら寄与していきたい」

首里城火災 現場の消防士が見たもの

那覇市消防局 予防課 玉城良さん「我々チームとして何が足りなかったのか、もしかしたらもう少し火災を食い止めることができたんじゃないか。日々検討しながら、後世に伝えていくのが、我々の役目じゃないかと思っています」

首里城火災。もう2度とあの悲劇を繰り返さないため、消防士たちは、それぞれの課題や教訓を胸に前を向きます。