国が取り消した県の埋め立て承認撤回の効力の回復を求める裁判が11月26日始まり、玉城知事は法廷で「県民の民意を受け止めてほしい」と訴えました。
辺野古をめぐる県と国の裁判はこれで8件目で、国が埋め立て承認撤回を取り消したのは違法だとして、県は撤回の効力の回復を求めて国を相手に裁判を起こしました。
裁判前の集会で玉城知事は集まった支援者に「今回のこの訴訟でも、あるべき県民の将来に対して国が責任を持つこと、それを司法がどのように明らかにするかということに多くの県民が期待を寄せているということも含めて、しっかり私の意見を述べさせていただきたいと思います」と決意を語りました。
今回の裁判で、県は沖縄防衛局が一般私人を救済する「行政不服審査制度」を使って、撤回を取り消したのは違法だなどと主張していますが、一方で国は裁判の対象にはならないと反論し、県の訴えを却下するよう求めています。
26日の第1回口頭弁論で玉城知事は法廷に立ち「司法は行政をチェックするもの。過ちを正すことなく見て見ぬふりをすれば、政府は同じことを繰り返すかもしれない。県民の民意、未来への願いを受け止めてほしい」と訴えました。
次回裁判は2020年3月9日です。
ここからは石橋記者とお伝えします。辺野古を巡る8件目の裁判が始まりました。今回はどういう裁判なのでしょうか?
石橋記者「今回の裁判は国が取り消したことで無効化された埋め立て承認撤回の効力回復を県が求めています。撤回を取り消した国の裁決は違法で、県の撤回が正しいと訴えているものです。県としては絶対に譲れない裁判でもあります」
県と国、双方の具体的な主張はどうなっているのか?
石橋記者「辺野古の新基地建設を巡っては様々な問題があることがこれまでにわかっています。軟弱地盤や活断層の存在、サンゴの保全や高さ制限といった問題です。裁判ではこれらの問題が浮き彫りになってきたことから、撤回が正しいと県が訴えているわけです。特に、軟弱地盤の問題は地盤を改良するのに7万7千本もの砂杭を打ち込むもので、前代未聞の工事を必要としています。海底90mの深さに届く作業船が国内にはないという課題もあって、工事を行う国自体が『難工事』だと表現するほどです。こうしたことから辺野古が埋め立てに適した場所ではないうえ、災害の防止などに配慮しているとは言えなくなってきたことから、撤回が正しいとするのが県の主張です。県としては、これまでの法廷闘争で中身について審理はほとんどされませんでした。県側は、撤回の正当性を直接主張する今回こそ、裁判所が中身の審理に踏み込んでくれると見込んでいます」
対する国の主張は…
石橋記者「県が撤回の回復を求めるのは行政上の問題であり、県の撤回が有効だとか、国の裁決が正しいといったことを裁判所に判断を求めるものではないので、裁判の対象にはならないと訴えています。つまり、国としては県の主張を門前払いするよう求めているわけです。今のところ、県の撤回やそれを取り消した国の裁決についてほとんど触れられていません」
今後の展開、裁判の見通しは…?
石橋記者「今回の裁判は判決が出るまでに数カ月から1年ほど、場合によってはそれ以上の時間がかかるのではないかとみられています。裁判を終えた玉城知事は今回の裁判の意義を強調しました」
玉城知事「辺野古埋め立てを正当化する理由がすでに失われている現状において、政府が民意を無視して工事を強行することは民主主義を踏みにじり、地方自治を破壊するものであることを裁判所に訴えることができたのではないかと考えております。裁判所におかれましては、県民の民意と本気で向き合い、その思いを正面から受け止めていただくとともに、法の番人として、辺野古埋め立て工事を巡る一連の問題について実態的な審理を尽くし公正な判断をされるよう希望いたします」
石橋記者「県が『勝訴』すれば、撤回が有効となり、埋め立て工事を止めることができます」
敗訴だったら…?
石橋記者「前回の裁判、まだ係争中ではありますが、撤回を取り消した国の違法な関与を訴えた裁判の判決で裁判所の判断に対して声があがっていたように、いくら地元が反対しても、国がやりたいようにできてしまうということにお墨付きを与えてしまうことになりかねません。ただ、これまでの法廷闘争で県が勝訴したことはなく、今回も見通しが明るいとは言えず、苦しい状況に立たされています」