11年前にアメリカ兵が起こしたタクシー強盗。被害者の遺族が事件の賠償金で国が負担する分が全額支払わられるよう求めた裁判が10月24日、那覇地方裁判所で始まりました。
国を訴えたのは宜野湾市に住む宇良宗之さん、2008年にアメリカ兵2人に襲われたタクシー運転手、宇良宗一さんの長男です。宗之さんは日米地位協定に基づきアメリカ政府に代わって国が負担する補償金が全額支払われるよう求めています。
国が肩代わりする金額を決める裁判では支払いが滞っていた期間の利息、「遅延損害金」900万円を含む2600万円あまりの損害賠償額が確定していました。
ところが、国が利息の支払いを拒んだことから司法の判断を仰ぐことになりました。
宗之さん側は「補償金には利息分も含まれるべきだ」と主張していて国は請求を退けるよう求めています。
宇良宗一さん「前回の裁判の当事者に対する判決の通りにしっかりと受け止めてほしい。これはなかなか簡単にいかないのは現状としてある」
次回の裁判は2カ月後です。
記者解説
何も落ち度がないタクシー運転手がたまたま乗せたアメリカ兵に襲われたことでPTSDに苦しみ、事件から4年後に他界するというこんな理不尽なことはないですよね。
記者「はい、事件によって被害者とその家族は日常を奪われ、人生が大きく変わってしまいました。アメリカ兵が起こした事件の補償については日米地位協定でアメリカ兵に支払い能力がない場合にアメリカ政府が負担することになっています。しかし、アメリカが支払ったのはわずか146万円でした。アメリカ側が提示する額は非常に低額なことが多いため被害者を救済する制度があるんです。それが「SACO見舞金」という制度なんです。裁判で決まった損害賠償額とアメリカ政府が払った額との差額を日本政府が肩代わりするというものです」
この制度についてアメリカ軍による事件事故の裁判に詳しい弁護士は被害者に寄り添った仕組みになっていないと指摘しています。
新垣勉弁護士「国は義務はないけど一方的に支払うお金なんだ、被害者が合意した時に初めて支払うものなんだと、遅延損害金を国は払いたくない、被害者は遅延損害金をもらいたいということで合意ができていないから払わないだけで何も国には落ち度がなありませんよ、こういう考えかたなんです」
今回の事件では、被害額1700万円、支払いが滞っていた期間の利息900万円、あわせて2600万円あまりの損害賠償額が確定していました。
そうすると…アメリカ側が146万円を支払ったので、国の負担は2450万円ほどになるということですよね…???
記者「はい、ここで利息である「遅延損害金」をどう扱うかで被害者側と国の意見が食い違っているわけです。被害者側は利息分も含まれるべきだとして2千数百万円あまりの支払いを求めています。遅延損害金は法律で定められた支払いが滞っていることへのペナルティですから、今現在も1日1日と少しずつ増えていて、900万円から100万円ほど増えて、現在は1000万円を超えたとみられています」
「その利息分について国の支払いの対象外だと反論しています。利息は事件を起こしたアメリカ兵に請求するべきだという立場です」
アメリカ兵に支払い能力がないのを前提にしているのにそこに支払いを求めろというのは、無茶苦茶な感じがしますよね。
記者「その通りです。だからこそ、裁判所には被害者に寄り添った判決を期待したいところです。SACO見舞金という補償制度のなかで利息の支払いを求めた裁判は全国初とみられていて前例がないだけに、司法がどんな判断を示すのか注目が集まっています」