Qプラスリポートです。外国人観光客の増加などによって入れ墨がある人を見かける機会が多くなっているのではないでしょうか。
日本では、入浴施設などで入れ墨がある人の入場を断る所もあるんですが、実はかつて、沖縄には、大人になった女性たちが、その証として入れ墨を刻むという文化があったんです。途絶えてしまった沖縄の文化、「ハジチ」に迫ります。
おばあさんの写真1枚の写真に収められた、高齢の女性。日に焼けた女性の手にはいくつもの青い模様が施されています。かつて沖縄や奄美で女性の風習として根付いていた入れ墨文化、ハジチです。
展示会の広い画県立博物館・美術館では、沖縄の文化ハジチを紹介する企画展が開かれています。
山本芳美教授「(ハジチは)沖縄の女性たちが大人になる前に必ず入れなくてはいけないと考えれらていたものです」
長年ハジチについて研究してきた都留文科大学の山本芳美教授。沖縄で根付いていたハジチは既婚者の証であり、入れないとあの世で成仏できないなど様々な意味合いが込められていたと考えられています。しかし、なぜ今ハジチの企画展を開催したのでしょうか。
山本教授「今年実は規制があって120年の節目の年」「美しいものが醜いものへとなってしまったわけですね。それって非常に恐ろしいことで、私たちが普段暮らしている前提としている価値観が180度変わってしまったという経験をその世代の人たちがしたということだと思うんです。ですからそれをぜひ知ってもらいたいと思った」
展示の目玉はこちら。シリコン製の腕に、実際にハジチを入れて若い女性の手を再現しています。若い女性の手をイメージして再現したのには山本教授らのある思いがありました。
山本芳美教授「50代ぐらいの方にお話を聞くと「ひいあばあさんが入れていた」とか完全におばあさんの文化になっているのでこれが仮に若い女性たちに入っていたらどれほど魅力的だっただろうということを再現したくて」
ハジチが途絶えたのは1899年に禁止令が出されたのがきっかけでした。隠れてハジチを入れた多くの女性たちが逮捕されるという事態にまで至ったのです。
山本芳美教授「(禁止令後の)5年間の逮捕者数がもう非常の膨大な数に上るわけですね。女性の検挙者数としては非常に多くて延べ人数で5年間で692人の方が逮捕されています。こっそり刺青を入れてしまって逮捕されています」
禁止令が出されたことで、ハジチはいつしか隠さなければならないものになり文化として薄れてしまいました。そんなハジチの文化を記録しようと調査を行った女性がいました。
土曜日に行われた座談会。登壇したのは、知花孝子さんと島袋智子さん。80年代に読谷村で行われたハジチの大規模な調査に関わり村内にいる高齢の女性たちから話を聞きました。
島袋智子さん「完全系と言って完全にハジチをなさっているおばあさんに会ったときは感動なんです。禁止令が出て隠れてやったと言われても見事にハジチをされていて」
知花孝子さん「家族の方に断られることがありましたね。結局家族の方が会わせたくないんですね。それでもということで懇願して話を伺うと、こちらどころか家族もびっくりするぐらいすらすらと流ちょうに話してくださって」
自分の祖母にもハジチが入っていたという知花さん。当時の女性たちにとってハジチを入れることは女性としての誇り、喜びだったのではないかと話します。
知花さんクリップ「ある意味お産の喜びと似てるのかなと思いました。その時は痛いけど子どもが生まれたあとの喜びは何にも例えられない。それを通過しないと一人前の女性じゃないという」
初めて開催されたハジチの企画展。山本教授はこの企画展を通してハジチに対する理解を深めてもらえたらと話します。
山本芳美教授「今、日本では刺青についてどう扱っていいかということが揺れている時代なわけですね。でも日本の中の沖縄に刺青の文化と歴史が確かに息づいていたということを皆様に知っていただきたい」
あこがれだったものから醜いものへと変わり文化として途絶えたハジチ。今、途絶えてしまったその文化に触れることができます。