”表現の自由”が狙われているとはどういうことなのか。最近、立て続けに起きている印象もある様々な表現をめぐる問題を取り上げ表現する自由、表現しなければならないこととそれを阻む考え方について考えてみます。
表現をめぐる問題で印象的だったのが市が市民を訴えるという異例の裁判が持ち上がった宮古島市でした。
下地敏彦市長は、市を訴えた市民が裁判で敗訴した後も主張を変えなかったことで「市の名誉が棄損された」とし、市民6人を相手に損害賠償請求を求める議案を市議会に提案したのです。
この議案に対し市の内外から権力を持った側が言論を弾圧する「スラップ訴訟」ではないのかとの批判の声が高まる中・・・
下地敏彦市長「訴えの提起についての議案を提出しましたが、同議案の内容を精査する必要が生じたため本案を撤回いたします。」
結局、下地市長は議案を撤回しています。
一方、石垣市議会では石垣島への陸上自衛隊配備予定地をめぐりNHKの放送内容には「事実と異なる点がある」として訂正などを求める抗議決議を賛成多数で可決。
一方全国を見ても、NHKから国民を守る党の立花孝志党首が、テレビ番組でのタレントの発言を巡り総額1億円の慰謝料を求める集団訴訟を起こすことを明らかにしています。
石橋記者「今の不正義が放置されていることへの怒りであり、それを正すことが新聞記者としての役目であると思っている」
先月24日、横浜地裁川崎支部で、ヘイトスピーチをめぐるある裁判の第1回口頭弁論が開かれました。訴えたのは、川崎市議選の元候補者で佐久間吾一さん。川崎市議選挙の前に出された神奈川新聞の記事が名誉毀損にあたるとして、記事を書いた記者個人に損害賠償を求めたのです。
佐久間さんは今年2月、市内で開いた自身の集会で「いわゆるコリア系の方が日本鋼管の土地を占領」「革命の橋頭堡(きょうとうほ拠点)になった」「闘いが今も続いている」と演説しました。
この演説に対し神奈川新聞の石橋学記者が「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と記事にしたことに佐久間さんは記事には根拠がないと主張したのです。
石橋記者「今もうすでに被害があって、被害が続いている。それはやはり止めなければいけないし、やめさせなければいけないし回復させなければ僕らの社会の正義というのは取り返せないというふうに思うんですね」
様々な表現をめぐる問題がありますが、川崎では深刻なヘイトスピーチやデモが問題になっていますね。
阿部さん「はい。川崎では戦前から朝鮮半島出身者が多く演説で取り上げられた池上町もその一つで、旧日本鋼管の土地におよそ200人が賃貸契約がないまま住んでいますが会社側も、「話し合いで解決したい」という姿勢です」
そうすると佐久間さんが主張する「革命の拠点」や「闘いがいまも続いている」などという事実はないわけですね。
阿部さん「はい。このことを踏まえると、佐久間さんの主張は「デマをデマと書かいたこと」「ヘイトスピーチをヘイトスピーチと書かれたこと」が名誉毀損だと訴えていることになります。川崎には在日コリアンが多く住み、人種差別主義者たちの標的とされてきました」
石橋記者の弁護団はこの裁判について、「ヘイト側と反ヘイト側の主戦場」という言い方をしています。
なぜ沖縄から取材に行くことにしたんですか。
阿部さん「川崎で対策が進んだのは、報道の力も大きかったんです。石橋記者は地元紙として差別をなくすために書いてきました。もし今回、石橋記者が敗訴するようなことがあれば、どこの記者も差別を差別と書けなくなってしまいます。書けなくなれば、差別の存在が見えなくなり、解消も永遠にされず、社会にとって大きな損害になります」
沖縄も人ごとではないですね。
阿部さん「基地に反対する沖縄の人々も「売国奴」「どぶねずみ」などとヘイトスピーチの対象にされるようになりました。2013年東京でのオスプレイ反対の建白書デモは印象に残っています。それに、メディアが狙い撃ちにされることも増えています。見た目には遠いところで起きている問題でも、自分ごととして受け止め、おかしいことはおかしいと伝えていく必要があると思っています」
なぜ、表現に対して異論を唱えるのかその一つひとつに、ただしい根拠と社会的道徳も必要ですし、相手の立場になるという想像力の求めれている気がします。