※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

県内でもとくに昔ながらの街並みを残す、竹富島。今や年間50万人以上が訪れるという、沖縄を代表するの観光地ですが、その陰で島はある問題に直面していました。現地を取材しました。

伝統的な赤瓦の街並みに、集落をめぐる水牛の観光案内。竹富島にはこの日も多くの観光客が訪れていました。中でも、島の西側にあるコンドイビーチ。白い砂浜と、遠浅できらめく海が人気です。

開発か伝統か 竹富島リゾートホテル建設

ところが… ビーチのすぐそばに予定されているリゾートホテル建設。島は今、「開発か、伝統か」を迫られています。予定地は、ビーチの道向かい。およそ2万1千平方メートルの敷地には、コテージやレストラン、プールなどが計画されています。那覇市に本社を置く事業者は、9年前にこの土地を取得。おととし1月に、県から開発許可を受け、行政上の手続きはすでに済ませていました。

上勢頭さん「僕らも両親が海に連れて行ってくれたりおにぎりにぎって夕日見ながら連れて行ってくれたのがよくて、親になったら子どもたちにしてあげたくて。」

動画を制作した、上勢頭巧さん。祖父の代から島で民宿を営んでいます。

上勢頭さん「(問題を)知ってもらいたいというのが一番です。反対反対というよりは、これが大事だと。人様が買った土地に対して建てないでくださいというのは、おこがましい気持ちもあるんですよね。宿泊施設が少ないでしょ、という事業者の意見もあるが、どんどんいいですよと、島で建てると竹富島の良さがなくなっていくのかなと思って、そういう人が、商店が夕方には閉まるからコンビニ開きます、24時間電気ついて、レンタカー、信号、お巡りさんと、利便性を求めることによって、のんびりした生活は失われていってしまう。」

「竹富島らしさ」それは、島民たちがずっと、固い決意で守ってきたものでした。

開発か伝統か 竹富島リゾートホテル建設

前本隆一さん「他の島にはない風景だから、観光客はくるのであって、都会と同じようなところだと誰も来ない。ただできたんじゃない、島の人の努力によってできたんだからね。」

そう話すのは、島の長老、前本隆一さん(90)

前本隆一さん「昭和33年ごろから本土からの観光客も来るようになって、私たちは竹富島を買い占めてくる人がいるから、これを買わせないように「竹富島を守る会」を作って、竹富島(の土地)を簡単に買わせないような運動をやった。「金は一代、土地は末代」という看板を建てたりしてずっと運動してきた。」

島の外から押し寄せてくる資本。自然や島の風土が守られるよう、1986年には独自のルール「竹富島憲章」を制定。翌年には街並みの価値が認められ、島の中心部が国の保存地区に選定されました。

前本隆一さん「一度壊されたら元に戻すのは難しいんですよね、何十年かかるかもわからない。だから壊させないように頑張っている。沖縄の原風景は竹富にしか残ってないと言われているから、昔の原風景が残っているわずかな竹富だけでも保存して残していただきたいというのが私たちの本音なんです。」

生活用水は石垣島から。ゴミは西表島に。小さな島は元々、生活のインフラを島外に頼っています。

阿佐伊さん「竹富町の方からは給水の許可が出ていますがこれは年間平均数値ということで給水の許可を出していますが、夏の一番熱いピーク時というのが算出されていないものですからそれについて不安視している。」

「竹富島を守る会」を受け継ぐ、阿佐伊拓さんは、他にも、環境への影響を心配しています。

開発か伝統か 竹富島リゾートホテル建設

阿佐伊さん「排水、浄化槽から排出される浄化の数値がどのくらいなのか島民が理解していないことと、実際にそこでどういう環境影響があるか調査もしていない。海の問題だけでなく、陸域の問題。竹富は希少生物がたくさんいます。」

2015年には、公民館の会員200人のうち、およそ8割が反対を表明。また、「竹富島を守る会」が、先月まで行ったホテルの建設中止を求める署名活動では国内外からおよそ4万4千筆の署名が寄せられました。

一方、事業者側は、取材に対し正当で合法な開発行為だと説明しています。

計画は「竹富町まちなみ調整委員会」や行政と協議しながら自然との共存を重視して取り組んできた。過去2回の住民説明会では好意的な声もあったが、3つの集落に対する説明会では住民から開催を拒否された。予定地はビーチからおよそ180メートル離れた位置にあり景観を損ねるものではない。水の調達や、排水処理に関して、それぞれ行政との協定締結や協議を済ませていること。

開発をめぐり、対立する住民と事業者。こうした問題は、県内各地で起きているといいます。

開発か伝統か 竹富島リゾートホテル建設

沖縄国際大学 上江洲薫教授「(同様の例は)沖縄県各地にあります。ただそれは建設の多い、恩納村、読谷村、南城市、座間味村、行政と住民が規制をする形で抑えるという形も見られます。住民の協力なしには開発はなかなか進められない状況です。インフラ整備、地域社会への溶け込みなど交流は通常はあって開発は進められていくというのは海外でも多いので、そういうものがないと開発はうまくいかない。ビジョンをどれだけ市町村が持てるかによって、地域にとってその開発がよくなるかの分かれ目になると思います。」

夕日スポットとしても知られるコンドイビーチ。開発か、伝統か。島の美しさや豊かさゆえの問題が押し寄せています。