続いてはQプラスリポート。取材した比嘉記者です。
比嘉記者「はい、こちらをご覧ください。これは、民間団体に寄せられたアメリカ軍関係者との交際や結婚などをめぐるトラブルの相談者の数です。(ウーマンズプライド提供:相談者の推移)2007年の設立以来、その数は増える一方ですが、中でも多いのが、アメリカ軍人・軍属と日本女性との間にできた子どもの認知や養育費の相談。相談先が少ない上、アメリカ軍に与えられた特権から、”泣き寝入り”する人が多いという、その実態を取材しました」
県内に住むAさん。4か月になる男の子を、両親や兄弟とともに育てています。男の子の父親はアメリカ海兵隊員。妊娠が発覚したのは、交際して3カ月が経ったころのことでした。
Aさん「まず「おろして」と言われたこと自体一番ショックだった。好きな人に裏切られた気分だった。自分にも責任もあるので、命は大切だと思って(おろせなかった)」
Aさんは未婚のまま産むことを決心し、認知や養育費の支払いを、相手に求めました。
Aさん「最初は積極的だった。休みをとって育児をしてくれたりとか認知をしてくれたり」
ところが…
Aさん「認知まではすんなりしてくれたんですがそのあとのお金がかかること、国籍取得にもお金がかかるし養育費もかかってくる。そういうことに関しては今も非協力的。合意書にもサインはしてくれたんですが、今になって養育費減らしてほしいとか国籍の(手続きの)お金も払うとサインしたが、養育費をこんなに払っているのにここからお金をだすことはできないのかと言ってきた」
Aさんは、養育費をめぐるトラブルが生じないよう軍人などを対象にアメリカの民間企業が提供している、生活費などの「引き落とし代行サービス」を利用して、養育費が自動的に振り込まれるよう手続きをしました。
しかし、男性が除隊して口座が変わったり、残高がなくなったりしたら、それも支払われる補償はないというのです。
Aさん「今は養育費とるにもとらないにも自分次第じゃないですか。もう少し法的にちゃんと守ってもらえたら女性は助かるんじゃないかなと思う。泣き寝入りしている人は多いと思うので」
一方、アメリカ軍人と離婚した女性が突き付けられた厳しい現状も。
Bさん「私たちは諦めるしかないと言っている人がほとんど。地位協定という壁がはがゆい。そこにいるのにどうすることもできない」
東京都に住むBさん。空軍に勤務していた男性と3年前に離婚しました。相手は経済的には裕福なはずでしたが、去年から養育費は滞っています。
しかしアメリカ軍は、男性がすでに軍を退役し、今は軍の中の民間会社で働く、いわゆる”軍属”であるという理由で、Bさんの訴えに取り合ってはくれませんでした。
Bさん「軍の方にもかけあったんですがリーガルオフィスに。軍属で現役の軍人ではないということで「軍としてはできることはない」と言われましたし、離婚してしまった後となると私が軍のIDカードを持っていないのでもうダメですという人もいて。
Bさんは離婚する際に日本の弁護士を介して養育費に関する取り決めをしていましたが…
Bさん「チャイルドサポート(養育費)が滞った場合には強制執行を行うということも約束したが、(中略)相手が日米地位協定で日本にはいるけれども給料もドルでもらっている、日本の通帳も持っていない、給料がそこに振り込まれているわけでもなく、すべてがアメリカ側だった。なかなか「給料の差し押さえも無理です」と言われた」
そこにも、日米地位協定の抜け穴があったというのです。日米地位協定の第18条では、強制執行を行うべき私有の動産があるときは、財産を差し押さえて当局に引き渡すよう明記されています。しかし、それには軍人・軍属に支払われる給与の差し押さえに関する規定はないため、打つ手がないのが現状です。
Bさん「アメリカ国籍で住民票もない状態で日本に住んでいる、その人たちは何をしてもいいんですかと言いたいです」
女性たちを長年支援し続けてきた、ウーマンズプライドの設立者で沖縄国際大学大学院で国際私法を研究するスミス美咲さんは、2つのケースについてこう話します。
スミス美咲さん「軍人の場合はどこの軍に諸国しているかにもよるが基本的に上司を通して養育費を払ってほしいとを掛け合ったり、国籍・認知をとることに関しても上司を挟んで話をすることができるが軍属に関しては現役の軍人とは違って一般の方たちが働いているのでなかなか上司を挟んで話をすることが難しい状況」
また、スミスさんと連携して女性たちを支援する鎌田弁護士は日本の法律の限界を指摘します。
鎌田晋弁護士「特に軍人の場合は勤務地が変わると今どこの部隊にいるのかというのがわからなくなってしまうことも多く、日本の効力が及ばなくなった場合に本国、第三国での強制執行となった場合に調査が難しくなる。強制執行は本人の財産に対して日本の裁判所は差し押さえをしてお金に換えてという手続きになるので本人が日本にいても財産がないと日本の裁判所は何もできないということになります」
どこにでもアメリカ軍人・軍属がいて日常的に出会うことが多い沖縄。しかし、彼らと日本人の間にある交際や結婚についてのトラブルはまだ闇に包まれています。
県では、現在県が行っている国際結婚などに関する相談窓口を今後拡充するとしていますが、これまでに米軍関係者に限った婚姻数や相談件数などは把握されていません。
鎌田弁護士「単に相談の回数や窓口を増やすだけでは足りないんじゃないかと思います。弁護士じゃなくてもできる相談業務は拡充して本人と一緒にEメールを作成したり問い合わせをするというところは拡充していく必要がある」
スミスさんは何よりも子どもたちのために養育費を回収できるよう、2国間の協定などを作ることが必要だと指摘します。
スミス美咲さん「認知、子どもの国籍取得、養育費にしてもこれは子どもの権利、子どもに与えてあげられる権利なので、離婚になってしまったとしても後に残る子供たちの権利を守ってあげることが大切だと思うので男女2人の問題として片づけるのはよくないんじゃないかと思う」
養育費が自動的に振り込まれるよう軍人・軍属のためのサービスを活用するということがVTRにありましたが、これもウーマンズプライドが独自に突き止めた方法だそうです。
困っている人が実効性のある方法にもっと簡単に行きつけるよう支援の充実が求められます。