※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

中村キャスター「毎週水曜日は、沖縄タイムスから、コメンテーターをお招きしています。きょうは、沖縄タイムス編集委員の阿部岳さんです。阿部さん、きょう5月15日復帰の日を、どんな思いで迎えましたか?」

阿部さん「47年経っても、約束と違って基地が減らず、日々基地問題の報道をしなければならない不条理を感じています」

中村キャスター「普天間議論「全国の問題」とあります。どういう内容でしょうか?」

復帰47年 重い基地負担 本土で広がる動き 沖縄タイムス 阿部編集委員解説

阿部さん「今月、全国に会員2600人を持つ、全国青年司法書士協議会が、普天間代替施設を巡る議論を本土で引き取るべきだという陳情を全国1788の議会に送付することを決めたんです。これは辺野古新基地に絞った「新しい提案」という運動です。新基地建設は中止し、まずは普天間の代替施設が必要かどうか、本土で責任を持って議論する。その上で必要ということになれば、本土で公平な形で建設場所を決めてもらうというものです。このほかにも、本土引き取りの運動というのがあって、沖縄の基地問題を考える動きが広がっているんです」

中村キャスター「こうした活動に、本土のみなさんが、なぜ取り組まれているのか、大変興味深いですよね。お2人にお話を聞いています」

全国青年司法書士協議会半田久之会長「これはむしろ「人権の問題」。国防の問題というよりも「人権の問題」だということで議論しています。沖縄と本土の人で、自由の格差があるんではないかと、そういうような認識に至ったんですね。本土の政治の側がですね、本土の理解が得られないというような理由で、同じ沖縄の中で辺野古にまた、たらいまわしをするという経緯があるわけですね。特定の少数の人には、すごい大変な痛みをともなうものですので、法律家としては、こういう人権侵害が起こっていること看過してはいけないんではないか」

本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会里村和歌子代表「私たちの考えは、本土側の市民こそが歴史的・政治的に沖縄に基地を押し付けている当事者なのではないか、という考えから、沖縄の米軍基地を本土に引き取り、この不平等を解消することを目的にしています。街頭行動とかを行っていると、「え、沖縄?」「辺野古って何?」っていうような素直な反応が見られることは確かなんですね。やはり知るきっかけがなかった、機会がなかった、ということだと思うので、それをなるべく、知ってもらうために、活動を頑張っていきたいなと」

中村キャスター「基地問題は「国防問題」ではなく、「人権問題」「本土側の市民こそが、基地を押し付けている当事者」お二人の言葉は非常に印象的ですよね。沖縄の人たちには確かに、基地を一方的に押し付けられているという不信感や、怒りを持っていますよね。こうした背景がこちらということなんですが。「92:8」。これは何ですか?」

復帰47年 重い基地負担 本土で広がる動き 沖縄タイムス 阿部編集委員解説

阿部さん「これは1952年の本土と沖縄の基地の面積の割合です。当時は、本土の割合が圧倒的に多かったんですね」

中村キャスター「ところが、次のデータを見てみますと、1972年には、41:59復帰した年にはすでに逆転していたんですね」

阿部さん「はい。本土の基地が、米軍支配下で抵抗が起きにくい沖縄にどんどん移転してきたため、沖縄に移転してきたため、沖縄の負担が増えたということがわかります」

中村キャスター「そしてさらに、2019年はというと、30:70圧倒的に沖縄の負担が大きいですね」

阿部さん「はい。沖縄の面積は日本の0.6%ですから、1952年時点の8%すら過重です。沖縄への基地集中は復帰しても解消するどころか、悪化していったことがわかります。県民が「差別」だと怒るのも当然だと思います」

中村キャスター「確かに、こうしてみると酷いですよね。そんな中、持ち上がったのが「本土引き取りの運動」ですね」

阿部さん「2000年代に入って、この差別に怒った県民から、本土への「県外移設」を求める声がこれまでより強く上がるようになります。自分たちの住む本土に基地を引き取ろうという運動が2015年に大阪で始まります。今は10カ所ほどに広がっているんですね。先ほどインタビューで答えられた、里村さんたちの活動もその一つです」

中村キャスター「みなさん、どんな方々なんでしょうか」

復帰47年 重い基地負担 本土で広がる動き 沖縄タイムス 阿部編集委員解説

阿部さん「メンバーは日米安保条約や基地の存在に、賛成の人も反対の人もいます。一致しているのは「本土世論の8割が安保に賛成している以上、責任を引き受けるべきだ」という点です」

中村キャスター「阿部さん、とはいえ沖縄の基地問題は、まだまだ沖縄にだけ閉じ込められているという印象が否めません。改めてどうお考えですか?」

阿部さん「こうした県外移設を含む主張には、「他者に押し付けるのは心苦しい」とか「基地自体をなくすべきだ」という声を聞くことがあります。基地被害の深刻さを、誰よりも知るからこその考え方だと思います。一方で、基地はよく「沖縄問題」と言われますが、本土が基地を集中させている「本土問題」だと考えています。全国の中に多数決原理からしても、本土の人が向き合わないと解決できません。私自身が本土出身だということもあり、県外移設の動きをきっかけにしてほしいと願っています」