その距離、202.195キロ!今年で35回目となる”全日本トライアスロン宮古島大会”が開かれ、国内外の1502人が己の限界に挑みました。この大会に特別な思いで臨んだ女性を追いました!
今回が20回連続出場となる江戸千景(えど・ちかげ)さん。これまで夫の欽一(きんいち)さんと二人三脚で挑戦を続けてきました。
江戸千景さん「20回の自分の記念というのもあっていつもの年よりも盛り上がっているそれなりの練習も積んできたのでいけると思っている」
欽一さんは自身もトライアスリート。5年ほど前に腰を痛めてから千景さんを全面的にサポートしています。
夫・欽一さん「(コースの)ところどころで顔を出して頑張ってねと僕ができなくなった思いの分も頑張ってほしいなというのがある」
明るく社交的な千景さんですが、道のりは決して平坦ではありませんでした。
三重県出身の千景さんが宮古島に移住したのは28年前。当時の夫との間に子どもが生まれましたが、その後、離婚。慣れない土地で”シングルマザー”としての生活に追われました。
江戸千景さん「今がどん底だからここから上がっていかなきゃいけないと思った時に、今まで自分がやれないと思ったことに挑戦してそれができるようになったら自信につながるんじゃないかとその当時はあって」
その強い思いが千景さんの生活を変えます。当時勤めていた役場の上司垣花徳亮(かきはな・のりあき)さんから指導を受け、トライアスロンの練習を開始。その4年後、2000年の第16回大会に初出場しますが、足の痛みに襲われ、泣きながら走り続けたといいます。
江戸千景さん「初めてのトライアスロンの時、(垣花さんが)ラスト20キロを伴走して下さった。その伴走がなければ完走していなかったと思う」
子どもを抱えながら抱いた不安な思い。20年前、自分の殻を破り、不可能だと思っていた挑戦を垣花さんは最後まで支えてくれました。
江戸千景さん「ずっと笑顔のままで走ろうと思っています。タイムは気にしません楽しそうに帰ってきます」
次第に雨は強まり、大会35回目にして初めてスタートが遅れました。
江戸千景さん「(雨は)これなら想定内(気持ちは)意外と穏やか」
競技は3キロのスイムからスタート。開始から31分、千景さんが笑顔で折り返します。理想のタイムでスイムを終えると、島を巡る157キロのバイクへ。この頃には天気も回復し、千景さんも順調な走りを見せます。一方で気温はぐんぐん上昇。蒸し暑さが選手たちを苦しめます。
沿道では、およそ5500人が盛大なボランティアを展開。
声援とともに選手を後押しします。バイクは目標の6時間を切る好タイムでフィニッシュ。笑顔が途切れることはありません。それでも。
江戸千景さん「お尻とかちょっと痛い。前からなので平気」
その頃、千景さんを待つひとりの男性が。かつて千景さんにトライアスロンを教えた垣花さんです。トライアスロンをゼロから教えてくれた恩師との再会。千景さんには当時の思いが蘇っていました。
垣花徳亮さん「20回も続けて大会に出るということ自体があの当時からすれば奇跡としかいいようがない。最後まで頑張ってもらいたい」
日も暮れ始めた午後5時半、ランの折り返しとなる21キロ地点を通過。
江戸千景さん「体は絶対にきついでも気持ちは折れていない」
ゴール地点となる陸上競技場では、欽一さんが到着を待っていました。
夫・欽一さん「脱水してないか…ドキドキする」
過酷なレースを制し、欽一さんとともに噛みしめる喜び。20回目の大会も見事、完走で飾りました。
江戸千景さん「よくこんなことを20年もやったなと。ずっと今まで応援してくれていた人のことなども思い出しながら、自分で決めることだなと限界とかできるとかできないとか20回の節目で終わろうと思っていたがもうちょっと頑張ろうかなと」