みなさんは、「洗骨」という風習をご存知でしょうか?文字通り、亡くなった人の「骨を洗う」というもので、死者の成仏を目的に行われているものです。
かつては世界各地で行われていて、国内でも沖縄県全域、鹿児島県の奄美群島などに風習として残っていました。現在でも、粟国島などに残っていますが、行う家庭はごく一部です。一見怖いという印象を受けるこの風習を題材にした映画があります。
映画『洗骨』。舞台は那覇市から北西およそ60Kmの位置にある人口およそ700人の粟国島です。先週、ロケ地となった粟国島では試写会が行われ、200人以上が集まりました。
物語は、ある家族が風葬した母親の骨を棺おけから取り出して洗う「洗骨」をするため、4年ぶりに島に集まったところから始まります。
家族は、それぞれが問題を抱えていました。妻の死を受けいれられない父親。離婚したことを家族に話せないでいる長男。思いがけず妊娠してしまった長女。家族は衝突を繰り返し、溝は深まっていきます。
映画のタイトルにもなっている「洗骨」。粟国島では、死者は、島の西側にある墓地、「あの世」とよばれる場所に風葬されます。日が昇る東側に人が住み、沈む西側に死者が眠るという考えからきているということです。
風葬された死者の遺骨は数年経ち、骨だけになったころに縁深い人の手できれいに洗ってもらうことで、ようやく「この世」に別れを告げることができるというのが風葬の考えなのです。
洗骨という風習が残された人々にもたらす不思議な力。監督のゴリさんと主演の奥田瑛二さんに話を聞きました。
映画のテーマになっている洗骨。ただ残された人々にとって、愛する人の亡骸を棺おけから取り出し、洗うという行為には、強い悲しみが伴います。
洗骨を経験した島の人「洗骨するときにお墓の中から(骨を)出して来るでしょ?亡くなったときを思い出して、(記憶が)あの頃に帰るんですよ。親たちがこういう姿になったんだなっていう、とてもショック」
洗骨を経験した島の人「(亡くなった方の)そのままの姿を見たいということで、家族にしたら。火葬してきたらどこの骨かわからないから、(墓に)納めたら終わり。悲しみも何も無い。2度悲しむことになりますよね。洗骨は。」
映画を作ったのは、ガレッジセールのゴリさんこと照屋年之さん。洗骨を行うことにより家族の死を2度悲しむことになるこの風習には祖先への感謝や愛情が詰まっていると話します。
照屋監督「一本一本「ありがたい」という意味を込めて素手で水で骨を洗っていくという行為には愛情以外、それと感謝と尊敬以外何者でもない」「この島の祖先に対する思いの強さを感じました」
父親役を演じる奥田さん「(Qこの作品のテーマは?)『1人じゃ生きていけない』ってことかな。(父親は)身の置き場所、心の置き場所を無くした男。自分を取り戻すということができる人とできない人がいる。だから、それは1人じゃないんだよ」
家族は亡くなった母親の洗骨をきっかけに絆を取り戻していきます。そしてクライマックスが、家族が「あの世」で洗骨行うこちらのシーン。4年を経て、母親と再会するのです。
観客「すごく良かったと思います。親のことを思い出して泣きそうになった」
観客「これを機にみんなで勉強して、残せるものは残していきたい」
観客「骨を洗って、優しいと思った」
父親役を演じる奥田さん「見ていただいて、何かあなたはこの映画から1つ2つプレゼントを貰うはずです」
照屋監督「我々の祖先は元々こういう文化があったんだったいうのを、気づくのはとても良いことだと思います。こんな風習があったんだっていう知って衝撃と喜びを味わっていただけたらいいなと思います」
映画『洗骨』は、来年1月18日から県内で先行公開が始まり、2月9日から全国公開されます。