県内に住む人にも離島の魅力を知ってもらおうという事業があります。この事業を支え、島の魅力を伝えようと頑張る人たちにはある葛藤もありました。
離島の魅力を県内の多くの人に知ってもらおうと県が3年前から行っている『島あっちぃ』。県内に住む人なら誰でも応募でき、年間3000人が離島の魅力を体験しています。
今回18人が参加した宮古島での島あっちぃ。ここでは農家での民泊を体験できます。
浦添市在住・金城邦宏さん「なかなか本島に住んでいると離島に目がいかないので、子どもたちも小さいうちから離島っていう存在を心に持っていくといいんじゃないかなと思って」
初参加の金城さんの家族が過ごすのは池原さんのお宅です。
池原ヒロ子さん「こうじゃなくて手はこう。ここの指で支えてやってごらん。うん、上手」
8年前に民泊を始めた池原さん。出会った人たちとは、今でもつながりを感じています。
池原さん「台風とかあるじゃないですか。そしたら子どもたちが『台風どんな?お母さん』とかラインしてきたりとか」
しかし、農業と民泊、2つの両立に悩む民家もいるといいます。
池原さん「12月になると2週間くらい続けて(受け入れを)やるんですよ。(Q:その時は畑は見ない?)見ない、見ない」
民泊をまとめる事業者も、受け入れ体制を変えていく必要性を感じています。
さるかの里代表・松原敬子さん「(時期が)重なると農家確保が大変なんですよ。当初から始めた農家さんも70歳になってまして、若い農家さんを入れていこうかなという節目になっています」
こちらは学生たちを受け入れている仲元さんの家。宮古島の文化に親しんでほしいと、オトーリが始まっていました。口上を述べるのが習わしです。
大学4年・佐藤晃輔さん「普通じゃ経験できないですよね」
滅多に訪れることのできない場所を地元の人が案内してくれるのも島あっちぃの魅力です。この日訪れたのは、宮古島の北およそ4kmにある大神島。
友利行雄さん「大きな神の島と書いて大神島といいます。名前の通り神祭りの多い島でもあります」
島には聖域が多く、立ち入りが許されない場所もあります。
友利さん「この岩が邪魔だから岩を重機で割っていた。ところが割っている途中でユンボという重機の先が3回折れたんですね。滅多に折れないんですよ。(ユタに)確認を取ったら、今割っている岩は、昔からの神が宿っているようだから元に戻しなさいと言われた」
ガイドの友利さんは大神島で生まれ育ち、就職で島を離れましたが、定年を機に戻ってきました。
友利さん「今のおじいちゃんおばあちゃんたちが、なかなか喋らない部分もあって。我々がやらないことには(案内を)やる人がいない」
島を知ってもらいたい一方で、こんな思いも抱いています。
友利さん「ラッシュアワー状態で観光客がいるとなると、ここは神様の島ですから、あまり良くないんではないのかと。今のおばあさんたちが神祭りをやっている分には、おばあさんたちが思うようにさせてあげたい。我々の後輩からどういう考えを持つかどうか。(聖域に)もう入っちゃえ、観光客どんどん入れろ、みたいなことになったら…」
たくさんの観光客が訪れれば、島は活気づくものの、大事な神事に支障がでるかもしれない。しかし、貴重な文化や昔のままの自然をいろんな人に見て感じてほしい。複雑な気持ちが絡み合います。
龍征くん「生き物がたくさんいて面白かった」
莉奈さん「大神島で、車とか全然ない状況で過ごしたことが新鮮でよかったです」
杏奈さん「宮古島の海の砂はさらさらしていて指が痛くならなかった」
金城邦宏さん「風の音、波の音しか聞こえないような時間を、子どもたちと一緒にゆっくり過ごすことができて、久しぶりにリラックスできて、それが良かったと思います」
観光では出会えない離島の表情そこで生きる人の思い。島を歩いてみることが、今後の離島振興を考えるきっかけになるかもしれません。