いまの時期しか市場に出回らない、知る人ぞ知るある香草があります。その魅力にとりつかれた人たちを取材しました。
「爽やかな匂いがする!」「ん〜いい匂い!」「毎年売れ行きは上場です!」
豊かな香りで人々を惹きつけるのは「ヤマクニブー」。琉球王国時代から防虫剤や芳香剤として親しまれてきた香草なんです。どんな香りかというと・・・
記者「ん〜♪メープルシロップのような甘〜い香りとスパイスをぎゅっと濃縮させたような香りがします!非常に独特な香りです!!」
ヤマクニブーは、本部町の伊豆味のみで生産されています。
6月、黄色い可憐な花が咲くと収穫の合図。刈り取ったヤマクニブーは、釜で蒸しあげたあと、軒下で干してしっかり乾燥させることで、独特の香りを放つようになります。
実際にどのように使われているのか。愛用者を訪ねてみると…「至るところにヤマクニブー!」
大城さんは、玄関やトレイなどの芳香剤や衣類の防虫剤として使っています。
大城さん「着物に直接触れないように軽く包んで、下の方に入れてそうすると着物に香りが移るんですよ!」
また、ヤマクニブーを愛するがゆえこんな琉歌も詠んでいます!
大城さん「母がずっとタンスに入れて使っていたんですよ。だからタンスをあけるといい香りがして、母を偲ぶというんですかね…ひとつの絆になる」
そんなヤマクニブーに注目した研究機関があります。「沖縄美ら島財団」です。2年前から民俗学と植物学の視点から調べています。
その中で、琉球王国時代から使われてきたということを裏付ける貴重な文献も見つかりました。
研究者・板井英伸さん「『琉球の習慣では女性が陽にさらして乾かし香料にして衣服の襟の中にはさむ』というメモ書きが残ってるんですね。これがヤマクニブーを香料として使ったという、唯一見つけることができた記述でした」
葉や枝をそのまま使うのは沖縄だけ。研究者、ヤマクニブーを沖縄の誇るべき文化だと評価しています。
しかし、そんなヤマクニブーに危機が…。
化学製品におされている上、高齢化などで、年々、生産農家は減り続けているのです。最盛期にはおよそ2万束が出荷されていたそうですが、今年は1200束ほどまでに落ち込んでいます。
ヤマクニブーの魅力をもっと知ってもらおうと取り組んでいるのは、生産農家の仲本さん。若者向けの新製品の開発に力を入れています。
仲本さん「匂いに惹かれるんですよ。これが好きなので簡単にほったらかすことができない」
仲本さんの娘・小百合さん「絶やしてはいけないなというのはあるので、若い人たちにとってどういう商品にしたらいいのかって、試行錯誤しながら商品づくりをしていきたい」
若者が取り入れやすいよう見た目を華やかにするなど工夫をすると、町の特産品のなかでも注目株に。
もとぶかりゆし市場・渡久山さん「毎年完売です!今年も完売予定です!」
琉球王国時代の香りを次の世代へ。沖縄独特の香り文化を継承する取り組みが始まっています。