※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。
News Photo

緊急リポートです。「オオヒキガエル」は南米が原産で、もともとは沖縄のどこにも生息していない「外来種」です。しかしここ数年、石垣市でこのオオヒキガエルが大量に繁殖し、八重山固有の在来種の生態系を脅かす恐れがあるとして、環境省などが捕獲作業を続けています。なぜ、石垣に持ち込まれ、これほどまでに増えてしまったのでしょうか、比嘉記者です。

環境省の職員らの案内で私たちが向かったのは、石垣市内の水べりや畑の池の近くです。オオヒキガエルはこのあたりを中心に生息しています。

比嘉記者「ちょうど6月の梅雨の時季から夏場にかけて大量発生するというこれはオオヒキガエルです。ご覧のとおり非常に大きくなります。これでも小さい方で、大きくなると20センチ近くになるそうですが、このオオヒキガエル、もともと石垣島にいるものではないんです」

オオヒキガエルはもともと南米原産。1978年、サトウキビの害虫を駆除する目的で移入された外来種です。その後、体も大きく、体表から毒を出す習性を持っているため、外敵に襲われにくく、30年の間にどんどん繁殖を続けてきました。

環境省や地元研究者の調査によると、オオヒキガエルの現在の推定生息数は3万から5万匹。実に石垣市民の人口を上回る数です。そしてここへきて本格的に捕獲作戦を展開することになりました。八重山固有の在来種に影響を与える恐れがでてきたのです。

環境省 自然保護官補佐・勝部五葉さん「もともと石垣島にいるカエル類と、餌をめぐって競争が起こって在来のカエル類を圧迫していると考えられます」

八重山地域にはサキシマヌマガエルやハナサキガエルなど、島ごとに進化を遂げた貴重な在来種が多くいます。この在来種とオオヒキガエルのエサとなる昆虫類や生き物はほぼ同じ。体が大きく捕食量も多いオオヒキガエルは在来種よりも有利です。

勝部さん「繁殖力の強い外来種が入ってきてしまうと、島ごとの生態系が崩れてしまう恐れがあります」

在来種の生態系への影響を早くから訴えてきたのは高校の生物教師・藤本先生です。

八重山商工高校・藤本治彦先生「外来種なんですが、高校生にとっては生まれた時から(オオヒキガエルが)いて、在来種だと思っています。外来種というイメージをちゃんと持ってもらおうと思って」

2001年から7年にわたり、藤本先生は生徒たちとオオヒキガエルの実態調査を続けました。その結果、予想より多くの個体数を推定し、胃の内容物からサキシママドボタルやサキシマヒラタクワガタなどの在来種を捕食していることもわかったのです。

藤本先生「田んぼと牧草地で推定個体数を求めたんですけど、だいたい3万匹くらいいるだろうと。そうすると大体、ひと月に1.4トンくらい(虫や生物を)食べているだろうと」

このまま増え続けると生態系にも、また毒をもったオオヒキガエルを小動物が食べて被害が出ることや、さらには人への影響も懸念されます。生き物をむやみに持ち込んだり持ち出したりすることの影響を藤本先生は警告しています。

藤本先生「それだけを見ればよいことだと思うんです。農薬も使わないし自然に優しい農法でしょうし。ただ、こういう生き物を持ち込む時はそれだけじゃなく、周りのことを考えないと今回のようなことが起きるでしょう」