美ら島の提案です。古くなった民家を解体したときに出る、多くの古い材木はこれまで廃材として捨てられ、焼却されていました。しかしこの古い木材を新たな建材としてよみがえらせる「古材リサイクル」が注目を集めています。比嘉記者です。
築70年を超える、赤瓦の大きな家。その家の戸が開けられたのは久しぶりのことでした。
長堂さん「たぶんチャーギだと思うんです。桁として使われてるものはすごい。まだシロアリにもやられてないし素晴らしいとおいます」
長堂さんは、古い民家に直接出向き、使われている木材の材質や状態を鑑定し、買取りや販売を行う「古材鑑定士」です。同じく鑑定士を務める息子の晋析さんと一緒に、鑑定依頼を受けた古民家で作業をします。
晋析さん「屋根裏とか登ってですねやっぱり木をみるとまあ(木が)喋ってるわけでははいけど“もうちょっと頑張れるよ”って言ってるような、イキイキして見えたりすることがありますね」
近年、注目をあつめる「古材」。国内で産出され、数十年から100年以上の時間をかけて自然乾燥しているために硬く丈夫になったものです。店舗の内装や家具の材料として、そして新築住宅に風格をもたせる重厚な梁や柱として使われるなど人気を呼んでいます。しかしその材質や状態は、トラブルを防ぐためにも厳重に行われなければなりません。材質、状態、どこに使われていたか、傷や割れはないか。多くの基準をクリアする良質な古材がここ沖縄にも多く残っていると長堂さんは語ります。
長堂さん「すごい材料が、いいのが使われてるし、沖縄で育った木だからシロアリにも強い。頑丈でもあるし、なんともいえない独特の存在感をかもし出す古材をみて、あこれはいけるんじゃないかって」
チャーギやアカギ、フクギなどをつかった沖縄の材木は、昔からとても貴重なものでした。戦前まで、木造住宅は大切にリフォームを繰り返しながら長く住まうものでした。移築するときは、以前の家を解体して取り出した木材を捨てずに再利用することも当たりまえだったといいます。
奥浜さん「チャーギとか貴重な材木というのは、後々まで使うことがあったんでしょうね」Q基本的に、感覚として“捨てる”ということがなかった?「なかったでしょうね。もうリサイクルという言葉は、新しい言葉はありますけど、昔は全てくめーきと言うんです。くめーきりよーや、て言いますよね」
昔から受け継がれてきた、物を大事にする心が、長い時間をかけ強く丈夫にな木材「古材」を生み出します。ものを大事にする、循環社会の基本ともいえます。
「あいえなあ、すごい」「ああ、これ?この木?ああそうか、こうやって」この家の家主、宮森幸江さんと大田節子さんです。姉妹は幼いころ、戦争、そして戦後の若い頃をこの家で過ごしました。Qこれ誰が書いたんでしょう?「たぶん父だと思います。たぶん終戦直後ね」
この家を建てたのは、お父さんの盛小根正也さん。戦前、ペルーにわたって仕事をしていた盛小根さんは1935年に子どもたちとともに沖縄に戻り、大きな家を建てました。以来この家は家族を守り、戦争にも耐えてきたのです。
幸江さん「この家もね古くなって主がいなくなりまして。長男はペルーに行ったんです、次男が(家を)見てましたけど次男もなくなって他の人に貸してました」「よく勉強したねえ(笑)。農家でしたから母や家族が大豆など収穫してきて、こうして叩いて手伝って」
帰国した子どもの頃、そして戦争。疎開から戻ったあとの戦後の苦しい時代。家族の思い出がつまったこの家の木材が、あらたな建材として生まれ変わるのであれば嬉しいと二人も考えています。
幸江さん「木をね、1・2本は貰いたいと思ってるんですよ。記念にね」
いまの木造建築の主流は、外材と呼ばれる、海外から工業製品として輸入される木材です。その中に、数十年から100年の時を経た古材たちが、次の出番を待つかのように静かに眠っています。
古い小学校の校舎から出てきた古材は、建築されたとき、大工さんと子どもたちが一緒に運んだ材木。古い民家の柱には戦争中の砲弾のあとがのこっています。このチャーギの柱は、立派なアマハジを支え続けてきました。
古材触る長堂さん。その家の歴史や思いをたくさんの家族から聞くという長堂さん。沖縄のすぐれた古材、そしてそれが十分再利用できることをもっと知ってもらいたいと考えています。
長堂さん「材木屋としてやらなきゃいけない使命感を持ってます。ただ外材、南洋材を売るんではなくて沖縄に育った本当の木を使って一部でも住宅に使って貰う、沖縄の木の良さ、木造の良さとかそういったものを」「老朽化してどうしよう、というのではなくて“良いもの”なんだということを分かっていただいて、大切に思う心を持っていただく。そしてその心を自分たちが形にして流通させることができればと思います」
木材は時間を経過したもの方が強く硬くなる、ということにはおどろきましたね。
「古くなったものは捨てる」という感覚が現代の私たちにはあると思いますが、古くなったものをどう使うか、という眼で見れば、ものの価値は1つではないはずですよね。美ら島の提案でした。