公務外のアメリカ兵2人が起こしたタクシー強盗事件で被害を受けた男性運転手の家族が2人に慰謝料の支払いを求めた裁判があす(15日)、始まります。
裁判に踏み切ったきっかけは、日米地位協定にもとづく慰謝料が10年経った今も支払われていなかったことでした。被害者の家族にその思いを聞きました。
宇良宗之(うら・むねゆき)さん「一番は亡くなった父親にですね、一言でもいいので、謝罪をしてほしいというのがあります」
事件による癒えない苦しみを語るのは宇良宗之(うら・むねゆき)さん。公務外のアメリカ兵が起こしたタクシー強盗事件で襲われた運転手・宇良宗一(むねかず)さんの長男です
「きょう未明、沖縄市で発生したタクシー強盗で、県警は、朝から事情を聞いていたアメリカ兵2人を逮捕しました」
事件が起きたのは、10年前の1月7日。
2人の海兵隊員は現金を奪おうと乗車したタクシーの運転手・宗一さんを酒瓶で殴るなどして大けがをさせました。2人は逮捕され、実刑判決が下されました。
宗之さん「(父が)『事件に巻き込まれて自分の人生が狂った』というのを家の中でわめいていたんですね。精神的に段々、段々、落ち込んいく姿はこちらも見ていられない状況でした」
宗一(むねかず)さんは、事件後、心的外傷後ストレス障害、いわゆる〝PTSD〟に苦しめられました。
「夢で事件の場面を見ます。外国人を見ると怖くなります」
PTSDは回復することなく宗一さんは事件から4年後にこの世を去りました。
宗之さん「防衛局がもし早めに父親に対応してくれれば、精神面でも落ち着いていたんじゃないかなと思います」
一家の大黒柱を失った宗之さんたちは事件の補償について、宗一さんが働けなくなったことや治療費などへの損害賠償およそ2250万円を防衛局を通じてアメリカ側に求めていました。
しかし、事件から9年以上が過ぎた去年11月に届いた返答は、146万円を支払うというものでした。
「146万円を受け取ることに同意し、加害者を永久に免責する」
しかも、示談書には「加害者に責任を問わない」という条件も付けられていたため、去年12月に裁判を起こしました。
宗之さん「日米地位協定っていうのはこういうもんなのかなと…」
被害者救済の意識が欠如していると言わざるを得ないアメリカ側の対応についてこうした問題に詳しい弁護士は慰謝料を審査するプロセスの不透明さが問題だと指摘します。
コザ法律事務所・日高洋一郎弁護士「米政府がいついくら支払うかっていう基準が全く明らかにされていないんで、どういう協議が米政府でされてっていうプロセスが明らかになっていないんで、こちらとしては何もわからないまま待たされるというのが現状だと思います」