楽園の海 案内は水中カメラマンの長田勇さんです。
長田勇さん「今回は、久しぶりにコブシメの産卵シーンを撮影したくて、遭遇率の高い石垣島へ行ってきました」
はい!では早速見ていきましょう!

長田勇さん「3月18日。(気温18℃)新川(あらかわ)漁港にて美南Ⅱ(みなみツー)に乗船します。およそ30分かけてポイントへ向かいます。船長は、SEA-TRIPの清山太造さんです。コブシメの産卵を狙うポイントは、島の北西部にある「大崎」。例年、1月頃から見られているそうですが、なんと!昨年の11月にも産卵しているコブシメがいたそうです」
シュノーケリングをしている方もいっぱいいますね!
長田勇さん「そうなんですよ!人気のポイントだというのが分かりますね。私たちは全員ダイバー。潜る準備を進めます。ガイドしてくれるのは、元気いっぱいの堀田沙希(ほったさき)ちゃん」
堀田沙希さん「コブシメの産卵見るぞー」

長田勇さん「さっそくエントリー。この日の水温は22.5℃。沖縄本島より2℃高いです。ここのポイントは、ユビエダハマサンゴの群生地になっています。このサンゴ、実はコブシメが産卵床として1番活用するサンゴなんです」
へ―そうなんですね!どうしてですか?
長田勇さん「産みつけた卵が、外敵に食べられないようにする事を考えた時、奥行きのあるこのようなサンゴは、最適のようです」
「ベージュ色も緑色も全部同じ、ユビエダハマサンゴなんですよ。たくさんの小さな魚たちも、このサンゴに住み着いています。年間通して見られるオレンジ色のキンギョハナダイや紫色のハナゴイ、色鮮やかで綺麗ですよね」

癒される景色ですね。
長田勇さん「心も洗われます。こちらは、私の大好きな魚、アカネハナゴイのオス。周りのメスに求愛しています」
長田勇さん「さきちゃんと私の間には、1匹のツバメウオ。この場所は、ツバメウオのクリーニングステーションになっていました。体についた寄生虫を、ベラに取ってもらっています」
気持ちよさそうです。

長田勇さん「コブシメの産卵目撃情報のあるエリアに辿り着くと、すでに何匹か集まっていました。まだ産卵は始まっていません。この個体はメス。ヒラヒラ部分の模様見て下さい。水玉模様がメスの証です。大きさは、35cmほどあります。ガイドの沙希ちゃんと比べても、なかなかのサイズです。これタレ目になるんですかね?優しい目をしています」
長田勇さん「私たちの前を泳いでいるのはメス。そして、左からフレームインしてきたのが、オス。ヒラヒラ部分の模様が縦縞になっています。こちらは、手前のメス1匹に対してオス2匹。これ、1番揉めるパターンなんです。原因はメスの奪い合い。オス同士の喧嘩が始まります」
これ先ほどと、色も模様も全然違って見えますよね!
長田勇さん「怒ったり威嚇する時の姿です」

長田勇さん「オスとメスが結ばれる瞬間の撮影にも成功しました。オス同士の戦いに勝った者が相手に選ばれます。これは、精子の入ったカプセルをメスに渡す作業です。交尾ではなく『交接』と呼びます」
交接。そういう言い方があるんですね。
長田勇さん「そうです。およそ1分30秒ほどの交接が終わりました。同じボートに乗ったダイバーの皆さんも集合済み。いよいよ産卵が始まります。卵は、1個づつサンゴの隙間へ運びます。左にいるオスの背中見て下さい。体の左右半分ずつで違う模様を出しています」

ホントだ。メスのいる側は優しい模様で、反対側は怒った模様ですか?
長田勇さん「はい!他のオスが近付いてきたりすると、背中の模様はこの状態になります。縦で割って左右半分づつ、模様の使い分けが出来る水中生物は、他にはいないんじゃないでしょうか」
長田勇さん「私たちの目の前でも、産卵行動は続きます。この時の産卵ペースは、5分に1個でした」「大事に大事に足で掴んだ卵を、サンゴの隙間へ。安全な場所かどうか?確認しながら、慎重に運んでます」
「メス1匹で、2、3日かけて100個以上の卵を産みつけるそうです。それをシーズン中に数回繰り返します」

へー!すごい作業ですね!
長田勇さん「卵の大きさは直径2.5cmほど。40日~60日で孵化すると言われています。寿命は1年から2年。大きく成長して、また産卵のためにこの場所に戻ってきてくれるとイイですね~」
コブシメの産卵見てみたいと気になった方多かったと思いますが。
長田勇さん「このポイントは、平年だとGWくらいまで観られているんですよ。ギリギリですけど、興味ある方はぜひ行ってみて下さい!」
今回もありがとうございました。以上、楽園の海でした!