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特集です。骨の変形や関節障害を引き起こす国が指定する進行性の難病「ムコ多糖症」この病気と闘いながら、この春、大学に進学した男性がいます。そこには、家族の支援や学校の教員の支えがありました。今月から大学生として、夢の第一歩を踏み出した男性を取材しました。

名護市にある桜野特別支援学校・高等部の卒業式。「沖縄の歴史や文化などをもっと学びたい」と大学進学を決意した一人の男性。本部町出身の仲村一吹(なかむら・いぶき)さんです。一吹さんは、国が難病に指定している「ムコ多糖症」と診断されています。

「ムコ多糖症」は、細胞内のムコ多糖を分解する酵素が生まれつき不足し、ムコ多糖が蓄積することで、さまざまな症状が出る遺伝性の病気です。一吹さんの病気の発覚は、小学校入学前の健診でした。

父・一茂さん「小学校あがる時の健康診断の時に病院の先生から酵素の量が普通の子と全然違うので調べた方がいいと言われてそれで発覚しました」

進行性の難病「ムコ多糖症4型」仲村一吹さん

入学当初は、自らの足で通っていましたが学年が上がるにつれて徐々に筋力が低下。歩くのも困難になり、車イスが必要な生活になりました。中学校に進学すると骨髄移植の手術を行い無事に成功したものの筋力や体力は低下し、周り友人との差を感じることが増え、次第に不登校に。

自宅に引きこもっていた一吹さんに転機が訪れたのは両親が勧めた「桜野特別支援学校」への進学でした。1年の時の担任、前田幸輝(まえだ・こうき)先生との出会いがきっかけで一吹さんは、学校へ楽しく通えることが出来たと言います。

その後、一吹さんは、大学進学を目標に勉強に励み今年、名桜大学国際学部国際文化学科に合格。その努力を見守っていた高等部3年生の担任で青山和裕(あおやま・かずひろ)先生はその様子を振り返ります。

青山和裕先生「一吹さんはがんばり屋な生徒です一吹くんは書くのが苦手で握力がないので(字が)書けなくてなかなか筆記するのが難しいんですけど家で願書とか出願する資料を自分で書いて600字を(原稿)3枚ぐらい書いていて保護者も驚いていて家でがんばっている姿はすごい思いました」

仲村一吹さん「(青山先生は)いい先生だと思います。大学とか受験で忙しかったけどサポートしてくれた。夏休みにいろんな先生が学校で授業してくれた。(先生方には)めっちゃ感謝しています。お父さんとかが観光業をやっているから僕も大学でいろんな知識や技術とか身につけて本部町を活気づけたい 働きたいです」

そして、迎えた卒業式。一吹さんは、卒業生を代表して答辞を読みました。

進行性の難病「ムコ多糖症4型」仲村一吹さん

一吹さん答辞(壇上)「私は小学1年生の時に進行性の病気が発覚し、将来を考える余裕はありませんでした。しかし、中学1年生で手術を受け、高校1年生からこの学校に通うことが出来ました。これから自分のペースで大学生活を送り卒業を目指します」

そして、保護者を代表して母・涼子(りょうこ)さんが涙ながらにあいさつをしました。

母・代表あいさつ「生まれたときから病気でこれからどんどん症状が進行して動けなくなるなんて病気を信じられず受け入れるまでたくさん泣いて少し時間がかかりました。彼のおかげで今生きていることが当たり前ではないということを気づかせてもらっています。大学に合格できたのは息子のがんばりもありますが先生方のご協力と応援があったからです」

在校生「桜野で初めて大学進学が出たのでかっこいい先輩だし、私も(一吹さんのように)なれたいいなと思いました」

一吹さん「緊張したけどうれしかったですみんなに祝福してもらえて(母の言葉を聞いて)感動しました。泣きそうでした」

式が終わると教室へ戻り、担任の青山先生から一吹さんへ最後のメッセージです。

進行性の難病「ムコ多糖症4型」仲村一吹さん

青山先生「大学進学の意思を聞いたときは過去には大きな手術を経験し、中学校では不登校と聞いていたので大学受験という大きな挑戦に不安はありました。一吹さんの前向きな姿を見ているうちにこの夢を全力で応援したいと心から思い一緒に乗り越えようと決意しました。何か困ったことがあればいつでも学校に相談に来て下さい。これからの一吹さんの活躍を心から楽しみにしています。改めてご卒業おめでとうございます」

新しい年度を迎え、大学の入学式の朝。真新しいスーツに身を包み車に乗り込みます。仕事の都合で入学式に出席できない父・一茂さんは一吹さんのスーツ姿を写真に収めます。

父「大学生いいな。楽しみだね。がんばってね。楽しんで下さい。行ってらっしゃい(Q:スーツ姿を見ていかがですか?)カッコいいです。ちゃんと大学生みたいな感じでよかったです」

名桜大学のことしの新入生は650人あまり。これまで少人数のクラスで過ごして来た一吹さんにとって経験のない数の同級生の多さです。

一吹さん「(大学生の)実感が出て来た。同級生たちと勉強したり遊んだりしたいです」

難病と向き合い「大学進学」の夢を実現させた一吹さん。今後も挑戦は続きます。

一吹さんは、桜野特別支援学校で「学校生活を通じてさまざまな趣味があると気付き、自分の世界を広げることが出来ました」と話していました。一吹さんの趣味は「旅行」ということで大学では英語を勉強して、海外旅行で役立てたいということです。

父・一茂(かずしげ)さんと一緒に仕事をするのも夢のひとつということで一緒に本部町を盛り上げていってほしいです。一吹さんの大学生活が始まり楽しそうに毎日大学に行っているということです。