沖縄で今を懸命に生きる人々にスポットを当てる「イマジンおきなわ」です。
今回は、子どもの頃から感音性難聴という障害があり苦労しながらも夢を叶えた保育士と、彼女が担当した園児たちの涙と笑顔の卒園式に密着しました。
中城村にある「ミナミ保育園」の卒園式。卒園する園児たちの担任、田場こころ先生の耳は、実は殆ど聞こえていません。

この日、園児たちがやって来たのは「沖縄こどもの国」です!2月に撒いた豆まきの豆を、象がエサとして食べるのを見学しました。
思い思いに楽しむ園児たち。こころ先生は子どもたちの写真をとったり、移動を引率したり、一緒に遊んでお弁当を食べて。丸1日、みんなで楽しく遊びました。
子どもたち「(こころ先生のことどう思う?)大好き!大好き!かわいいから!」
子どもたち「(どこが好き?)笑ってるところ。寝てない時に怒られる。一緒に制作してくれるのが(楽しかった?)ウン」
子どもたち「もの作ったりする!(どんな遊びをする?)おえかき!」
子どもたち「何かちゅくってる。遊んだり、本読んだり」

田場こころ先生「卒園の前の思い出づくりのひとつなので少しハードな面もあったんですけど、子ども達が楽しんでくれたらうれしいです」
園児たちと一緒になって楽しむこと、特に園外保育やどろんこ遊び、ペイント遊びなどは子どもと同じくらい楽しんでしまうというこころ先生。ピアノも弾きこなします。
保護者「真面目で明るくて、そして何より子ども達がお世話になってるなっていう、本当に」
保護者「とっても優しくて素敵な先生。ちゃんと見てくれてる一人ひとり」
園児たちにとっても好かれて、保護者からも信頼の厚いこころ先生ですが…。
田場こころ先生「保育園の4歳の時の伝言ゲームがあって、その時に聞こえないことがわかりました」

検査の結果は感音性難聴。症状として、高い音は殆ど聞き取れず、大人数の会話なども聞き分けは難しいといいます。子どもが好きで保育士を志しますが、大変な苦労が伴いました。
田場こころ先生「保育学校での実習先を決める時に、聴覚障害を理由に断られることが続いて覚悟はしていたんですけど、やっぱりそこはちょっと辛かったです。一人では難しかったんですけど、今の職場の方や周りの方が協力してくれたので、無事に受け入れてくれる実習先も見つかったので、すごくまわりの支えに感謝です」
こころ先生を保育助手として受け入れ、保育士の資格を取るまであらゆる面でサポートをしてきたのは副園長の比嘉 真也先生。
比嘉真也先生「聞こえてないところもあるかもしれないんですけど、子ども達に向き合う時に対応がすごく上手なのがひとつ、あと園外(保育)にすごく彼女自身がアクティブに動いてくれるので、楽しんでくれるところが一番私のなかで一番信頼が強い先生の一人かな」
沢山の園外保育を行うミナミ保育園。夏はプール、冬はスケート。船に乗って島にも出かけます。
比嘉真也先生「海・川に行くと補聴器外すので、そこでどうやってコミュニケーションとっていくかというのが私たちの課題で、皆で子どもたちを挟みながら、お互いがずっと動き続けるという形をとりながら、子ども達が溺れたりけがをしないようにということを、彼女自身もそれをしっかり把握できていて」

他の先生たちとも密にやりとりをすることで、現場の意識も高まり安全の確保につながると話します。
日頃、こころ先生と接している園児たちの行動にも変化が。ある時、先生を呼んでも気づかれなかった園児に別の園児が「先生には肩をとんとんするんだよ」と教えてあげたり、マスクをはずし、口の動きで伝えようとする園児もいました。
田場こころ先生「子供たちなりに聞こえないことは理解してくれて、聞き返しても最後まで伝えてくれる子ども達の気持ちがすごく嬉しかったです」

田場こころ先生「無事みんなを送り出せたことにホッとしているのと、いろいろな思い出が出てきてすごく寂しさもあります。みんながここまですごく立派に成長して卒園式を迎えられたことがすごく嬉しいです」
田場こころ先生「聴覚障害は目に見えない障害なので、やっぱりいろいろな面で理解してもらうのがすごく難しいことが多くて、最初のころは子ども達ともコミュニケーションとるのが難しい面もあって、でも一緒に過ごしていくうちに子ども一人ひとりの性格などがわかってくると、感じ取れる部分も出てきて」

比嘉真也先生「彼女は18歳の時からうちの保育園に来て10年経ちました。すごく今自信も経験もしっかり持って、いま自分が持っている特性、難聴という特性をしっかり生かしながら、その(障害をもつ)人たちの気持ちも汲めるような仕事に就いていってもらって。障害に対しての勘違いの部分がすごく多いなと感じるのでそれを少しでも彼女を通して外していけたらなと思います」
田場こころ先生「周りの支えがあったからここまで来れたので感謝の気持ちでいっぱいです。これからは自分が感謝の気持ちも込めて恩返しできるようにしていきたいです」