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特集です。開会中の県議会で最大の論点になっている、県がアメリカのワシントンDCに置いている事務所。設置時に株式会社の設立し、県庁内での適切な手続きがなされなかったことが問題となっています。

一方でこれまでの議論は手続き論が中心で、基地問題での情報収集や発信など事務所の活動の実態には、焦点は当てられてきませんでした。先週、現地で駐在職員の取り組みの様子を取材し、その様子をお送りします。

トランプ氏「あのバカな大統領(バイデン前米大統領)が3500億ドル(約52兆円)の兵器などを支援した」

ゼレンスキー氏「あなたたちが投票した大統領だ」

トランプ氏「君の兵隊は勇敢だが米軍を頼っている。もしウクライナが米軍の装備を持っていなかったらこの戦争は2週間で終わっていただろう」

ゼレンスキー氏「プーチン(ロシア大統領)からそう聞いたのだろう、3日で終わると、2週間で終わると」

トランプ氏「もっと短いかもしれない」

ゼレンスキー氏「もちろん(プーチン氏なら)そう言うだろう」

ウクライナのゼレンスキー大統領が訪問し、アメリカのトランプ大統領と会談した先月28日の首都・ワシントンDC。2人の激しい応酬の様子が世界中を駆け巡ったこの日、会談のあったホワイトハウス周辺は警察車両が取り囲み、物々しい雰囲気で包まれていました。

沖縄県ワシントン事務所、活動の実態は/現地取材で見えたもの/基地問題で議員に接触

その数時間前…

アメリカ連邦議会の議員会館前に現れたのは、沖縄県ワシントン事務所の仲里和之所長と玉城勝也副所長。

日々重ねている各議員の補佐官と面談で、沖縄でのアメリカ軍の基地問題について状況を説明すると話します。

仲里所長「国防権限法に沖縄の辺野古の問題、PFAS、最近の暴行事件で綱紀粛正。法律の中で沖縄の基地問題の解決につながるような、中身を盛り込んでほしいと伝えていきたい。普段接触している議員は軍事委員会、外交委員会が多い。地元で基地を抱えている自治体の選出の議員も多い。例えば、環境問題などに関心のある議員も多い」

玉城副所長「(面談した議員事務所と)基地のある地域という共通点があるので、沖縄の問題は彼らの関心事。協力していただけるという発言もあった。期待しています」

仲里所長「米軍の暴行事件に関しては、どの議員事務所も強い関心・危機感を持っていただいている。綱紀粛正につながるような取り組みを議員からも検討したいという話があった」

記者「どういう問題意識で問題視しているのか?」

仲里所長「女性の人権を蔑ろにしているのは米国や軍の考え方とはなじまないと。あってはいけないことだと」

大統領選の最中だった去年9月の玉城知事のワシントン訪問では、共和党系とされるシンクタンク・ハドソン研究所でも講演するなど、アメリカの政権交代をすでに見据えた動きに入っていました。

実際に共和党のトランプ政権が発足してひと月あまり、関係者との面談を重ね影響の分析も進めているといいます。

仲里所長「(日米)首脳会談も2月上旬に行われて、お互いの関係も確認したところ。これからトランプ政権の政策に関して、変更があるのかないのか、情報を交換しながら確認していきたい」「基本的に大きな変化はないと思っている」

玉城副所長「(面談先は)新しく開拓する方が多いかもしれない。まずは手当たり次第に連絡して関心を持ってくれたところに会って、話をしてという感じかな」

意見交換は議員や政府関係者のみならず、シンクタンクや有識者にも広がっています。

アジアポリシーポイント・ミンディーコトラー氏「今年は(第2次世界大戦終結)80年。議会はしばしば決議を出す。その決議に盛り込むべき一つが沖縄だ」

沖縄県ワシントン事務所、活動の実態は/現地取材で見えたもの/基地問題で議員に接触

ピーターカズニック・アメリカン大教授「(政府は辺野古新基地完成を)2036年と期待するが実際はそうはならない。たとえそうなっても今の計画は短い滑走路。普天間基地の航空機は辺野古に着陸できない。普天間基地を閉鎖することは決してできない」

2015年の開設から今年で10年が経つ県のワシントン事務所。事務所の設立当初に開設された、沖縄関係の資料を収めたジョージワシントン大の沖縄コレクション。

開設当初、当時の翁長知事も訪れていました。およそ10年が経った先月、仲里所長らは打ち合わせで図書館を訪れていました。同行取材を終え、10年前の設立の経緯について議論になっていることについて、事務所で仲里所長に見解を聞きました。

仲里所長「設立当初の行政手続きが十分でなかったというところは、沖縄県としても真摯に反省をしないといけないと思いますし、手続き、特に私どもとしては、兼業許可が取られていなかったということに関して、是正措置は行われておりましたけれども手続き不備があったということは県民の皆様にですね不信を招く結果になったということはお詫び申し上げたいなと思ってます。米国のですね関係法令に関しましては、会社法の専門の弁護士それから移民法の専門の弁護士、そして会計に関してはこちらの現地の会計士を通じてですね、いろいろ事業運営にサポートしていただいている委託をしている事業者を通じて綿密に連携を取ってですね、慎重に確認を進めてきたところです。現時点で私達が把握している限りではですねビザの手続き、それから会社の設立、税務に関してですね、米国の法令には準じた形でですね、手続きがなされているというふうには理解しております」

沖縄県ワシントン事務所、活動の実態は/現地取材で見えたもの/基地問題で議員に接触

そして、今後の在り方については、どのように考えているのでしょうか。 

仲里所長「沖縄から必要とされる事務所であるべきだというふうに思いますので。現状維持だけではなくて、様々な形を検討してですね、あるべき姿というのを一緒に沖縄県としても考えていかないといけない。個人的な意見なんですけれども、そもそもこういう事務所がですね、必要ないということが本当の沖縄の基地問題の解決ではないかなと。日本政府、それから米国政府、沖縄の基地問題に関わる全ての方々が膝を詰めてですね、議論をして意見交換をして、信頼を繋ぎながらどうやったら沖縄の基地負担の軽減が実現できるのかということを常に議論していく。ワシントン事務所がですね、その一翼を担えるような常にになるような事務所であるべきだとに思いますし今いろいろと課題として挙げられている問題に関しては、しっかりと丁寧に説明をして、理解を得ていく必要があるのかなというふうに考えています」

塚崎記者「設置の手続きが議論になっている県のワシントン事務所。基地問題などの解決に向けた情報発信のあり方も含め、幅広い議論が求められています」

沖縄県ワシントン事務所、活動の実態は/現地取材で見えたもの/基地問題で議員に接触

ここからは塚崎記者とお送りします。今回取材したワシントン事務所ですが、今どのようなことが問題になっているのでしょうか。

塚崎記者「2015年の設立当初に事務所を株式会社として法人登記したことで、派遣されていた職員が現地の法人と兼業状態になったり、株式が県の資産として登録されていなかったことなどが、明らかになっています。一方で、アメリカの法律上は所長の話にもありましたが、違法な点は確認されていません。つまり、今回の問題は、事務所のあり方や設置条件について、米国の法律上の問題ではなく、現地事務所と県庁の連携不足などで生じた、沖縄県としての行政手続き上の不備だといえます」

今後、この問題をどのように捉えていくべきなのでしょうか。

塚崎記者「必要な視点としては、ワシントン事務所の存続の是非と、行政手続きの不備の問題は切り離して考えることです。アメリカの会計検査院やシンクタンクの報告書などで、辺野古新基地の疑問点が記されるなど、事務所は10年の活動で一定の成果は出したと言えます。とはいえ、今回の行政上の不備は決して許されることではなく、この問題は県議会の百条委員会や県が設置した検証委員会などの議論を見守る必要があります。事務所の運営を続けていくにしても、現状の形態の事務所を見直すことは不可欠になってくると思います。議会の議論の中では、委託先のアメリカの企業に県の職員を出向させる案も出ていましたが、基地問題だけでなくアメリカでの沖縄に関する情報発信につなげていくためには経済関係や文化関係の団体も入って組織を改編し、沖縄県の出先機関からの発展的解消ということも検討していいのではないかと思います」

県のワシントン事務所設置での行政上の手続きに不備があったことが明らかになっている以上、玉城知事をはじめ県は明確な説明を果たすことが求められています。その一方で、アメリカ側に直接沖縄の現状を訴えてきたワシントン事務所の役割の評価も含めて、冷静な議論が必要です。塚崎記者でした。