続いては首里城の復興を追いかける復興のキセキです。こちらをご覧ください。こちらは在りし日の正殿です。今、この姿を目指して再建が進んでいますが、やっぱり立派!早く会いたいですね。
ここで正殿の正面を見てみます。日本建築の特徴でもあるS字型の唐玻豊(からはふう)という屋根を飾るのは「妻飾」と呼ばれる場所です。この部分は、阿吽の龍や瑞雲など、様々な木彫刻が施されています。
青や赤、金色など、色使いもカラフルでとても華やかですね!
首里城を象徴する彫刻と言っても過言ではないんですが、先週、この妻飾の制作が終了し再建工事の現場に納められました。制作の苦労や携わった職人がひと彫りに込めた思いとは。

先週、「城の顔」と呼ばれる彫刻物が再建の現場に運び込まれました。
首里城正殿、唐玻豊の「妻飾」(つまかざり)。高さ1.6m、幅9.2mほどの大きな彫刻からは今にも動き出しそうな躍動感と繊細で丁寧な作業の跡がうかがえます。実はこの妻飾、制作されたのは沖縄から遠くはなれた場所。3千メートル級の山々が連なる立山連峰や、世界遺産・相倉合掌造りなど日本の原風景が今も息づく富山県です!
その南西部に位置する南砺市は”井波彫刻”と呼ばれる250年以上の伝統ある木工技術で知られる木彫りの町。町のいたるところに彫刻物が見られます。

玉城真由佳アナウンサー「日本遺産にも登録されている井波彫刻の技術。その職人の技が令和の首里城にも生かされているんです。」
真剣な表情で手を動かす男性がいました。彫刻師の砂田清定さんです。平成の首里城では、美福門(びふくもん)の彫刻を担当。令和の復元では「正殿の顔」ともいえる妻飾の制作を任されたこの道半世紀の職人です。

砂田さんは2023年の秋には作業に着手し、その年の終わりには沖縄に渡り、大正時代に撮影された高精細写真などを参考に彫刻の基礎となる原寸大の「下絵」を描きました。
彫刻師・砂田清定さん「(粘土原型を作らずに)木を一発で彫るというのもあるが、それをやると途中で迷いが出る人間だから。ここはもう少し(高さを)上げた方がいい。下げた方がいいとか」

富山に戻ってからは、彫刻への理解をより深めようと約3カ月かけて平面の絵を立体におこす粘土原型づくりに打ち込みました。奈良県産のヒノキを材料に職人仲間や弟子とともに「彫り」の工程に入ったのは、去年5月。取材に訪れた年末は、「仕上げ」の段階で、木の性質を見極めながら粗く彫った木の表面を200本以上のノミを使い分けて整えていきます。
彫刻師・砂田清定さん「このカーブというのが一番難しい。丸とか角があるのはまだ楽だが、流れとか線などは、やはり柔らかく見せるところは難しい」
本土の彫刻以上に柔らかな線が特徴だという沖縄の彫り。龍の表情も勇ましさの中にも優しさが見られるそうです。

今回彫りの工程で最大の課題となったのは材料となる木の「厚み」、往時の正殿を撮影した写真などの分析から妻飾の彫りは、高い所でも8cmほどしかないことが分かったのです。そのため、薄い板の上で、どう高低を演出し立体感を表現できるか、職人の腕が試されます。
彫刻師・砂田清定さん「薄いのを厚く見せるというか、立体的に見せる技法。それが今の首里城の復元の龍。材料が薄いのにどうやってそういうイメージを出せるかが問題」
そんな時、砂田さんが頼りにしているのが仲間の存在です。共に作業する職人や沖縄県の彫刻監修者などと積極的に意見を出し合い、よりよいものづくりを目指してきました。
彫刻師・砂田清定さん「こういう仕事はチームワークも大事。自分一人で頑張ればいいものでもない。信頼関係、そういう面も作業の中にはある」

砂田さんとともに作業する彫刻師 永田幹夫さん「職人としてはこれ以上にない、やりがいのある仕事だなと思う。後世にずっと伝わっていくわけですから。そこには喜びがたくさん埋まっているんじゃないかな」
富山で受け継がれてきた井波彫刻の誇りと威信をかけて沖縄のため、ひと彫りひと彫りに願いを込め製作された妻飾。
彫刻師・砂田清定さん「今、彫刻を始めてから52年目だが、ここに来て大きい仕事だったかなと思っている。だから、ひと彫りひと彫りにそういうものを込めながら自分の過去も振返って、将来的にも沖縄の人に親しんでもらえる龍になったらいいなと、そういう願いでやっている」

沖縄を思う富山の職人の思いが詰まった妻飾は、これから漆職人の手で彩色が施され、ことしの春にも正殿に取り付けられる予定です。
ニュースで取り上げられたことで、富山の砂田さんの作業場は、プチ観光名所になっていて富山県内だけでなく隣接する石川県に住む沖縄出身者などが度々訪れては、作業の様子を見学していたそう。
うちなーんちゅにとって大切な首里城の一部をつくらせてもらえたことを本当に光栄に思う、と話していました。
今回砂田さんが復元に関わったことで、沖縄の人にも富山を身近に感じてほしいし、沖縄と富山をつなぐきっかけになりたいと話してました。
これから漆職人の手で漆塗りや金箔貼りがなされて、ことしの春にも正殿に取り付けられる予定です。
正殿の象徴「唐玻豊妻飾」富山の彫刻師 技と思い 2024年4月30日