完成して今年で15年になる沖縄セルラースタジアム那覇。まもなく行われるプロ野球キャンプを前に、1年に一度行われる「グラウンドメンテナンス」に密着しました。
寺崎アナウンサー「天候不良で延期が続いていましたが、きょうは晴天です。いよいよ一年に一度の作業が始まります」
県内で開催されるプロ野球公式戦や、高校野球などの舞台として定着している沖縄セルラースタジアム那覇。
1960年に開業し、かつて「沖縄高校野球の聖地」として知られた奥武山球場がリニューアルオープンして2010年に完成すると、ここで数々のスター選手が生まれ、沖縄県民を興奮の渦に巻き込む名勝負が繰り広げられてきました。
2025年で開場から15年。9月には高校野球U18のワールドカップの舞台となることが発表され、より注目が集まります。
【12月20日 種まき作業】
年内の大会やイベントを一通り終えた12月。先に行われたのは、外野の天然芝の種をまく作業です。
一年間絶え間なく行われてきた試合やイベントを経て、一部が茶色くなった芝。夏芝が枯れ始める中、冬芝を撒く「オーバーシード」という作業を行い、2月に行われるプロ野球・巨人のキャンプに備えます。
容器にこぼれないように丁寧に広げられた西洋芝「ペレニアルライグラス」。成長すると、鮮やかな緑が外野に浮かび上がると言います。
比嘉英作さん「幅を決めて、その前に位置出しをやってずれないようにして、ムラの内容にまくのが一番気を付けるポイント。球場に入って見たときに『きれいだな』という思いが、選手の頑張ろうと思うきっかけになれたらいいなと思ってやっている」
専用の機械、ロータリースプレッダーが種を飛ばしながら、芝の上をすべる音がスタジアムに響き渡ります。
レフトからライトまで、1人で黙々と作業を続け、およそ5時間。種をまき終えると、午後には、スパイカーシーダーを運転しながら土の中に確実に種を入れ、芽が出てくるまで、毎日散水をしながら待ちます。
【12月23日 耕うん作業】
外野の種まき作業から3日後、本部港から新しい土が到着し、内野のグラウンドに入りました。
毎年60~80トンの土を購入し、プレーする選手たちを支えます。
「もうちょいいける?」「Maxで行きます?」「一回Maxにして」
おととし購入したという自前の耕運機を入念にチェックする土守たち。
普段は3カ月に一回、5センチほど掘り起こし、新しい土が常に表面に来るようにしていますが、今回は8センチから10センチの深さになるように進めていきます。
「一年間使ってきてへこみが出てくるのをリセットする作業なのでとても重要な作業」
沖縄セルラースタジアム那覇では、鹿児島で生まれた黒土と砂を7:3の割合でブレンド。ほどよい弾力のある黒土に水はけの良い砂が入ることでボールがうまく転がり、雨が降っても短時間で試合が再開できるようになると言います。
スタッフはほとんどが元高校球児。このグラウンドで選手としてプレーした経験を仕事で生かす職人たちが多くいます。
又吉悠斗さん「整備には力を入れてきた学校だったのでこっちを選んで、沖縄一の球場なのでそこに入りたいという思いが少しはあった」
開始からおよそ2時間あまり。夜になるまで作業は続き、土はほろほろになりました。
【12月24日 耕うん作業】
その翌日。3日前に植えた冬芝の芽が一本だけわずかに出ていました。
比嘉英作さん「例年だったら散水し始めて4・5日でこんな感じで出てくるので。きょうで3日目」
一方、内野のグラウンドに登場したのはローラー車。外側から内側に向かい、マウンドの周りを回りながら土をならしていきます。
一見平らになったように見えますが、よく見ると、グラウンドには不規則な傾斜が。
土の盛り具合をチェックしながら、多めに積まれているところから少ないところへ運び、より正確な均衡を作っていきます。
平仲佑規さん「なんとか天候に恵まれてとりあえず安心」
仲間に指示を送り、ともに汗を流すのは、平仲佑規さん。職員・非常勤合わせてわずか10人ほどのチームを取りまとめます。
豊見城南高校出身の平仲さんもこの球場でプレーした元球児の一人。
海上保安官を養成する学校・ライフセーバーを経て、友人の紹介により、2年前に沖縄セルラースタジアム那覇のグラウンドキーパーになりました。
平仲佑規さん「私たちの代の夏の決勝がセルラースタジアムで、その頃から憧れはあった」
この日は「クリスマスイブ」でしたが、関係なし。総出で作業にあたるスタッフたちは、時々談笑も交えながらトラックのハンドルやトンボを握り、年末恒例の一大作業に従事します。
平仲佑規さん「経験が浅いチームなのでこれから経験を積み重ねていければ。みんなで言っている、プロ野球のオールスターをできれば良いなと思っている」
作業には、平仲さんの師匠で、開場した時から去年8月までこの球場でグラウンドキーパーを務めていた、真栄城走さんも様子を見に来ました。
真栄城走さん「(平仲さんは)とても熱心で真面目で、言ってきたことにもついてきてくれて『一緒にやっていこう』とメンバーの中でもとても心強かったし、私も退職はしたけど平仲だったら任せきれると思ったので10自信もってやっていけると思う」
新しい芝と土を入れ、一年の基盤を作る「グラウンドメンテナンス」。まずは2月のプロ野球キャンプに向けて、最高のグラウンドを作る準備は直前まで続きます。
平仲佑規さん「一番は選手が使いやすいグラウンド、プロ野球キャンプはたくさんのお客さんもいるので見栄えの良いグラウンドを作れれば。まだほかの甲子園とかと比べると15年は短く見えるけど、どんどん20年30年続いていくグラウンドだと思うので、少しでもその力になれれば」
リニューアル開業から今年で15年を迎える沖縄セルラースタジアム那覇。高校野球の歴史を刻む、新たな1年が始まります。
良いグラウンドの条件は「弾力があり、地がしっかりしていて、表面に上砂があり、水はけがよく、水持ちもよい」ことだそうです。
この「土守」さんたちは、試合が行われる前後の天気に応じて水分量を調整したり、雨が降った時には1時間以内に試合を再開できるようにして、野球に適したグラウンドを作るべくほぼ毎日手入れを行っています。
選手たちを陰で支えている存在があるこそ、プロ野球や高校野球が盛り上がっていると分かりました。ぜひ大会の時に注目していただきたいと思います。