琉球の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。今年初のこのコーナーですね、本年もよろしくお願いします。まるでやんばるの渓流にいるかのような新しいスタジオセットからお伝えします。さて今回のテーマは「ヘビにちなんだ昆虫」です。
湊和雄さん「今年は巳年、ヘビ年ですね。ヘビと昆虫はあまり関係がないように思われるかもしれませんが、ヘビに関する名前の付いた昆虫も知られています。やんばるでしっかり撮影してきました。」
ではVTRをご覧いただきましょう。
湊和雄さん「世界最大級の蛾として知られるヨナグニサン。これは羽化直後のメスです。翅を開くとその幅、最大で28cm近くにもなります。大きい!」
湊和雄さん「海外では、台湾、中国南部から東南アジアで見られ広東語では「蛇頭蛾」とも書くそうです。それは、この翅の先端部分が蛇の頭部の横顔に見えるからと言われます。これは翅の表側、こちらは裏側で少し色合いが異なります。風に揺れていると、結構リアルに感じますね。」
ヘビに見えます!
湊和雄さん「こちらは、雌よりもやや小型の雄。しかし、この部分は雌より細く突き出してさらにリアルかもしれません。森の中でこうして見ると、樹上の蛇の頭のようにも感じます。しかし、これが実際に蛇への擬態かは定かではありません。」
湊和雄さん「チョウには「ジャノメチョウ」というグループがあります。漢字で書くと「蛇目蝶」。翅に複数の同心円模様がありますね。こちらはリュウキュウウラナミジャノメ。翅の裏側にたくさんの目玉模様がありますが、翅を開いた表側にも少し見えますね。」
ヘビの目のようだから蛇の目。目玉模様で敵を欺くということでしょうか?
湊和雄さん「そう考えられていますね。こちらは、沖縄で最も多く見られるジャノメチョウのリュウキュウヒメジャノメ。」
すごい名前です!
湊和雄さん「やはり、翅の裏側にも表側にも目玉模様がありますね。専門的は「眼状紋(がんじょうもん)」と呼びます。」
ガンジョウモンですか!
湊和雄さん「この眼状紋には、2つの意味が考えられています。裏側の常に見えているほうは、チョウの偽の目玉で、鳥などの天敵にわざと狙わせるためのターゲットという説。クチバシで突かれて、少し翅は破れても本当の頭部と異なり、致命傷にはなりません。」
なるほど!
湊和雄さん「一方、翅を開いたときだけ短時間見えるほうの眼状紋は鳥の天敵のヘビなどの眼に擬態していて、驚かすためのものという説。」
生存をかけた模様なんですね。
湊和雄さん「眼状紋は生物の世界で広く、特に昆虫で多く見られます。先程のわざと狙わせるための偽の目玉はシジミチョウの仲間でよく見られます。近くには尾状突起(びじょうとっき)と呼ばれる偽の触角もセットであり、偽の頭部を形作っています。」
いかにして天敵から身を守るか!なのですね。
湊和雄さん「そうです。しかも偽の触角を常に動かし注意をひきます。こちらは、クロマダラソテツシジミ。偽の頭部は、本物の頭部から最も離れた位置にあり、危険を回避しています。20世紀末から沖縄に侵入し、現在では沖縄〜関東地方で見られます」
外来種ですか。
湊和雄さん「室内実験でも、鳥に目玉模様を急に見せると驚くことが確認されています。これは、野外で実際に鳥が蛇にであったシーンです。画面中央にヒメハブがいます。目立ちませんね。」
干支から言うと真打登場ですが確かに目立ってないですね!
湊和雄さん「そこにやって来たのはホントウアカヒゲのオス。驚いて逃げる様子もなく、かなり興味を示していますね。危険なのは分かっているようで、少し距離を置きながら結構な時間観察していました。」
こちらの方が心配でヒヤヒヤしちゃいますね。
湊和雄さん「一度姿を消したのですが、間もなくメスを連れて戻って来ました。」
えー!!本当ですね!
湊和雄さん「ヘビに遭遇したから、驚いてすぐに逃げるとは限らないようです。」
今回も貴重な映像ありがとうございました。リュウキュウの自然でした。