2024年録、きょうは基地問題と県内の自衛隊の1年を振り返ります。辺野古新基地では、国の代執行によって新たな工事に着手し、自衛隊の南西シフトによるうるま市石川の訓練場新設問題が浮上するなど、大きな動きのあった一年でした。
その中で、ことし活動を終えたのは、石垣島の自衛隊配備を問おうとした、若者たちのグループでした。基地問題を巡る出来事を通して、民意と防衛政策の関係を改めて考えます。
町記者「午後1時半です。名護市辺野古の海上では、船の上でショベルカーが作業を行っている様子が確認できます。辺野古新基地建設の大浦湾側の工事がきょうからはじまりました」
年が明けて間もない、今年1月10日。辺野古新基地建設での大浦湾側の工事が始まりました。8月、防衛省は、軟弱地盤を固めるためのくい打ち工事に着手。県民の反発も根強い中、国は昨年末、県が承認しなかった地盤改良工事を「代執行」で承認。その正当性に疑問も残る中、国は基地建設に突き進んでいます。
鬼木防衛副大臣(当時)「南西地域の防衛体制の中核を担う」
県内の自衛隊配備「南西シフト」では、南西諸島の地対艦ミサイル部隊を束ねる連隊が3月、うるま市の勝連分屯地で発足。連動するように、南西諸島の各地では、ミサイル部隊の動きが活発化。アメリカ軍と連携も強まり、民間インフラも使いながら、訓練が繰り返されています。
集会参加者「頑張りましょう」「頑張ろう、頑張ろう、頑張ろう」
一方、南西シフトでは防衛政策と民意の関係性が際立つ出来事もありました。うるま市石川の自衛隊訓練場整備計画です。
住民「こんなにも、いっぱい米軍基地がある中でまた、自衛隊が基地を増やす」「防衛局は何を考えているのでしょうか」
玉城知事「一度白紙に戻して見直していただきたいと」自民党県連・島袋幹事長(当時)「自民党県連・自民党県議団としても、うるま市石川のゴルフ場跡地整備計画は白紙撤回を願いたい」
今年に入り、地域住民たちが挙げた反対の声は、政治的立場を超え、広がりを見せました。
そして。
木原防衛大臣(当時)「住民生活と調和しながら、訓練所要等を十分に満たすことは不可能であると判断したことから、うるま市における訓練場の整備計画を取りやめることとし」
防衛省は今年4月、うるま市での整備計画の撤回を表明したのです。
一方、先月で活動を終えたのは、石垣島の若者らで作るグループ「石垣市住民投票を求める会」です。石垣島への自衛隊配備計画に対し市民の意見を表明する場にしようと、取り組んできた6年間でした。
金城龍太郎代表「市民の分断を防ぐためにも、正式で明確な投票が必要だと思います」
2018年に発足した会は、市内で署名活動を実施。1万4263筆が市の選管から有効な署名として認められました。会側が主張していたのは、有権者の4分の1の署名で住民投票を市長に請求できるとした当時の石垣市の自治基本条例による住民投票の実施。
条例を根拠に、市長の実施義務を訴え、住民投票の実現を求めてきたグループ。しかし、市議会は実施を否決。中山石垣市長も、議会に審査のやり直しを求める再議もしませんでした。
中山石垣市長「私が提案して、住民投票をやることはないと言っている」「いったん否決されたものを再議に付すのは」「私は住民投票を実施したいとなる、それは自分の考え方とは別になるので」「再議には付さない」
先月の取材で、再議をしなかった理由を、中山市長はこう述べています。一方、住民投票を求める会で活動を続けてきた、宮良麻奈美さん。市の自治基本条例への首長や議員の姿勢をただします。
宮良さん「消極的になって署名を議会にかけて、議会が否決したからやらなくていいんだよと」「再議に付さなかったし」「例えばその時の議長さんも審議不十分により否決と言って否決してしまった」「(有権者の)4分の1という重さに向き合わなかった」「自治基本条例で求められている市長の役割を放棄したというか、軽んじた」
会側はその後、司法に、市の実施義務を求めたほか、住民投票できる地位の確認を求めた訴訟で提訴しましたが、いずれも敗訴。行政も議会も司法も、石垣島の若者たちに手を差し伸べることは、ありませんでした。
大井琢弁護士「国防に関するもの、防衛に関する裁判・訴訟で、司法権の独立はほぼ働いてないと見ざるを得ない」
そして先月、会は、6年余りの活動に幕を閉じました。
宮良さんは取材にこう振り返ります。
宮良さん「勝ち負けだけではなく、何を得られたか」「このアプローチ、アクションで運動で、何を得られたかが民主主義において」「大事なことだと思うので、そうやって少しずつ進んでいく」「その通過点の一つの運動だと思う」
宮良さんたちの訴えた住民投票は実現しないまま、去年3月に開設された、石垣駐屯地。今年4月、政府が自衛隊の利用などを念頭に整備を進める「特定利用空港・港湾」の第1段で石垣港が指定されました。
その動きは与那国島でも、起きています。島の南側で構想される新しい港や、空港の拡張を、政府は「特定利用空港・港湾」の候補に。町や町議会なども好機ととらえ、インフラ整備を求めています。
与那国には、5月にアメリカのエマニュエル大使が訪れたほか、8月には自衛隊とアメリカ軍の司令官が共同会見を開催。台湾海峡に最も近い国境の島は、政治的にも中国への対抗を強調する場と化したのです。軍事的にも自衛隊とアメリカ軍の共同訓練が激化。その中で起きた、自衛隊オスプレイの事故。県民に危険性を改めて突き付けました。
今月16日の与那国町議会。島で進む自衛隊の強化に関して、議論が交わされていました。
田里千代基議員「これ以上認めないと」「沿岸監視部隊まではいいけど、これ以上の強化はさせないと」「住民の声が多々あるんですが、その声はどう思いますか」
糸数町長「確かにそういう声もあろうかと思います」
答弁するのは糸数健一町長。
糸数町長「全国民がいつでも日本国の平和を脅かす国家に対しては、一戦を交える覚悟が今、問われているのではないでしょうか」
5月の憲法記念日には改憲派の集会でこう訴えるなど、防衛力の強化を度々強調しています。
糸数健一町長「米軍に反対される方も、自衛隊に反対される方も」「根っこの部分はどうやって平和を構築するかということ」「主義主張の問題 目的は同じ」「そういった意味で私は信念を曲げません」
塚崎記者「日本最西端・与那国町の西崎です。ここから110キロ先に台湾があります」「今年は中国の軍事行動に伴う、台湾有事の懸念を名目に、南西諸島での軍事強化の動きが加速してきた一方」「うるま市の訓練場建設や石垣市の自衛隊配備の住民投票の運動など民意と防衛政策の関係性が問われた一年間でした」「島々に住む人々が軍事強化の動きをどのように捉えているのか」「その声を、東京やワシントンで政策を決めている人々に、伝えていくことが必要になってきています」