シリーズでお伝えしている「沖縄と自衛隊」です。今回は石垣島の自衛隊配備を巡って行われた住民投票を求める運動についてお伝えします。
もともとは島の若者たちを中心に起こった運動でしたが石垣島では、住民投票が実現しない中で駐屯地が開設され実施に向けて動いてきたグループは、先月解散しました。改めて防衛政策に地域住民の意思を示す意味を考えます。
先月27日夜、石垣市内のホール。あるグループが解散集会を開いていました。自衛隊配備問題を住民投票で問おうと島の若者たちが結成した「石垣市住民投票を求める会」です。
若者たち「署名お願いします」
2018年に発足し署名を集め、自衛隊配備を問う住民投票の実施に向け取り組んできました。
石垣市議会議長(当時)「本件について、議長は否決と採決します」
住民投票の実施は議会で否決されその後2つの訴訟に移行しました。しかし、今年9月に敗訴が確定。司法の場でも住民投票の実施は認められることはありませんでした。
金城龍太郎さん「住民投票ができずに、自衛隊の駐屯地が開設してここまで来たのは住民のもやもやが解消されないままきた表れかと思う」
訴訟の終結を受けて開かれた会見でこう語るのは、代表を務めた金城龍太郎さん。金城さんが住むのは駐屯地の近く。マンゴーを育てる傍ら住民投票の実現に向けて奔走してきました。
金城龍太郎さん「実現してもしこりが残ってしまうという懸念は。でもやらないまま生きていてもやもやがずっと残った状態でなかなか納得できないで生活をしている人もいる。何かしらの落としどころになればいいと思う」
その願いとは裏腹に住民投票が実現しない中、石垣駐屯地は去年3月開設。一方で「住民投票を求める会」は訴訟の終結などを経て解散を決断しました。
金城龍太郎さん「長引いてはしまったが、6年間みんなに考えてもらうきっかけ作りは出来たと思う」
石垣島の若者たちの取り組みから、防衛政策を住民投票で問う意味を考えます。
中山石垣市長「今回、石垣島が最後の開設となりましたが奄美以南の防衛体制が整ったと考えております」
去年4月、開設したばかりの石垣駐屯地の隊員らにこう強調した中山義隆石垣市長。先月末、住民投票を巡る訴訟の終結などを受けQABなどの取材に応じました。
中山石垣市長「賛成反対ではありませんと。ただ島の人たちがどう考えてるかを知りたいから住民投票したいとそれ本当に若い人たちが動き出して。私はそれに対して非常にいい動きというか今までなかった動きだと思ってますし、この活動をしてきたメンバーに対しても敬意を表したいなと。それをサポートした皆さんにも敬意を表したいと思います」
求める会側が主張していたのは、有権者の4分の1の署名で行えるとした当時の自治基本条例の規定に基づく住民投票の実施。条例の解釈を巡って裁判にも発展しましたが、中山市長は別の手段もあったと強調します。
中山石垣市長「市長が議会に提案したこと自体で、もう(市長の)義務を果たされてると思っています。裁判を起こしていろいろ動いてたんですけども、その時々の流れでですね。実は与党が圧倒的な多数な状況でもなかったので住民投票を再度請求すれば可決してたような状況というのも何度もあったんですけども、そういうのが出されてなかった。石垣市の自治基本条例じゃなくて地方自治法でも出せば700名余りの署名さえ集めれば何度でも請求できるのに、その作業を一切してこなかったんですね。だからそれは非常にもったいないなというふうに思います」
宮良さん「最初から市が実施していればここまでなんだろう、変なこじれた問題にはならなかったはずなのにっていうのはありますね」
一方、石垣市住民投票を求める会で活動を続けてきた宮良麻奈美さん。住民投票の実現に向けて裁判に踏み込んだ経緯をこう語ります。
宮良さん「難しい裁判だとわかっていた。住民投票をしたその結果が賛成でも反対でも国策に自分たちの意見を通す・影響させる反映させるってことは、今の日本では難しいということもわかっていました。もう市長がやらないって言ったからやりませんとか、議会が否決したからやりませんみたいなことになってしまうと、この条例の目的・意義というのを会が受け入れてしまったら次に住民投票したいってこの条例でしようとする市民の方々にも影響が出ると思う。だから初めてこの市条例で請求した団体として裁判をやる必要があるって私は思って裁判闘争踏み込んだっていうのがあります」
宮良さん「住民投票が求められた自衛隊配備と島の記録・記憶に残せたことは実施はできなかったものの、大きな意味があると思う」
解散集会では、こう強調していた宮良さん。6年間続いた会の活動や、政府や権力者のふるまいを島の歴史の一ページとして記録する重要性を感じていました。
宮良さん「民主主義って時間がかかるし、労力もかかるし、簡単というか楽ではない。思考停止していられないものだと思うんですね。未来の人たちが、過去を振り返ったときに、ただの南西シフトの自衛隊配備っていうものから住民投票が求められた。そこに島の人たちが関わろうとしたっていう行動の記録を残せたことはやっぱり、私達は透明人間ではなかったってことを示すことにもなる。自分で言うのも何ですけど気概というものは次の世代にも伝わると思う」
2019年2月に行われた辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票。石垣市の住民投票も会側は、県民投票との同日実施を目指して動いていたといいます。防衛政策を住民投票で問うことへの懸念を中山石垣市長はこう強調していました。
中山市長「どこに何を配備するかとかですね、どういう装備を整えるかとか、またどこに駐屯地を持ってくるかというような話もありますけども、これは国全体で考えることであって。住民投票で反対が多かったからそれはもうできませんっていう話になると、国の国防の中に一部穴が開いてしまうことになりますんでそれは危険性があるというふうに思ってます」
宮良さん「会の人たちは、別に賛成なら賛成で配備賛成なら賛成すれば全然受け入れる。それは明言してますしみんな本気で思っているけど、やっぱり民意を恐れてたのは市長とか議員さんたちだったんだろうなって思います。間接民主制、議会議員は市民から選ばれてその議会が決めたことだからそれこそが民意。例えば自衛隊配備自体も住民投票否決したこともそれが民意なんだって言う方もいますけど、なんか多数決絶対主義が民主主義みたいな。数が多い方が絶対数の多い方が正しいんだみたいな、その意見を通していいんだっていうのは本来の民主主義、健全な民主主義じゃないと思うんですね」
塚崎記者「投票を通して、自衛隊配備問題を市民全体で考えたいという若者たちの思いに行政も議会もそして司法も応じることはありませんでした。若者たちの願いが実らなかった結果は石垣島の未来に何を残すのでしょうか」