シリーズでお伝えしている「沖縄と自衛隊」。衆院選の投開票日に起きた、与那国島のオスプレイの事故と、日米の共同統合演習についてお伝えします。
今月1日まで行われていた自衛隊とアメリカ軍の演習「キーン・ソード」。日米が南西諸島全体で民間地も使いながら行った大規模なものでした。そのさなかにおきた、今回のオスプレイの事故。背景には何があるのか、お伝えします。
先月27日、午前11時38分ごろ。与那国駐屯地で、陸上自衛隊のオスプレイが機体が左右に揺れ、機体が地面に接触、損傷する事故を起こしています。防衛省が事故を公表したのは、およそ9時間後の午後8時半ごろ。午後8時に衆院選の投票が終わった直後のタイミングで、疑念も渦巻きました。
記者「(公表まで)時間がかかりすぎているように思える。総選挙の投票箱が閉まるのを待って発表したのか」
中谷防衛大臣「そういうことはないと私は考えている」
塚崎記者「与那国駐屯地です。陸上自衛隊のオスプレイが翼を折りたたんだ状態で、駐機している様子が確認できます」
オスプレイが、沖縄各地を飛び交う現実を、改めて突き付けた今回の事故。これまでに何が起き、今何が起きているのかお伝えします。
棚原アナウンサー「現場上空にやってきました」「現場上空にやってきました」「ほぼ半分が水没したオスプレイの姿を見ることができます」「衝撃の強さを物語ります」
今から8年前の2016年12月、普天間基地所属のアメリカ海兵隊のオスプレイが、名護市安部の海岸に墜落する事故を起きました。
稲田防衛大臣(当時)「コントロールを失った状態での墜落ではないと考えています」「幹部会で協議をし、確認をした結果、現時点では不時着であると」
防衛省は機体が「コントロールを失っていない」として「不時着水」との見解を示します。
稲嶺名護市長(当時)「パイロットが考えて、危険を避けてあそこに降りたと」「落ちたんじゃなくて降りた」「笑わせるなっていうんですよね」
「不時着水」との見解は、県民の反発を生みました。その事故に関して、QABが入手した、オスプレイに乗っていたアメリカ兵の救助に向かった航空自衛隊の航空救難団が作成した内部資料。タイトルにははっきりと「墜落」と書かれていました。
中谷防衛大臣「ご指摘の文書は恐らく部隊が作成した内部文書だと思われますが、防衛省として事故の評価をしたものではありません」「防衛省としましては、事故機は不時着水したものと認識しております」
防衛省は、今も「不時着」との見解を崩していません。一方、防衛省や自衛隊の取材を続けてきた、ジャーナリストの布施祐仁さん。
現場の自衛官と、政治サイドの認識のずれも指摘します。
布施祐仁さん「2016年、アフリカ南スーダンに(PKOで)派遣されていた自衛隊」「当時南スーダンで激しい政府軍と反政府勢力に戦闘が起きた」「現場の部隊は日本に上げる報告書の中に、激しい銃撃戦とか戦闘という言葉を使った」「防衛大臣はじめ政府は何といったかというと『散発的な発砲事案』とか『戦闘でなく衝突』と説明していた」「現場の部隊は見たままを書いているけれども」「政府レベルになると法的な評価とか、政治的な評価とか」「そういったことが入ってきて、また違った言葉になることは」「これまでもあった」
今回、事故を起こした自衛隊のオスプレイ。 自衛隊とアメリカ軍の共同統合演習「キーン・ソード」に参加していました。台湾有事も念頭に、南西諸島での訓練を強化する自衛隊や米軍にとってのオスプレイの役割を、こう解説します。
布施祐仁さん「台湾有事において米軍は、南西諸島の島々に部隊を分散させて」「島々に臨時の軍事拠点を置いて、そこを拠点に」「中国に対する偵察活動であったり、攻撃などの作戦を行う構想を立てている」「島に部隊を展開する。補給物資を輸送する、車両を島から島へ輸送する」「さまざまな場面でオスプレイが訓練の中で登場する」「そういった訓練だったと思う」
今回の演習で、南西諸島の鹿児島県側の徳之島などでは、民間地に自衛隊の部隊が上陸する訓練も行われました。台湾有事を見据え、住民の反応も見ながら訓練を進める意図を、こう読み解きます。
布施祐仁さん「今やっていることは、あくまでゴールではないということです」「鹿児島県の奄美大島や徳之島でやっているように民間区域を使った」「より実戦に近い形での訓練を(沖縄県でも)やって行きたい」「住民の抵抗感を薄めていく」「一気にやってしまうと反発が来るので、少しずつ抵抗の少ないところから」「一歩一歩階段を上がっていくようにですね、目指す目標に向かって前に進めていこうとしているんじゃないか」「有事において島を活用する。自衛隊・米軍が活用すること自体」「相手側からすると攻撃目標にしていくことにつながる」「住んでいる住民にとってリスクにつながる問題」「そのリスク含めて、見ていく必要がある」
「キーン・ソード」が終わって2日後の今月3日の午後。那覇市の首里城公園。琉球王国時代の行列を再現する催しも行われ、多くの県民や観光客でにぎわうさなか。アメリカ軍の無人偵察機MQ9が、周辺を飛び交っていました。
戦後、基地と隣り合わせでの生活を強いられてきた県民。自衛隊やアメリカ軍の活動にどのような目を向けるべきなのか、いま、問われています。