琉球の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。本日もよろしくお願いします。さて今回のテーマは「秋の大合唱」です。
湊和雄さん「日中はまだまだ暑い日が多いですが、日に日に秋が深まりつつあるのも確かですね。北部の林や森では、あちこちから騒々しい鳴き声が聞こえてきます。きょうはこの大合唱の主の正体をご紹介しましょう」
ではVTRをご覧いただきましょう。
湊和雄さん「亜熱帯やんばるでも、ススキの花穂が目立つようになってきました。温帯では9月の中秋の名月の前後が見頃ですから、1ヵ月以上の差ですね。そして、秋晴れの青空には積乱雲も少なくなりました。」
美しい秋の空を感じます。
湊和雄さん「ススキの花穂の周りを飛んでいるのは、ウスバキトンボ。沖縄では「かじふちーとんぼ」とも呼ばれ、台風の前後に群れ飛ぶ姿が見られ、やはり主に秋の風物詩ですね。」
かじふちー!風が吹くという意味ですね。
リュウキュウアブラゼミ全長53〜65mm沖縄諸島〜奄美諸島に生息6〜10月に活動
湊和雄さん「これまでのシーンで背後に聞こえている騒々しい鳴き声、気になりますよね。実はセミがその声の主なのですが、このリュウキュウアブラゼミではありません。姿を見つけましたが鳴いていませんし」
殆ど動いてないですもんね。
湊和雄さん「ええ、もう間もなく姿を消してしまう季節です。」
オオシマゼミ全長46〜56mm沖縄諸島〜奄美諸島に生息
湊和雄さん「本当の鳴き声の主はこちら、オオシマゼミです。」
そうだったんですね!
湊和雄さん「オオシマは奄美大島の大島。本土のツクツクボウシの仲間で、沖縄本島では12月に入っても活動しています。6月から成虫が現れますが、今頃が活動のピークです。このシーンは、鳴き始めから鳴き終わりまで1コーラスで約1分間でした。」
すごい声ですね!!
湊和雄さん「よりアップで見ると、小刻みにリズム感よく腹部を震わせているのが分かりますね。この時期のセミの声は、観光客にはセミだとは思えない人が多いようです。
セミの腹部はほとんど空洞で鳴き声の共鳴装置といわれている。
湊和雄さん「この鳴いている腹部を逆光で見てみると、腹部が部分的に透けているのが判りますよね。セミの腹部はほとんど空洞なのです。鳴き声の共鳴装置だと言われています」
共鳴しているのですね!
オオシマゼミ オス
湊和雄さん「次に背面側を見てみましょう。青色が目立つ鮮やかで美しい色彩をしていますね。これはオスの姿です。画面が揺れているのは、台風の影響で木が揺れてるためです」
昨日、八重山地方は暴風警報が発令されましたが本島も風が強かったですね。
オオシマゼミ メス
湊和雄さん「次はメス。オスに比べると、ちょっと地味で緑色が目立ちます。」
わかります!
湊和雄さん「もちろん、メスもオスも1匹1匹の違い「個体差」もありますが、オスほうが鮮やかで目立つ傾向が明らかです。」
見分けるポイントは産卵管
湊和雄さん「オスとメスを見分ける最大のポイントは、尾の先の針のように尖った産卵管です。これはメスにしかありません。また、セミで鳴くのはオスだけ。メスは鳴きません。」
鳴くのはオスだけなんですよね、しっかり覚えています!
クロイワツクツク全長37〜52mm沖縄諸島〜九州南端に生息
湊和雄さん「最近気になるのは、オオシマゼミに近い種類のクロイワツクツク。やはり11月中旬まで活動します。しかしこのところ、生息範囲も個体数も減少傾向に感じます。代わりにオオシマゼミが勢力を拡大している印象です。昔は、里に近い環境にクロイワツクツク、山奥に行くほどオオシマゼミが多いという棲み分けをしていたのですが。」
変わってきましたでしょうか。
今回も貴重な映像ありがとうございました。リュウキュウの自然でした。